田中 賢介(北海道日本ハムファイターズ)×日高 泰也(ウイルソン)【後編】 野球も用具も、常に「挑戦」
「プロとして」意見を出し合う中で出たグラブについて、2人が語った前編に続き、後編ではこれも興味深い話になった「バット論」へ。最後は田中 賢介選手から高校球児の皆さんに向けたメッセージもあります!
■前編から読む
「切磋琢磨で創る『プロフェッショナル』のグラブ」
「打撃スタイル考察」から逆算して作られるバット
田中 賢介選手(北海道日本ハム)と日高 泰也氏(ウイルソン)
――バットの話も聞かせてください。田中 賢介選手が使っているバットのポイントは?
田中 賢介選手(以下、田中):僕はまずバットを作る時「自分がどのようなバッティングをしたいか」から入ります。そこから「このようなバッティングをしたいなら、こういうバットにしていこう」と逆算してバットを作っていきます。さかのぼると、2007年まで僕はグリップが太い「タイ・カップ型」のバットを使っていましたが、2008年は少し長打を意識したかったのでグリップを指でかけられる形に大きく変えました(参考:2007年は3本塁打31打点から2008年は11本塁打63打点へ)。
その後、再びヒットを増やしたいと思ったときはバットを長くしたり、太くしたり。先ほどいったように「どのようなバッティングをしたいか」によってバットを変えています。
――それを実現するは、日高さんとのコミュニケーションが絶対的に必要ですよね?
田中:そうですね。それと同時にバットのストックがあるか。僕が「この打者のバットと同じようなもの」と言ったときにすぐに持ってきてくれることが重要です。プロの選手というものは今日「この感覚はいいな、これでいこう」と思っても明日は「違うな、これやめよう」と思うものなんです(笑)。ウイルソンは思い通りのバットの取り寄せも速いですね。
日高 泰也氏(以下、日高):バットができるまでには数週間かかるんですが、田中選手の場合は要望があって作っている最中に、さらに要望がくることもあります。
――では、2017年の田中選手のバットはどうなるのでしょうか?
田中:この2年間、打撃がよくなかった原因を考えると、身体の開きが少し早かったと思います。反対方向に打球もあまり飛びませんでした。そこで今年は身体が開きにくく、反対方向にも打球が飛ぶようなバットを使おうとしています。重心も変えましたし、太さも22,7ミリから25ミリに変えました。感覚的には野球ボールとソフトボールくらい違うと思います。
日高:僕も聞いたときに一瞬、躊躇したくらいです。「本当にこれでいいの?」って。それくらい変わります。
田中:でも、ここまでの感覚は非常にいいですね。今シーズンはブランドもディマリニからルイスビル・スラッガーに変わりますから、見た目から中身までバットが大きく変わる一年になります。
田中 賢介選手と日高 泰也氏の「幸せなパートナー関係」
田中 賢介選手(北海道日本ハム)と日高 泰也氏(ウイルソン)
――ここまで話をうかがうと、田中 賢介選手と日高 泰也さんがグラブやバットについて常に様々なことを考えて、進化しようとしていることがわかります。
田中:もちろん、同じことをやり続けていくことも素晴らしいと思います。ただ、コロコロ変えすぎて軸がないのはいけないと思います。「何を変えて、何を変えないか」。野球ではこの見極めが大事だと思います。僕は同じことを続けるのが苦手なので変えることが多いですが、「変えてはいけない」ところを見誤らないようにしています。
――そのためには、現状の自分を知っている「パートナー」が必要ですよね?
田中:そうなんです。僕の要望を話す時、僕のことを全然知らない人に話をするのと、日高さんに話をするのとでは道具の完成度が数倍違うと思います。
――これまで10年以上、パートナー関係を組んできた中で、印象深いことはありますか?
田中:基本的に日高さんは「グラブの長さを5ミリ短くしてください」と僕が要望すると、5ミリ短くしたグラブと、もう1つのイメージを持ってきてくれます。バットも「長さ85センチのバット」と要望すると、85センチのバットと「84.5センチ」を付け加えてくれるんです。すると84.5センチの方がよかったりするんです。
日高:田中選手はわずかなこだわりの違いを見抜ける選手ですから。選手は1個だけサンプルを持っていくとさらに欲が出るものですし、比較できるものを見てもらうことが大事です。比較対象がないとそれが本当にいいものか解らない。ですから、要望に近いものをもう1つ作ることによって、正解を見極めてもらっています。人間は1個しか答えがないと不安になるものですよね?そこで2つ選択肢を設けることで正しい答えを導き出してもらう。彼に納得してもらうために使う手です(笑)
田中:(笑)、そんな担当は今までいないです。
日高:田中選手は、常識を疑う力を持っている選手なんですよ。道具のこともよく知っていますし、疑問や好奇心を常に持っている。そんな彼の吸収意欲は、私たちにとっても次のステップを踏むことにつながるんです。要望を受けて新たな道具を2つ持っていくことで、一般のユーザー向けに進むべき次のステップも見えてくるんです。
――では「日高さんにとって田中 賢介選手とは?」「田中選手にとって日高 泰也さんとは?」
日高:田中選手は、私たちが商品を開発していく中で、的確なアドバイスを頂ける本当にありがたい選手。一般的な言葉で言えば「大変」になりますが、その大変がすべて私たちにとってプラスになるんです。私自身にとっても、1つ1つの会話、一緒にいる時の空気感を通して「プロとして生きていく」意識の高さを感じさせてくれる選手ですね。
田中:僕にとっても日高さんはなくてはならない存在です。要望にもすべて応えてもらっていますし、精神的な支えにもなっています。選手というものは成績が悪いとどうしても道具のせいにしてしまいがちになるんです。実際はそうじゃないんですが。日高さんにはそこも含めて支えてもらっていますね。
「二人三脚」で北海道日本ハムファイターズの「連覇」と自らの「進化」へ
田中 賢介選手(北海道日本ハム)
――2017年シーズンも始まりました。昨年は北海道日本ハムファイターズとしては日本一と最高の結果が残った一年、今季への意気込みはいかがですか?
田中:もちろんチームとしては連覇。そのためにしっかり自分の成績を残さないといけないので、2年間悪かった部分は最低限上回らないといけないと思います。
日高:私たちはその田中選手を道具でサポートして、パフォーマンスを上げられるようにすることに尽きます。
――では最後に東福岡(福岡)での高校時代。3回甲子園出場を果たした田中選手から高校球児へのメッセージがあればお願いします。
田中:野球の良さはチームスポーツというところ。誰かが誰かのカバーをできるし、仲間と一緒に甲子園という目標を目指せる時期は、人生においてそうそうない。僕も勝ち抜くのが難しかった福岡県の中で甲子園を決めた試合は今でも印象に残っています。チームメイトを大事にして、どんな実力のチームであっても甲子園を目指してすること。それが大人になってもいい思い出になります。理不尽なことは社会に出てもあることなので、ある程度の理不尽さはむしろ楽しんで、一生懸命戦ってほしい。そして道具についていえば「自分のなりたい姿」をイメージして、道具を選んでほしい。守備に関してはあらゆる体勢で捕球するイメージをして「デュアル・テクノロジー」を使ってほしいですね。
2017年、現状に甘んじることなく攻めの姿勢で再び日本一に挑む北海道日本ハムファイターズ。その一二塁間、二遊間を支える田中 賢介も、ウイルソン・日高 泰也氏とのパートナーシップを進化させ、さらなる成長を遂げにいく。
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