理論に基づいた指導と自由な発想の中から生まれる「野球人」に注目! ヤングROOTS(ルーツ)【後編】
2019年2月、神奈川県藤沢市に新たな中学野球チームが誕生した。そのチームが、ヤングROOTS(ヤングルーツ)だ。
元プロ野球選手の養父鐵氏が代表を務めるヤングROOTSは、何と元々はルーツ・ベースボールアカデミーという名の野球塾であったが、中学野球のチームとしてやって欲しいといった要望を多く受けて、今回チーム設立に至った。
後編となる今回は、ヤングROOTS設立にあたっての理念や、そしてチームの方向性についても迫っていく。
◆野球塾から発展した新チーム・ヤングROOTS(ルーツ) 魅力は海外5ヵ国から得たエッセンス【前編】
野球を続けて行くのであれば野球が好きな気持ちが大事
ヤングROOTSルーツの練習場
体づくりを最優先に考え、専属のトレーナーも置くなど、とにかく選手の将来を考えた指導を徹底している養父氏。
2019年2月からは、新たに中学野球チームを立ち上げ、指導の幅をさらに広げていくことになったが、元々はチームを立ち上げるところまでは考えていなかったと養父氏は語る。
それでも今回、ヤングROOTSを設立するに至った背景には、2017年に四国アイランドリーグプラスに所属する、徳島インディゴソックスの監督を務めた経験や、中学野球界で近年浮上している問題を頻繁に耳にするようになったことを、養父氏は明かす。
ヤングROOTS代表の養父鐵氏
「チームを作って欲しいとの要望があったこともありますが、徳島で1年間監督をやらせていただいて、指導者としてすごくいい経験ができました。
またルーツでも、無茶な練習や起用法など、多くの問題を抱えているチームがたくさんあることを色んな親御様から聞いてきてきました。なので、自分がやるチームでは私のこれまでの経験を活かして、今までとは違うスタイルでやっていきたい思いがありました」
養父氏の中では、中学野球の期間は、あくまで高校やその先の野球人生に向けてのステップである認識が非常に強い。昨今の中学野球界は、身体的、精神的に追い込まれる選手が非常に多く、良い選手が野球から離れていく現状が叫ばれているが、養父氏は中学野球の期間は「野球を楽しむこと」を何よりも大切にしたいと話す。
「この先も何年も野球を続けて行くのであれば、本当に野球が好きといった気持ちがないと続きません。もちろん、それだけでは勝てませんが、その中で(野球を楽しむことも)学んでいってもらいたいなと思っています」
[page_break:世界で見れば野球をやる場所なんていくらでもある]世界で見れば野球をやる場所なんていくらでもある
綱登りのトレーニング
養父氏が、ここまで「野球を楽しむこと」にこだわっているのにも理由がある。
ここでもポイントになってくるのは、養父氏の海外5ヵ国での野球経験だ。
「欧米の選手は、野球をゲームでとして捉えているので、『ゲームで負けてどうして泣くの』という感覚です。日本人は失敗した時に落ち込む傾向が強くて、前に進んでない子が非常に多いと感じています。落ち込むのではなくて、もっと練習しようと思えるような環境づくりが一番ベストかなと思っています」
ヤングROOTSの志村仁監督も、養父氏の考え方に強く共感し、前向きに努力が出来る人材を育てていきたいと強く意気込む。志村監督も養父氏と同様に、野球の「やり方」よりも、野球をやる上での心の「在り方」を重要視しており、常に先を見据えた指導を行っていくことを口にする。
ロマンが詰まったヤングROOTSの事務所
「基本的なことですが、礼儀や元気、そして楽しくを一番のモットーにしていきたいです。野球なので勝ち負けも当然出てくると思いますが、今が大事なのではありません。高校や大学、どこに行っても通用する、恥ずかしくない選手にしたいですね」
野球の技術だけではなく、考え方の面でも、海外5ヶ国のエッセンスが詰まったヤングROOTS。最後に養父氏に、ヤングROOTSからどんな人材を輩出していきたいか改めて伺うと、海外を経験した養父氏らしい、自由な発想の答えが返ってきた。
「とにかく野球を嫌いになって欲しくないですね。
野球なんて、世界で見れば野球をやる場所なんていくらでもあります。狭い日本の中だけで考えてるので、日本しかない感覚になるのだと思いますが、もし日本でダメであっても自分の状況にあった国に行ってもいいなと思います」
その自由な発想と理論に基づいた指導の中から、これからどんな野球人がヤングROOTSから巣立っていくのか注目だ。
(取材・栗崎 祐太朗)