「デュアルテクノロジーグラブ」が守備率10割に近づいた理由 【連載Vol.02】
第2回は、現在ウイルソン・グラブを使用してMLBの舞台で活躍する青木 宣親外野手(シアトル・マリナーズ)のエピソードなどを紹介。そしていよいよ「デュアル・テクノロジー」の全容が明かされる!
青木宣親選手の堅守を支えるウイルソンの「デュアル・テクノロジー」
スノー・コーン・キャッチを可能にする指先の強さが特徴
――第1回では田中 賢介選手の意見が「デュアル・テクノロジー」の完成に大きな役割を果たした話がありましたが、ウイルソンのグラブを使用する選手と言えば、もう1人。現在MLBシアトル・マリナーズでプレーする青木 宣親外野手がいます。彼の影響も「デュアル・テクノロジー」を作り上げる上では大きかったのでは?
麻生 茂明氏(以下、麻生:青木選手とは春季キャンプで顔を合わせる度に挨拶をかわしていました。しだいにグラブについて意見交換する関係になりました。青木さんが日本で使っていたグラブは、ポケットが浅かったんです。ただ、MLBはボールが日本より滑るし、気候のせいでグラブが乾燥しやすいので、浅いグラブだとボールを弾いてしまうことがあったそうです。
そのうえ、ボールが不規則に動くので、外野を守っていると「ボールが歪んで飛んでくる」そうです。そんな話を聞いたので、青木さんにはポケットが少し深めのグラブを作ってあげたんです。その後、青木さんからは「グラブのことを気にせずにプレーできるようになったから、コーチからも『守備範囲が広がった』と言われました」と喜んでいただき、ウイルソンとの契約につながった経緯があります。
青木さんは守備で何度もファインプレーをしているんですが、「デュアル」には指先が強いという特徴がありますから、いわゆるSnow Corn Catchもしやすい。
日高 泰也氏(以下、日高):グラブがコーンでアイスクリームがボール。いわゆるグラブの先でキャッチする形のことです。
麻生:指先が強いから地を這うような不規則なゴロも捕球できる。グラブの先でジャンピングキャッチもしやすい。間一髪のプレーを楽々こなせるのが「デュアル・テクノロジー」の大きな特徴です。
送球もよくなる!これが「デュアル・テクノロジー」だ!
グラブのパーツがこちら シングル(上)とデュアル(下)
――それでは、いよいよお二人の努力の結晶。「デュアル・テクノロジー」を実際に見せて頂きます。立てて頂くと……指の部分の違いがよくわかりますね!
日高:はみ出しが二本あるデザインの違いはもちろんですが、指先を下にして置くと指の部分の立体感がよくわかりますよね。グラブの型としては従来のモデルと同じなのですが、指先が強いので強い打球にも負けないんです。それではどうやって、この立体感を実現しているのか。グラブを分解したパーツをお見せしましょう。グラブは表袋と中袋で構成されているのですが、表袋と中袋のサイドに「マチ」と呼ばれるパーツを加えたんです。
麻生:「マチ」の両端を細くして立体縫製することで、グラブにアールが生まれて強い指先が実現するんです。それから中袋の背面にウレタン素材を使っているので、指を入れたときにもフィット感があるんです。
日高:麻生さんから青木選手のエピソードを聞いているうちに、面白いことが分かったんです。
――ぜひ、聞かせてください!
