3年生座談会 県立川内高等学校(鹿児島)「公立でもやれる! 県大会秋春未勝利から4強へ」 vol.1
夏の鹿児島大会は、史上初の延長15回再試合を戦った樟南と鹿児島実、伝統校の頂上決戦が大きな話題となったが、ノーシード県立校の快進撃も印象に残った大会だった。
中でも鹿児島川内は昨秋、今春とこの1年間、県大会未勝利で夏を迎えたが、3回戦で第6シード鹿児島大島に競り勝ったのを皮切りに、準々決勝では第3シード神村学園にサヨナラ勝ちし、4強入りを果たした。準決勝では第2シード樟南を相手に9回裏、1対3と2点ビハインドから6番・假屋原 立(2年)の2ランが飛び出し、土壇場で同点に追いついた。延長13回まで死闘を繰り広げ、最後は2点差で敗れ決勝進出、甲子園出場は果たせなかったが「公立でもやれる」(中島 夢人主将・3年)を示した。
チームリーダー中島主将、エース、4番で投打に大活躍だったエース帖佐 竜聖、神村学園戦で貴重なサヨナラタイムリーを放った福永 和摩、3人の3年生に夏の大会を語り合ってもらった。
■座談会メンバー
中島 夢人(なかしま・ゆめと) 主将、1番・右翼手、171センチ、70キロ、樋脇中出身
帖佐 竜聖(ちょうさ・りゅうせい) 4番・投手、177センチ、70キロ、宮之城中出身
福永 和摩(ふくなが・かずま) 3番・外野手、178センチ、72キロ、長島中出身
手探りの中でスタートした新チーム
中島 夢人(県立川内高等学校)
――今年の鹿児島川内は昨秋、今春と県大会初戦敗退で、県大会未勝利のまま夏を迎えました。夏を迎える心境はどうだったのでしょう?
中島:僕らの代は1つ上の先輩たちの時から試合に出ているメンバーが多かった。最後の夏に国分中央に負けた試合は2年生が6人スタメンで出ていました。力があると言われていたのに、昨秋は鹿屋中央に2対4、今春は伊集院に4対5、サヨナラ負けで初戦敗退でした。冬場など大変な時期もあったし、自分たちがどれくらいの力を持っているか分からず、何もかも手探りの状態でした。
鹿児島川内といえば木佐貫(洋・元巨人、日本ハム)さんらがいて決勝に進んだこともあり、強いイメージがあるのに、夏も鹿屋工に初戦敗退したら「力はあったのに1勝もできなかった代」と言われてしまう。それだけは何としても避けたいというプレッシャーはありました。
帖佐:夏の大会前、体重を維持するのが難しかったです。僕は元々太れない体質で、68キロあった体重を冬場で71キロに増やしましたが、運動するとどうしても体重が落ちてしまう。71キロを維持するために、食べるのがきつかったです。夏の大会は初戦の鹿屋工戦の前日は眠れなかったです。鹿屋工は打線が良いので、僕が抑えなきゃ勝てないと思うと緊張して眠れませんでした。
福永:秋も春も初戦敗退だったけど「ここまできたらやるしかない!」という気持ちが強かったです。
春に延長で敗れた相手にリベンジ!
