Column

3年生座談会 県立川内高等学校(鹿児島)「夏の準決勝・延長13回の熱戦を終えて」 vol.3

2016.10.06

 鹿児島川内の3年生座談会第2回では、夏の鹿児島大会の準決勝までの勝ち上がりの様子をたっぷり語っていただきました!最終回では、樟南との延長13回を演じた激闘を振り返っていただきます!

假屋原選手の劇的なホームランで同点に!

3年生座談会 県立川内高等学校(鹿児島)「夏の準決勝・延長13回の熱戦を終えて」 vol.3 | 高校野球ドットコム

福永 和摩(県立川内高等学校)

――7回裏、一死から6番・假屋原(立・2年)君がヒットで出塁し、バントで送って、神村学園戦と同じく、代打・松永君の内野安打で同点に追いつきました。

帖佐:松永の打球はどん詰まりのショートゴロで、「あちゃー」と一瞬思いましたが、なぜか処理を誤ってくれて、抜けた瞬間は飛び上がって喜びました(笑)。

――狙い通り終盤追いつくことができて、鹿児島川内が盛り返したかと思いましたが、9回表に2点を勝ち越されてしまいます。この展開で9回表に勝ち越されて正直「鹿児島川内の快進撃もここまでか?」と思いましたが、そうなりませんでした。

帖佐:その裏の先頭打者でしたが、特に何も考えることなく、落ち着いて打席に入れました。ここで点を取れなかったら高校野球が終わるとか悲壮感もなく、スタンドの声を聞いて気持ち良く打席に立てました。何も考えずに、高めの甘いスライダーをセンター前に打つことができました。

―― 一死となって、これまで1本もホームランは打ったことがないという2年生の6番・假屋原君が樟南の浜屋君から起死回生の同点2ランを打ちました。

帖佐:一塁ベース上で見ていて、打った瞬間スタンドには入ると思っていました。あとは切れるか、切れないかだけで、切れずにレフトスタンドに入ってくれました。假屋原は勝負強い良い打者だったので、絶対打ってくれると信じていました。

中島:良い角度で上がったと思いましたが、まさかスタンドに入るとは思っていませんでした。ベンチから打球を追っていて、レフトの吉内君がフェンスによじ登るのが見えて、入った瞬間は、まさかこんなドラマチックな展開になったのが信じられなくて、気がついたらベンチ前で騒いでいたように思います。

福永:假屋原はボールがよく見えている打者で、練習試合などでサヨナラ打を打ったこともあったので、打ってくれるとは思っていましたが、まさかホームランになるとはというのが一番です。

――劇的なホームランで、土壇場で同点に追いつき、延長戦に突入しました。鹿児島川内としても延長戦は今大会初めてでした。

帖佐:延長戦まで投げるとは思っていませんでしたが、同点に追いついてくれたことで、アドレナリンが出て、疲れは感じなかったです。ただ11回ぐらいから腕が筋肉痛になるという初めての経験をしました。

[page_break:3時間21分の熱戦の行方は…]

3時間21分の熱戦の行方は…

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座談会に参加した3人(県立川内高等学校)

――鹿児島川内も頑張っていましたが、13回に先頭の4番・河野(勝丸・3年)君に三塁打を打たれ、5番・吉内君のタイムリー、途中出場の7番・石澤(凛太郎・1年)君の二塁打で2点を勝ち越されてしまいました。

中島:先頭打者の三塁打は僕のミスです。その試合、全校応援が入っていたこともあって、外野はずっと打球が見えづらくて、危なっかしい捕り方をしていました。あの打球は、前だと思って前進しかけて、すぐに違うと判断して切り返そうとしたのですが、気づいたら転んでいました。

福永:センターから見ていて、中島の動きが危なっかしくて大丈夫かと思っていましたが、案の定やらかしてしまったかという感じで見ていました(笑)。その裏は2点差を追いかけて、僕が先頭打者でした。特に緊張とか悲壮感があったとかはなく、いつも通り、来た球を打とうとして初球を打ってセンターフライ。ヒットにできなかったのは単純に僕の力不足だったと思います。

帖佐:(13回裏一死からセンター前ヒットで意地をみせる)追い込まれましたが最後まで集中していました。打ったのは多分スライダーだったと思います。二死になりましたが、次が6番・假屋原。良い当たりがライト方向に飛びましたが、残念ながらライトフライでゲームセットでした。

――改めてあの試合を振り返ってみて、今一番どんなことを思いますか?

