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ビジネスマンの顔を持つ監督が浸透させた「分析力」!東村山中央ボーイズの取り組みに迫る

2018.12.25

 発足から11年目を迎えた東村山中央ボーイズ。今年3月に行われた第48回日本少年野球春季全国大会に出場を果たすなど、毎年堅実な強さを見せており、これまでも5人の選手が日本代表に選出されている。
 今回は、そんな東村山中央ボーイズの松岡昌一監督にお話を伺い、チームの指導方針や勝ち続けるチーム運営の秘訣について迫った。

選手自身が自らの失敗の原因を分析する

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松岡昌一監督(東村山中央ボーイズ)

 中学野球の指導者にお話を伺う中でよく感じることは、「ビジネスマン」としての色合いが非常に強い指導者が多いということだ。
 高校野球の指導者の多くは普段は教員として学校に籍を置き、「教育者」として教壇に立っているのに対して、中学野球の指導者の多くは普段は企業に在籍している為、「ビジネスマン」としての感覚が備わっている指導者が非常に多いのだ。

 東村山中央ボーイズを率いる松岡昌一監督は、その中でも特に「ビジネスマン」としての色合いが強い。普段は企業の取締役を務めている松岡監督は、東村山中央ボーイズでの指導においても、ビジネスで培ったノウハウを活かしていると語る。

 「こうやって考えたら分析できるよというヒントを与えて、そこからなぜダメだったのか、なぜ負けたのかを分析するということを教えました。仕事でいうところの『PDCA(Plan・Do・Check・Action)』ですね」

 選手自身が、自らの失敗の原因を分析する。それこそが、松岡監督の東村山中央ボーイズでの指導において大きな肝になっている。
 そのために、必要不可欠なアイテムとなっているのが野球ノートだ。東村山中央ボーイズの選手は、その日のミーティングや練習内容、試合内容をノートにまとめて提出することになってる。それが、自らの失敗の原因を分析する貴重な機会となっているのだ。

 「頭の良い子たちはまとめ方が違います。ミーティングで言われたところに色でマークしたり、中には棒グラフにまとめて分析をしてきた選手もいました」

 松岡監督は、基本的に選手達がまとめてきたものに手を加えることはしない。選手なりの言葉で考え、実行していくことに大きな意味があると松岡監督は考えており、また一度ミスをして反省すれば、同じミスをしたとしても次に繋がると信じているのだ。

[page_break:選手からも絶大な信頼「野球だけでなく人間としての成長に繋げてくれる」]

選手からも絶大な信頼「野球だけでなく人間としての成長に繋げてくれる」

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世界少年野球大会に、日本代表として出場した荒井駿也(東村山中央ボーイズ)

 もちろん、選手たちに「人間としての成長」を望んでいる一方で、松岡監督自身も選手やチームの分析を怠ることはない。選手の試合での成績は細かく管理しており、ノートと見比べながら試合に向けての材料にしている。

 またメンタル面のケアも力を入れており、各学年のコーチが必ず一年に一回選手と面談を行うようにしてる。中学生という年頃の選手たちは何かしらの悩みを持っており、その悩みを報告する機会を設けているのだ。

 「コーチたちと色々やり取りをしながら、試合に入るようにしています。例えば、新チームになって勝敗はこうですとか、今こんな子がこういう結果残してますとか、この子あんまり出てないよねとか。
 うちは練習試合は全員出す主義というのもありますが、やっぱり分析しないとダメなんですよね」

 こうした松岡監督の取り組みや理念には、選手たち自身も大きな手応えを掴んでいる。今年8月に開催された世界少年野球大会に、日本代表として出場した荒井駿也選手(3年)は、松岡監督の指導の下で心身共に大きく成長できたと話す。

 「このチームは、野球の技術だけでなく人として成長できるチームです。小学校6年生の体験入部の時に、松岡監督が礼儀だとか人との関わりを教えて下さり入団を決めました。
 松岡監督は、一人ひとりをしっかり見て下さります。自分の良いところだったり、悪いところを見つけてくれて、それを野球だけでなく人間としての成長に繋げてくれます」

 「人間としての成長」
 言うは易しだが、中学生という年齢で自分の中に落とし込んで理解することは非常に難しい。荒井選手のように、選手自身が「人間としての成長」を強く意識しているところは、他でもない松岡監督の功績だろう。

[page_break:『僕の足らないところはどこですか』ではなく『自分が今どう思っているのか』]

『僕の足らないところはどこですか』ではなく『自分が今どう思っているのか』

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東村山中央ーイズのグランドでの試合の様子

 「人間としての成長」を重要視している松岡監督であるが、もちろん「野球選手としての成長」も自身の理論に基づいて抜かりなく指導を行っている。そして、ここでも重要なポイントになってくるのが「自らを分析する」ということだ。

 「1、2、3学年体制で指導者を置いていますが、その指導者の人に『今、僕の足らないところはどこですか』ではなくて『自分が今どう思っているのか』というやり取りをして教えてくれと言っています。
 この練習をしておけというのでは無く、自分で試して聞いてみなさいという指導をしてますね」

 また、当然ながら1年生と3年生が同じ練習をこなすことは出来ない。そのため、各学年ごとに強化項目を定めて練習メニューを組んでいる。
 まず1年生の時は、体力の強化を最優先に考えている。遠い距離を投げる、速いボールを投げる、速く走れる為の基礎トレーニングをメインに行っている。
 2年生になると、新チームで試合形式の練習を積んでいき、そして3年生になると試合に出るという流れになる。

 こうした基本軸を定めることで、チームスタッフも同じベクトルに向かって指導を行うことができ、選手自身も目標がより明確になるのだ。

 理路整然とした考えの下、チーム運営を行っている松岡監督。そんな松岡監督の指導は、野球の技術向上だけで無く、勉強や仕事など今後の人生のあらゆる局面で役立つはずだ。
 東村山中央ボーイズの取り組みに、今後も注目していきたい。

(文・栗崎 祐太朗

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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