3年生座談会 県立川内高等学校(鹿児島)「甲子園常連校との対戦にも、僕たちの野球を」 vol.2
この夏の鹿児島大会でベスト4入りを果たした鹿児島川内の3年生に集まっていただき、第1回では、新チームスタート当初の話から夏の大会突入までのエピソードを語っていただきました。今回も、白熱した夏の大会をさらに細かく振り返っていただきます!
準々決勝の相手は第3シード神村学園!
帖佐 竜聖(県立川内高等学校)
――5回は一死から1番・中島君の二塁打を皮切りに、2番・東(比呂・3年)君がレフト前ヒットで続きます。東君の頭脳的なプレーがボークを誘って1点差とし、3番・福永君が進塁打を打ち、またしても4番・帖佐君のレフト線二塁打で同点に追いつきました。
帖佐:この試合だけは比呂が良く当たっていました(5打数4安打)。多分、全校応援の力だと思います。女の子の前では燃えるタイプなので(笑)。あの二塁打もボールの上を叩いてしまって、サードゴロかと思ったら、三塁手が飛び込んだところで跳ねて抜けてくれました。飛んだところが良かったです。
中島:比呂は走塁がうまくて、練習試合でもノーサインで盗塁を決めたことが何度もありました。1点差に迫った場面も、サインは何も出ていませんでしたが、一走の比呂が「行くぞ」という雰囲気を出していて、捕手が焦って、投球動作に入っていたのに立ち上がってしまったので、ボークがとれました。
――5回で同点に追いつき、流れは鹿児島川内かと思いましたが、7回に1番・島中(大輔・2年)君にレフトスタンドにソロホームランを打たれて再び突き放されました。
帖佐:あそこは油断していてど真ん中に直球がスーッと入ってしまった失投でした。でもセカンドの比呂がすぐに「大丈夫、逆転できる」と言ってくれたのですぐに気持ちを切り替えることができました。
――8回裏、二死二塁から代打・松永(文斗・2年)君が特大のセンターオーバー三塁打を打って再び同点に追いつきました。
中島:松永は2年生ですが、スイングスピードもパンチ力も、僕たち3年生も及ばないものを持っています。打撃練習でもうちのグラウンドにあるライト側のネットを軽く越えて、家の瓦を割ったこともありました。期待していた打者が一発で決めてくれました。
――直後の9回表は二死から2番・橋本(将太朗・3年)君に二塁打を打たれ、3番・田中(梅里・3年)主将を敬遠し、4番・田中(怜央那・2年)から会心の空振り三振をとりました。
中島:あのライトの打球処理は僕のミスでした。バットの先っぽに当たったのか、変な回転がかかっていて、弱い打球だと思って前に出て行ったら、バウンドしてから急にスピードが速くなってライト線を抜かれて長打にしてしまいました。
帖佐:9回でしたが疲れとかはなかったです。相手は4番でしたが、2球目の高めのボール球をハーフスイングでファール。相手が焦って動揺しているのが分かったので「これはいける」と思いました。その後は遊び球もはさまず、2球連続外角のボールになるスライダーを連続して空振り三振、計算通りの投球ができました。
シーソーゲームの激闘の末に…
試合シーンより(県立川内高等学校)
――その裏は一死から、この試合当たっている2番・東君がレフトオーバー二塁打で出塁し、相手のけん制悪送球を誘いました。
帖佐:その時、比呂はミスを誘うプレーをしたわけではなくて、普通にリードしていただけでした。ただボールがそれてからの走り出しがものすごく速かった。その辺の判断力は人一倍、二倍優れていて、気持ちが強い選手です。
――そして一死三塁から3番・福永君の値千金のサヨナラタイムリーが飛び出します。
福永:打席に入る前は、一死だし、もし自分が打てなくても次は当たっている4番だからと楽な気持ちでいたような気がします。でも打席に入ると本当に何も考えていなかった。僕は元々狙い球を絞るタイプでもないし、何も考えずに来た球を打ち返しました。どんな球を打ったとか、打球がどこに飛んだのかも正直見ていなかった。自分がサヨナラ打を打ったことにも気づかなくて、一塁ベース上でコーチャーに「勝ったの?」と聞いていました。打てたのはランナーの比呂や、全校応援のおかげだと思います。
――今改めてこの試合を振り返るとどんなことを思い出しますか?
