Column

田中 賢介(北海道日本ハムファイターズ)×日高 泰也(ウイルソン)【前編】 切磋琢磨で創る「プロフェッショナル」のグラブ

2017.03.20

「W」のマークでおなじみのウイルソン社グラブを使用している代表的プロ野球プレーヤーと言えば田中 賢介選手。昨年も北海道日本ハムファイターズの日本一に貢献。東福岡(福岡)高校からプロ入団18年目となる今シーズンも活躍が期待される堅守・堅実性あふれる二塁手である。

 では、そんなプロフェッショナル・田中 賢介選手はどのような視点でグラブやバットを選択しているのか?今回は「一年のはじまり、気持ちが入る」自主トレ12年目の地、宮古島で田中選手を長年担当しているウイルソンのプロダクトマーケティングチーム・日高 泰也氏との対談を通じ、高校球児の皆さんにも参考となる「用具の選び方」を探っていく。
前編では「プロとして」意見を出し合う中で出たグラブについて、2人が語ります。

お互い「プロとして」意見を出し合う中で創る用具

田中 賢介選手(北海道日本ハムファイターズ)

――まず、田中 賢介選手と日高 泰也さんとのパートナー関係はいつからになりますか?

田中 賢介選手(以下、田中):実は、僕は高校生の時からグラブはウイルソンとは異なるメーカーを使っていたんです。それをアメリカ行き(2013年・MLBジャイアンツ入り)を視野に入れたタイミングで変えたんです……。元々、日高さんとの最初の出会いはバットからですよね?

日高 泰也氏(以下、日高):田中選手は2006年、私がウイルソン入社と同時にかかわらせて頂いた選手です。最初はディマリニ製のバットを使ってもらっているうちに、グラブの型について話し始めて、グラブを実際に試合で使い始めたのは2012年からですね。

田中:僕はグラブへのこだわりが深かったので、いいものができるまでには少し時間がかかりました。

――そのようにして田中選手と日高さんがすり合わせをしてグラブを作り上げる中、ポイントにしたところはどこですか?

田中:グラブの「どこで捕球しても同じところに下りてくる」感覚です。僕のグラブのポケットは普通のものよりも小指側にあるんですが、そこへ全て下りてくるように求めました。

日高:もちろん、1回のやり取りで「これでできました」とはなりません。そこに至るまでは必要なことを1個1個つぶしていくことが大事になります。まだ彼が私たちのグラブを使うか解らないとき、田中選手が言ったことで一番、覚えているのは「『ここ一番』で入ってくれるグラブがいい」。ふとした選手の一言からヒントを得るためにも、1つ1つ丁寧に彼の話を聴いていかなければならないんです。

――昨年で言えば、日本シリーズでこの二塁ゴロで併殺を決めて、日本一が決まる場面で入ってくれるような……。

田中:そうです。グラブの先でも入ってくれるような。そんなグラブがいいんです。

日高:2006年から2012年までの間に田中選手へのグラブだけでも30~40個作っています。

[page_break:意見をぶつけ合い、すり合わせる中で生まれるグラブ]

意見をぶつけ合い、すり合わせる中で生まれるグラブ

グラブについてすり合わせを行う

――自主トレーニング中の合間にも細かいすり合わせがありましたよね?

日高:そうです。シーズン中にグラブを変えるわけにはいきませんから、オフにすり合わせをして、それがダメなら翌年。それを6年間続けました。

田中:僕はシーズンが終わって、翌年のことを考え始めるのは11月くらい。そこから11月末から12月にかけてできあがった用具を参考に試し始め、1月に「今年はこれでいける」というものを作り上げます。そして、2月のキャンプから使い始めます。「これで行く」と決めたグラブで一年間を通していくので。そうなりますね。

――それでも6年間かけてグラブを作り続けたウイルソンのグラブを使用するようになったのは田中選手のグラブに対する情熱があったからですか?

田中:それはありますが、僕もプロですし、日高さんもプロ。いいものでなければ情熱があっても使いません。「いい」と思ったからこそ、使い始めた。そこはお互いのプロ意識があってこそだと思います。

日高:実は、田中選手と会った当初はそんなに会話はありませんでした。「バットはでそうですか?」と僕が聞いても「今のままでいいですよ」という感じだったんです。ただその後、確か東京ドームでの試合だったと思います。彼が道具に対して話した時に僕が「いや、こうなんじゃない?」と言い返したことがあったんですよ。そうしたら田中選手が「ロッカーに来て、ゆっくり話をしましょう」となったんです。その時のやり取りはすごく覚えていますね。そこで彼の要望だけを聞いていたら、今の関係は築けていなかったと思います。

――そこで「言い返す」ということは、日高さんの「プロとしての考え」があったからですよね?

日高:そうです。

田中:バットを例にとれば「どちらが弾きがいいか」という部分で僕の感覚と科学的なものとではずれが生じている場合もあるんです。そういう部分は僕も参考にしていますね。

日高:そう問われたときには、まず一般的な理論を述べた上で彼の感覚を否定せず、すり合わせていきます。

年々変化し続ける田中 賢介グラブ、2017年は「デュアル」を採用

――そのグラブですが……。試合用の他に練習用のグラブもありますね?

田中:まずは当て捕りのためのグラブ。自主トレーニングの時期に、捕球面を確かめるために使います。練習用のグラブはシーズン中、人工芝グラウンドが続いて捕球が雑になってきた時などにも使います。

――実は、この練習用グラブにも秘密が隠されているとか。

田中:試合用グラブと同じ作り、同じ重さで指先だけカットしています。自分のグラブの重さ感覚は大事にしているので。

――そして試合用のグラブです。どのようなこだわりがありますか?