日高:青木選手は「MLBはボールが滑るし、気候も乾燥しているのでフライが歪んで飛んでくるけれども、ウイルソンのグラブならどこに当たってもボールがポケットに収まる」という話をしてくれました。
この話を日本の高校野球に当てはめてみましょう。高校生のレベルでは、プロと違ってポケットで捕る技術が完璧ではないので、ボールがグラブの指先に当たってしまう場合があります。するとボールの握り替えに手間取るので、悪送球する確率が高まってしまう。でも、「デュアル・テクノロジー」ならポケットに収まったボールをスムーズに握り替えできるので、送球までの動作も安定するんです。
「デュアル・テクノロジー」の開発段階ではアマチュアの選手たちにテストを繰り返してもらったのですが、感想を聞くと「捕球しやすいのはもちろんですが、送球もよくなりました」という評価が多かったんです。
――それは非常に興味深い話ですね。
日高:私たちも最初はその理由が解りませんでした。開発サイドとして捕球が良くなる自信はありましたが、送球までよくなるという評価は「メンタル」、要するに「気のせい」だと思っていました(笑)。ただ、麻生さんから青木選手の話をお聞きするうちに「これもデュアルの特徴だ」と理解できました。ボールがグラブのどこに当たっても、ポケットに収まるということは、握り替えがスムーズになる。すなわち、グラブが安定したスローイングを実現しているということなんです。
私たちはグラブを開発するうえで、田中 賢介選手から「指先の強さ」、青木選手から「グラブのどこに当たってもボールがポケットへ収まる大切さ」を教えてもらいました。こうした一流選手の思いを高校球児が使いやすいモデルに仕上げたのが、この「デュアル・テクノロジー」なのです。
ウイルソンの「軽さと革のよさ」はそのままに、「守備率10割に近づく」使いやすさを追究
パームの裏側に薄い革を貼った「ダブルパーム」構造。ポケットの型崩れを防ぐ特許技術だ!
――これまで「ウイルソン・スタッフ」といえば、軽さと革のよさが人気を博していますが、もちろんこの「デュアル・テクノロジー」も……。
日高:もちろんです。これまで皆さんに支持していただいている軽量感と革の品質を保ちながら、「デュアル・テクノロジー」では高校球児の「使いやすさ」を追究しました。開発のキーワードは「素手感覚」です。というのも、高校生が素手でゴロ捕りをすると、ほぼ100%上手に捕ります。本来はみんな守備が「うまい」んです。
――現場でそういった練習を見ていると、確かにその通りですね。
日高:でも、実際のゲームではエラーをしてしまうことがある。その場合、イレギュラーなどは除いて、グラブに当てたのに落とすようなエラーがあるとします。でも、それは選手の技術の問題ではありません。一番の理由は道具が悪いんです。つまり、グラブを開発している私たちの責任だと考えているんです。私たちは「ウイルソンのグラブを使ったらエラーが減る」と言われなければならないと思ってきました。
「デュアル・テクノロジー」のキャッチフレーズは「守備率10割に近づけるグラブ」です。打者は打率3割を超えれば一流といわれますが、守備は10割を目指さないといけない。さらに言えば、守備力のうちグラブが占める割合は8割もあると考えています。
――しかも、一つのエラーが試合を決めてしまう。
日高:そうなんです。守備率10割を目指すためには、あらゆる打球に対応できる必要があります。「デュアル・テクノロジー」はグラブのどこにボールが当たってもポケットに収まるので、前へチャージして処理する弱い打球であってもスムーズに送球することができます。
投手の立場に立って考えてみましょう。野手を強襲する安打やエラーだと「まあ、仕方がない」となりますよね。
――いわれてみれば、確かにそうです。
日高:でも、バットの芯を外したボテボテの打球を野手が握り損ねたり、悪送球したら投手はどんな気持ちになるでしょうか?
――「なんだよ。せっかく打ち取ったのに!」と思ってしまいます。
日高:そうなんです。そんな気持ちを引きずったまま次の打者を迎えると、打者に集中できないので連打を浴びてしまう。高校野球でよくある「ビッグイニング」が生まれてしまうんです。野手の立場でみると、ボテボテの打球を指先が弱いグラブで処理しようとするとグラブの中でボールが遊んでしまう。しかし「デュアル・テクノロジー」ならいつも通りポケットにボールが収まるので安心して握りかえることができます。
このように技術、心理の両面から高校球児の守備を支える。これが「デュアル・テクノロジー」でプレーする効果だと思います。
第3回では選手に対する「縁の下の力持ち」を心がける理由など、「デュアル・テクノロジー」に込められた深い想いをお2人に話して頂きます!
話題の『 硬式用 Wilson Staff Dual 』を一挙紹介!
硬式用 Wilson Staff Dual 内野手用 D6H |
硬式用 Wilson Staff Dual 内野手用 D5T |
硬式用 Wilson Staff Dual 内野手用 DOH |
硬式用 Wilson Staff Dual 外野手用 D8D |