決勝で敗れた市立船橋打線が語る早川隆久(木更津総合)の脅威のピッチング!
全国どころかその県の球史に名を残す球児はそうみられるものではない。だが千葉県の高校野球ファンは、今、そんな球児を見られる最後のチャンスを迎えた。その球児は木更津総合のエース・早川 隆久だ。早川は3度目の甲子園に乗り込むのだ。
ライバルが語る早川隆久の凄さ
左:早川 隆久(木更津総合)、右:宮慎太朗選手(市立船橋)
早川がこの3年間で残した足跡は本当に素晴らしいものだ。1年秋の公式戦は防御率0.00、2年春でも選抜1勝に貢献。2年夏も千葉大会4強(試合レポート)の原動力となり、そして2年秋は防御率1.13、公式戦2完封を上げ、関東大会優勝(試合レポート)に導くと、さらに今年の選抜では大阪桐蔭を1失点完投勝利(試合レポート)。秀岳館には9回二死まで無失点。完封目前の投球であった(試合レポート)。
そして今年の千葉大会では、6試合中、5試合は完投勝利。その完投勝利は、すべて1点差勝利という恐るべし勝負強さだ。21世紀に入って、千葉県でこれほどの実績のある左腕投手は早川ただ1人といっていい。
早川は、打ち難さという点では、今年出場しているドラフト候補に挙がる左腕投手でも一番ではないだろうか。千葉大会では、46イニングを投げて、四死球9個。四死球率でいうと1.76。高橋 昂也の四死球率0.49と比べると劣るが、実際の投球を見ていても、内外角への出し入れも優れ、さらにスライダー、カーブ、チェンジアップも低めにきっちりと投げ分ける。そして速球も、コンスタントに140キロを超えるようになり、かなりパワーアップを果たしている。
早川の何が凄いかといえば、ストライク先行能力だ。打っても凡打になるようなところに当たり前のようにストライクゾーンに投げ込む。そうなると打者は初球から打たなければという心境になる。
上手いのは、早川は微妙にボールを動かして、芯を外す。すると内野ゴロや外野フライが飛んで次々とアウトを演出する。そして三振を狙いに行くときは、これは手が出ないだろうというコースに100パーセントのストレートと、曲りの大きいスライダーで三振を狙いにいく。打たせる時は上手く打たせることができ、三振に狙いに行くときは三振が取れる。そんなピッチングができる男なのだ。
そんな早川の凄さがより伝わるように、決勝戦(試合レポート)で対戦した市立船橋の選手に早川の印象を語ってもらった。主将の宮 慎太朗は、「早川君は連投でストレートは走っていなかったのですが、それでもあっという間に2ストライクに追い込むんですよね。ここはさすがだなと」
それを見て早打ちする市立船橋打線。だが次々と内野フライを打ち上げる。
「狙い通りのコースが来るのですが、微妙に動かしているので、打ち損じてしまうですよね」と首を傾げた宮。
決勝戦で同点打を打った髙田 悠大は「僕は早川君のストレートを見て、全く打てる気がしませんでした。狙い球ですか?いやなかったですね。もう当てることに精一杯でしたから」
それでも高田選手は、決勝戦で早川から2安打を打っている。
「いやあれは僕の実力ではないんです。バットに当たってしまった(笑)。凄いキレのあるボールを投げる投手だと思います」と早川の凄さを称えた。甲子園では千葉大会のピッチングを見せていくだけだ。
しかし早川含め木更津総合ナインは出場しただけでは満足していない。選抜ではあと一歩でベスト4入りを逃した。忘れ物を取り返すために…。初戦の唐津商戦から伝説に残る投球を大観衆の前に見せていく。
(文・河嶋 宗一)
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