田中:基本的に「いい」と思ったものはなんでも採り入れます。たとえばバスケットボールと同じ革の「スーパースキン」。これはムチャクチャいいです。僕は自分の捕球感覚が悪い場合、指をグラブから1本でなく2本出して試合で守るんですが、それと同じようにグラブも常識にとらわれず試しながらやっていくことが大事だと思いますね。

[page_break:年々変化し続ける田中賢介グラブ、2017年は「デュアル」を採用]

田中 賢介選手(北海道日本ハムファイターズ)

――ということは、2012年以降も田中 賢介選手のグラブは新たなものを採り入れているということですか?

田中:そうです。2012年からは型も変わっていますし、自分の考え方も変わっています。これからも時代とともに変化していくと思います。

――そして2017年は「デュアル・テクノロジー」採用グラブを使用されますね。

田中:アメリカは天然芝のグラウンドが多いのに対して、日本のプロ野球は現状では人工芝が多い。とはいえ、これから時代の変化によって天然芝が増えていくと思います。指先でつかんでもポケットに収まる「デュアル・テクノロジー」はいいと思います。

――2013・2014年とアメリカでプレーされて感じた部分も大きいですか?

田中:大きいです。当時、捕球は「先っぽでつかむ」感覚になっていましたから、グラブは指先の強さがないと苦しいと感じました。

――そんな田中選手の要望に対して、日高さんはどのような工夫を凝らしましたか?

日高:ウイルソンしかできない「デュアル・テクノロジー」を使いつつ、田中選手の感覚は今までと変わらないように気を遣いました。目をつぶってはめても感覚は変わらず、それでいて「ここ一番の時」に指先は強さを発揮するグラブを作らないといけないと思っています。

田中:これからも僕のグラブは変わっていくと思います。日本では昔からある「身体の前で捕る」考え方から、さらにアグレッシブな守備ができるようにするには「デュアル・テクノロジー」のようなグラブがいいと感じています。

日高:これから日本の野球は捕球や送球方法のバリエーションが増えていくでしょうから、自ずと指先で捕ってもポケットに収まる「デュアル」の良さが理解されると思います。

――実際、田中選手の守備練習を見ていても半身の姿勢からゴロに対して積極的にチャージする。アグレッシブさが分かります。

田中:僕はあまり股を割りませんし、身体の前では捕らないイメージで捕球するので、そういう形になっています。アメリカではほとんどの選手がそのようなスタイルでしたし、日本でも「うまいな」と思う選手もそのようなスタイル。そこが「これまでの日本の理論」と「実際のプロの感覚」の違いですね。

――田中選手にとって理想の捕り方のようなものはあるのですか?

田中:最終的に(ポケットで)捕球の音がすればいいんですが、その中で自分の感覚を探しています。日高さんとも、その部分でのすり合わせをしていますね。バッティングは理論があって、形もある程度「こうやったら打てる」というのがありますけど、守備は最低限の形はあるにしても「感覚」の部分は大きいと思います。

 後編でも宮古島の青空の下で、田中 賢介選手と日高 泰也氏の興味深いバットやグラブの話は続きます。田中選手から高校球児たちへのメッセージもありますので、どうぞお楽しみに!

話題の『 硬式用 Wilson Staff Dual 』を一挙紹介!

硬式用 Wilson Staff Dual 内野手用 D6H
上代 55,000円 (税別)
サイズ:6
カラー:Wオレンジ (21)・Eオレンジ (22)・ブラック (90SS)
素材:[表革] プロストック ステアレザー (+スーパースキン)
[裏革] 共革 (指裏/ ディアソフト)
[芯材] 親指/ ウールS + ウールH 小指/ 化繊 + ウールH 指/ ウールH
逆とじ・ウェブ: H・日本製

硬式用 Wilson Staff Dual 内野手用 D5T
上代 55,000円 (税別)
サイズ:7
カラー:Wオレンジ (21)・Eオレンジ (22)・ブラック (90SS)
素材:[表革] プロストック ステアレザー (+スーパースキン)
[裏革] 共革 (指裏/ ディアソフト)
[芯材] 親指/ ウールS + ウールH 小指/ 化繊 + ウールH 指/ ウールH
ウェブ: TⅡ・日本製

硬式用 Wilson Staff Dual 内野手用 DOH
上代 55,000円 (税別)
サイズ:8
カラー:Wオレンジ (21)・Eオレンジ (22)・ブラック (90SS)
素材:[表革] プロストック ステアレザー (+スーパースキン)
[裏革] 共革 (指裏/ ディアソフト)
[芯材] 親指/ ウールS + ウールH 小指/ 化繊 + ウールH 指/ ウールH
ウェブ: HW・日本製

硬式用 Wilson Staff Dual 外野手用 D8D
上代 55,000円 (税別)
サイズ:12
右投げ・左投げ (R)
カラー:Wオレンジ (21)・Eオレンジ (22)・ブラック (90SS)
素材:[表革] プロストック ステアレザー (+スーパースキン)
[裏革] 共革 (指裏/ ディアソフト)
[芯材] 親指/ 化繊 + ウールH 小指/ 化繊 + ウールH 指/ 化繊
逆とじ/ クロス背面紐・ウェブ: Dトンボ・日本製

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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