中島:福永も言ってましたが、3回戦で鹿児島大島に勝ってから、不思議と負ける気がしなくなって、良い雰囲気で練習や試合に臨むことができました。4点先取されても焦らなかったのはその影響だと思います。9回に比呂がけん制悪送球を誘うことができたのも、5回に盗塁の雰囲気を見せてボークを誘ったプレーがあったから。あれで相手も警戒して更に相手のミスを誘うことができました。
僕らは練習時間などで私立のチームに勝てない分、そうやって相手のスキを突く野球や勝負強い打撃ができるようになることを目指していました。あの試合ではこれまで追求していた自分たちらしい野球ができました。
帖佐:1回戦を戦う前は緊張しましたが、大会1カ月前の練習試合では熊本の強豪チームとも良い試合ができていたので、力はついていると思っていました。神村学園ともその練習試合の感覚でやれば、良い勝負ができるんじゃないかと思っていて、勝つことができて、自分たちも力がついたことを実際に確かめることができました。
――神村学園戦の後は、第2シードの樟南が準決勝の相手。神村学園とはチームカラーが異なり、準々決勝まで無失点を続けてきたチームです。準決勝を迎える心境はどうだったのでしょうか?
中島:神村学園に打ち勝ったとはいえ、樟南の浜屋(将太・3年)君、畠中(優大・3年)君の2枚看板は強力で、点が取れるかどうか分かりませんでした。帖佐の疲労も気がかりでしたが、勝つためには何としもロースコアの展開に持ち込むしかないと考えていました。
福永:無失点を続けてきた2枚看板ということで、「どんな投手なんだろう?」と対戦を楽しみにしていました。実際にはそんなに打てていない(5打数1安打)し、確かにすごい投手だったけど、何度か対戦して、僕らの1つ上の福満(圭大郎)さんの方がすごかったと思えて、途中からは大丈夫だ、何とかなると思えるようになりました。
帖佐:投手戦になると思ったので、ヒットは何本打たれても構わないので、要所をしっかり抑えて、点をやらない投球を考えていました。
樟南との一戦!甲子園まで、あと2つ!
――準決勝翌日の新聞に出ていましたが、浜屋君のスライダー対策としてゴルフスイングを取り入れたそうですね。
中島:準決勝の前日の休養日は連戦の疲れもあるということで、練習は各自に任せての調整でした。練習前にミーティングがあって、その時に監督さんからそのイメージを持って打ってみたらどうかという話がありました。18年前の夏の甲子園で鹿児島実と横浜が対戦した時、前の試合でノーヒットノーランをやってのけた杉内(俊哉・現巨人<関連記事>)のカーブを攻略するために、横浜の渡辺監督が「ベースの上に置いたボールをゴルフスイングで打つイメージ」と言っていたのを監督さんが覚えていて、僕らに教えてくれました。
浜屋君のスライダーに関しては、試合前のミーティングでは「打つな」という指示が出ていましたが、途中からは「打て!」に変わりました。決め球を打ってしまえば投げる球がなくなるということだったと思います。最終的には各打者の判断に任せることになりました。
――樟南戦、初回に5番・吉内(匠・3年)君にタイムリーを打たれて先制され、6回までは鹿児島川内打線は散発2安打に抑えられていました。ただ、2回以降は帖佐君が立ち直って樟南打線を抑えており、1点差のままで終盤を迎えるという鹿児島川内としては狙い通りの展開でした。
帖佐:僕は立ち上がりがいつも悪くて、この試合もその悪い癖が出てしまいましたが、2回以降はいつも通りの感じで投球ができました。僕は三振がとれるタイプではなく、守備を信じて打たせてとるのが持ち味です。直球とカーブの緩急を生かすのが得意で、このカーブにはいろんな説があって、僕の中ではカーブを速くしたり、遅くしたり、緩急をつけているだけなのですが、あれをスライダーと言う人もいれば、チェンジアップと言う人もいます(笑)。初回はうまく調子を上げられませんでしたが、2回以降はこの緩急を生かした投球ができました。
福永:僕もあまり打てていないので、偉そうなことは言えないのですが、試合中、何でみんなワンバウンドのボールを振るんだろうとイライラしていました(苦笑)。3回に初安打が出てから、なかなかチームにヒットがでませんでしたが、6回に二死から比呂が死球で出て、久しぶりのヒットを打ちました。追い込まれていたのは覚えていますが、どんなボールを打ったかは覚えていません。会心の当たりではなく飛んだコースが良かったことは覚えています。
中島:5回までヒットは打てていなかったけど、競った展開に持ち込むことができました。監督さんがグラウンド整備の合間に話していましたが「終盤勝負に持ち込めば、相手は鹿児島川内には絶対に勝たないといけないプレッシャーで焦ってくるぞ」と言われたので、ヒットが少ないことを気にすることなく中盤を迎えることができました。
まだまだ鹿児島川内の3年生座談会は続きます!最終回もお楽しみに!
(取材・写真=政 純一郎)
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