中島:3時間21分という長い試合でしたが、本当に楽しかったです。準決勝ということで全校応援だけじゃなく、一般のお客さんも多くてスタンドが観客でいっぱいでした。外野から見ていて、こんな大勢の観客の前で試合ができたのは貴重な体験でした。ヒットも打てなかったし、守備でもミスがあったけど、一生忘れられない経験ができたと思っています。

福永:勝って決勝に行くことしか考えていなかったので、終わった瞬間は自分たちが樟南相手によく頑張ったというよりも、悔しいという気持ちしかなかったです。

帖佐:終わった後、相手の校歌を聞いているときに悔しさを感じました。次の日、決勝戦も見に行きましたが、試合を見ていたらまた悔しさが出てきて、しばらくは悔しい気持ちが忘れられなかったと思います。鹿児島実はあまり樟南の投手を打てていなかったので、自分たちが鹿児島実と対戦していたら勝てていたんじゃないかと思えて悔しかったです。

――13回を戦って浜屋君から10安打しています。これをどう評価しますか?

中島:僕たちは県立校なので全体練習の時間が少ない。初戦敗退したあと、夏までにどれだけ振り込めるかがカギだと3年生で話していました。その成果だと思います。量よりも質が大事なので、相手の投手や試合状況など、実戦を常に想定しながら、素振りもティーバッティングも打つように心がけていました。

[page_break:「本気で続けていれば、できなかったこともできるようになる!」]

「本気で続けていれば、できなかったこともできるようになる!」

――あの試合を経験したことは今後の鹿児島川内や皆さんの今後の人生にどんなものをもたらしてくれると思いますか?

福永:僕は学校の寮で生活しているので、みんなよりも個人練習をすることができない環境でした。その分、打撃の際の身体の使い方とか、フォームとかを常にイメージすることを心掛けていました。寮生だから練習できないという言い訳だけはしたくなかったです。後輩たちには、公立でも私立のチームに勝てるという自信を持ってほしい。僕は、2年生の時に最後の夏に思うように活躍できなかった悔しさと、先輩たちに申し訳ないという気持ちが1年間頑張る力になりました。何事も、本気で続けていれば、できなかったこともできるようになるんじゃないかということを夏の大会で学びました。

帖佐:後輩たちには、自分たちに足りなかったあと少しの部分を追求して欲しいです。今思えば、僕らも2年前、1年前、新チームが始まった頃の練習などに取り組みの甘さがありました。そういった部分を後輩たちは詰めていって欲しい。卒業後は進学して野球を続ける予定ですが、あの夏のように短い期間であれだけ多くの試合を経験することは今後多分ないでしょう。これから野球を続ける上でもあの経験を生かしていきたいと思います。

中島:樟南戦でうちのチームは3打点挙げましたが、全て2年生がとったものです。後輩たちはそのことを自信にして、県立だから練習時間が少ないことを言い訳にせず、みんなで声を掛け合って、僕たちに足りなかったところをリベンジして欲しいです。

 今思えば、主将をしていて、練習中気が抜けていたこともあって「もっとみんなに厳しく言っておけば」と後悔することもありました。今、主将は重久(陽彦・2年)ですが、遠慮せず、どんどん前に出てみんなを引っ張っていってほしいです。進学して野球を続けようか迷っていましたが、あの夏を経験してもっと続けたい気持ちになりました。高校では全国に行けなかったので、やるからには神宮を目指す気持ちでやりたいです。将来のことはまだはっきりと考えていませんが、野球の指導者もいいかなと思っています。


鹿児島の県立校で夏の甲子園に出場したのは2006年、現鹿児島川内の中迫 俊明監督率いる鹿児島工が今のところ最後である。いわゆる公立の進学校というくくりで振り返れば、1971年鹿児島玉龍(鹿児島市立)以来、果たせていない。センバツは14年に鹿児島大島が21世紀枠で出場するなど、鹿児島野球界の勢力図は大きく変動しつつあるとされているが、実力で勝ち取る夏に関しては樟南鹿児島実神村学園といった「強豪私立優位」の流れは覆せていない。

 この夏の鹿児島川内は、それが決して実現不可能な夢物語ではないことを証明した。「何事も、本気で続けていれば、できなかったこともできるようになる」(福永)と鹿児島川内だけでなく多くの県立校、地方校の励みになったことだろう。
しかし「できるようになった」わけではない。「あと少し足りないもの」(中島、帖佐)とは何だろうか?その答えを本気になって追求するチームが数多く出てくることが、鹿児島球界を盛り上げる力になる。

(取材・写真=政 純一郎

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【僕らの熱い夏2016 特設ページ】

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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