「勝利」と「育成」の両立を続けるリトルシニアの名門!世田谷西リトルシニアに迫る
リトルシニアの名門として、毎年全国屈指の強さを誇っている世田谷西リトルシニア。これまでも中学硬式野球の頂点ジャイアンツカップ、春の全国大会、夏の全国大会、台湾国際大会と、すべてのタイトルを手にしており、OBにも数多くの高校球児を輩出している。
今回は、そんな世田谷西リトルシニアの吉田昌弘監督にお話を伺い、チームの指導方針や勝ち続けるチーム運営の秘訣について迫った。
野球の楽しさを知ってもらうことを第一に考える
打撃指導を行う吉田監督(世田谷西リトルシニア)
今年3月に行われたリトルシニア全国選抜野球大会で、9年ぶり2度目の優勝を決め、2度目の夏春連覇の快挙を達成した世田谷西リトルシニア。中学野球にして「常に勝ちを求められているチーム」にも映るが、吉田監督は勝ち負けよりも野球を好きになってもらうことを意識している。
「勝負なので、勝てば勝ったでいいなとは思いますが、入ってきた選手がまずは野球を好きになって欲しいと思っています。そして世田谷西を卒業したその先も、またどんどん野球を頑張ってくれればいいなと思いますね」
実際、世田谷リトルシニアには1学年で50〜60名、チーム全体で150名以上の選手が在籍しているが、チームを辞める選手はほとんどいない。
試合に出ることが出来ない選手が大勢いると思われがちだが、同じ日に3カ所で練習試合を組むなどしてチャンスも平等に与えており、一人でも多くの選手が試合の経験ができるように努めている
また、技術指導においても「野球を好きになってもらう」ことを忘れない。中学生であれば、「投げる・走る・打つ」だと「打つ」ことが一番変化が起こりやすい。そのため、まずは「打つ」ことを伸ばして野球の楽しさを感じてもらい、その上で3年間を通してトータル的に技術を向上させるのだ。
今年、世田谷西リトルシニアの不動のリードオフマンを務め、全国選抜野球大会で最優秀選手賞を獲得した内囿光人選手も、世田谷西リトルシニアで過ごした中学野球は非常に充実していたと話す。
「試合もたくさん組まれていますし、環境もすごく恵まれています。世田谷西リトルシニアに入って本当に良かったと思っています」
学業と野球のレベルから的確な進路相談、OBにも実績のある球児が多数
キャッチボールを行う様子
そうした吉田監督の指導もあり、世田谷西リトルシニアのOBには実績のある高校球児が多い。
今夏の第100回選手権記念大会にも、日大三の廣澤優に佐藤英雄、横浜の2年生スラッガー・内海貴斗、二松学舎大附の平間陸斗など、そうそうたるメンバーが出場を果たした。
高校で活躍する選手が多い要員として、吉田監督が挙げたのが、技術指導だけでなく的確な進路相談を行なっていることだ。
世田谷西リトルシニアでは、中学1年の頃から成績と高校の希望、そしてそれらに対する選手の考え方を紙に書いて提出させている。その希望に対して吉田監督は、現在の学業成績と野球の技術レベルを踏まえて、しっかりと進路相談を行なっていると話す。
「中学1年の頃は、みんな大きな夢を持っています。だいたいみんな慶應義塾や早稲田実、日大三や横浜と書きますね。
それなら、ここの高校ならこのくらいの成績がないとだめだよと言ったりしています。野球のためにも、成績を目標まで上げるように設定させます」
環境面や指導面だけでなく、選手へのサポート体制も強固にすることで、世田谷リトルシニアは今や全国屈指の名門の地位を盤石なものとしている。
東京都という環境の中で、このような指導体制を維持していくことは決して容易ではないが、それでも吉田監督は出来る限り現在の体制を維持していきたいと強く語る。
「子供達が一生懸命野球をできる環境を維持していくことは、これからもチームとして頑張らなければいけないことだなと感じています。
勝ちを求めながらも、誰も辞めずに全員が上手くなって、みんなが自分の持つ能力を野球にMAXになれるといいなと思います」
「勝利」と「育成」を絶妙なバランスで成り立たせている世田谷リトルシニアから、これからも目が離せない。
(文・栗崎 祐太朗)