座談会に参加した3人(県立川内高等学校)
――初戦の鹿屋工戦はふたを開けてみれば、5対0、2安打完封勝利でした。
帖佐:自分の中では2安打しか打たれていないのは最後まで気づいていませんでした。良い当たりは何本も打たれていて、外野に助けられた印象が強いです。特別、今までで一番良い投球をした手ごたえがあったわけでなく、ただ四死球を3個しか出さなくて、制球だけはしっかり気をつけて投げていました。
福永:今まで1勝もできなかったけど、これで勝ってチームに勢いがつきました。
中島:1つ勝ったことでホッとしましたし、内容も良いゲームだったので、この後につながるとチームの雰囲気も良くなりました。
――3回戦の鹿児島大島戦は帖佐君の投打にわたる活躍があり、2対1で競り勝ちました。
帖佐:鹿児島大島戦は夏の大会中、唯一ビデオで相手の試合を見ました。相手の渡(秀太・3年)君は強打者に対してはスライダーから入る傾向があったので、初球のスライダーを狙おうとひそかに決めていました。2回の最初の打席は、甘いスライダーが来たので思い切り振ったら、それが二塁打になり、チームに勢いをつけられたと思います。
中島:鹿児島大島には昨年の春初戦、延長13回で負けていました。その試合の最後を締めくくったのが渡君だったので、その試合のリベンジという意気込みがありました。その試合は1時間39分のスピードゲームで終わっており、集中していてあっという間に終わった印象があります。
福永:1つ、2つ勝っていたので、正直負ける気はしなかったです。
――あの試合、8回無死一塁のところで大島がラン&ヒットを仕掛けたら、ピッチャーライナーの併殺でした。
帖佐:あれは「グラブが捕ってくれた」打球でした。僕は大切の試合の前にはグローブを磨いて「明日もお願いします」と願掛けをするので、前の晩にグローブを磨いたのが良かったです(笑)。
リードされても、夏のベンチには負ける雰囲気はなかった
――4回戦の錦江湾戦も接戦をものにしてベスト8入り。この1年間初戦敗退であっさり終わっていた県大会が、勝ち進んだ上に雨で延びたこともあって長い夏になりました。
中島:一緒に練習できる日が増えたことが何よりうれしかったし、鹿児島大島戦は試合をするつもりで準備していたら、雨で試合開始が待たされた上に、照明の問題でこの試合だけ翌日に順延とか、大変なこともありましたが、これはこれで貴重な体験ができたと思っています。
福永:優勝することだけを考えていたので、ずっと通過点だと思っていました。準々決勝の相手が神村学園と決まってからは、相手のことしか考えていませんでした。監督さんも話していましたが、神村学園は強い相手だけど、終盤勝負に持ち込めば絶対勝てるから、ロースコアで粘る自分たちの野球を最後までやろうという気持ちで、焦りはなかったです。
――準々決勝の相手は第3シード神村学園。春の鹿児島大会優勝校で投打に力があり優勝候補3強の一角でした。試合は2回に暴投と3ランで4点を先制される苦しい序盤でした。
中島:4回戦の鹿児島商戦も10対0のコールド勝ち。打つチームだということで、外野の守備が大事になると考えていました。実際守ってみると、すごい打球が飛んでくるので、守っていて自信がなくなりそうになったのはこの1年間で初めての経験でした。
帖佐:打者としてはリリーフで投げてくるエースの高山(大河・3年)君のことを、研究はしていました。相手打者に対する対策は特に考えていなかったです。同じ高校生だから、低めに丁寧に投げれば、そう打たれることはないだろうと思っていました。でも2回に9番打者の1年生(羽月 隆太郎)に3ランを打たれてしまって、「これはヤバいかも」と頭の中が真っ白になりましたが、ベンチに戻ると周りが全然深刻そうじゃなかったので、まだ大丈夫と落ち着くことができました。
福永:勝つことだけを考えていたので、4点取られても焦りは全然なかったです(笑)。
中島:1イニングで4点取られて「全校応援の前でコールド負けかな」というのが頭によぎったけど、監督さんも笑っていたし、ベンチのみんなも負けている雰囲気じゃなかったので勇気づけられました。
――4点先取されましたが3回裏に2点を返しました。これも今大会絶好調の4番・帖佐君のタイムリー二塁打でした。
帖佐:この打席は何も考えていなかったです。真ん中高めのボール球を振ったら、打ち損じて右方向への凡フライ。でも外野が下がっていたおかげでポテンヒットになりました。
まだまだ座談会は続きます!第2回もお楽しみに!
(取材・写真=政 純一郎)
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