Column

3年生座談会 北海道栄高等学校(北海道)「秋・春決勝進出ナインがラストサマーを振り返る」【前編】

2016.09.10

 昨秋今春と全道大会決勝まで勝ち上がりながら、あと一歩のところで優勝を逃した北海道栄。最後の夏、「3度目の正直」と意気込んで臨んだものの、準々決勝で、秋の決勝戦の相手でもあった札幌第一に0対5と返り討ちにされ、2006年センバツ以来の甲子園出場は夢と消えた。「1勝の重み」を嫌というほど味わった1年間を選手たちはどう感じていたのか。例年以上に強烈な個性を持った主力選手たちに本音を語ってもらった。

<出席者>
金澤 祐汰(3年・投手・背番号1)
傳法 佑季(3年・捕手・背番号2)
林 航大(3年・一塁手・背番号3)
公平 銀仁郎(3年・二塁手・背番号4)
上西 孝希(3年・三塁手・背番号5)
上野 風(3年・遊撃手・背番号6)
加藤 泰行(3年・中堅手・背番号8)

高校野球を終えて率直な思いは?

――高校最後の試合が終わって、約1か月。いま改めて、高校野球生活を振り返ってみてどうでしたか?

金沢 祐汰(北海道栄高等学校)

金澤:あっという間の3年間でした。中身の詰まった、思い出の詰まった3年間でした。

傳法:自分はまさか試合に出られるようになるとは思っていませんでした。それがレギュラーとして試合に出ることができるようになった。新チームになってからの3大会は本当に楽しかったですね。

林:新チームから主将としてチームの中心となってやってきましたが、迷惑ばかりかけてしまって…。いい結果で終わることができなかったのは悔しいですけど、主将としていろんな経験をさせてもらいました。これからの人生にも生きてくると思います。

公平:これまでの野球生活の中で、一番成長できたと感じられる3年間でした。本当にいろんな経験ができました。

上西:両親のあと押しもあって大阪から出てきたんですけど、いろんなことがありました。自分たちのチームは仲が良くなかったり、対立した時期もありました。特に3年生は「個」が強いやつらばかりで、バラバラになりがちでしたけど、みんな同じ目標を持っていたから強いチーム、強い集団を作れたんだと思います。

上野:自分も関西(京都)から来て、1年生から試合に出させてもらいました。いろんな試合を経験できたことが良かったですね。北海道栄に来て本当に良かったと思います。

加藤:最初はただ練習しているだけでしたけど、新チームになってからは、いろんなことをしっかり考えながら野球ができたと思います。公式戦もたくさん経験できたし、いい成績も残すことができました。ただ、もう少しやりたかったなって思います。

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[page_break:打撃の北海道栄に転身できた理由]

打撃の北海道栄に転身できた理由

傳法 佑季(北海道栄高等学校)

――今年のチームは、昨年から試合に出ていた選手が多かったと思いますが、新チームになるときに、どんなチームにしたいと思っていましたか?

金澤:個人的なことなんですけど、去年までは結構、制球面で荒れていて、迷惑をかけてきましたからね。チームの雰囲気のことも考えて、制球力を上げていこうと思ってやってきました。

林:新チーム結成当初は、去年の流れのままでやっていた感じでしたけど、秋の全道決勝札幌第一に1対2で負けてからは、打撃の精度を上げていかないと勝てないと感じました。冬場からは打撃力を向上させるために、竹バットでとことん振り込んできました。

――これまでの北海道栄の野球は、守って守って、どんな形でもいいから点を取って、とにかく守り切るという印象でしたが、春からは打撃のチームに変わりました。

上西:秋に負けた時、ヒット3本しか打てなかった。チャンスを作れなかったのが敗因というのがはっきりしていましたから、とにかく打っていこうと。もともと打つことはみんな好きでしたし、抑え込まれた(札幌第一のエース)上出(拓真)に対する意識は強かった。それが冬場の糧となってバットを振り込んだことで、「守りの北海道栄」から「打撃の北海道栄」に変わったんだと思います。

――秋季大会が終わってからの選手間のミーティングでは、「どうすれば勝てる?」ということも話し合ってきたと思いますが?

上西:1つひとつの練習に、しっかりテーマを持って取り組もうと。たくさんのことを考えてたら集中力も散漫になるので、1つだけ「これは絶対」という目標を作るようにしました。例えばノックなら、その前に全員で集まって「今日は連係プレーを完ぺきにする」という目標を作って、とにかく連係プレーだけは妥協しないように、徹底的にやっていくようにしました。

上野:練習試合でフライが多かった時は、紅白戦などでしっかりゴロを打つように意識しました。走塁面で中途半端なところがあれば、積極的に次の塁を狙うように心掛けたりと、出てきた課題を確実に消していくような練習を意識してやってきました。

林:これまでも練習前に話し合うという習慣はあったんですけど、中身のない話が多かった。ただ集まっているだけで、それじゃ勝てないという意識がみんなに芽生えてきたんだと思います。

加藤:もともと一人ひとりの力はありましたから。いくら考えたからといって、できないこともありますけど、みんなで同じ考えを共有すればできることがたくさんある。そういう練習が出来ていったということが、最終的に良かったんだと思います。

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[page_break:秋も春も全道大会で決勝進出!]

秋も春も全道大会で決勝進出!

林 航大(北海道栄高等学校)

――そんな練習を繰り返して、春の全道大会でも準優勝。そこで「あと1つ勝つためには、何が足りなかったんだ?」ということにもなったと思いますが?

公平:秋は打てなかったから負けた。だから冬場は徹底的にバットを振り込んで、打撃力を向上させてきました。すると春にはその結果がしっかりと出ました。でも今度は守りにミスが多く出てしまった。夏に向けては守備力の強化をテーマにやっていきました。

上西:特別なことをするんじゃなくて、最低限できることをしっかりやっていこうという意識ですね。前に落としても、確実に1つアウトを取る。カバーリングを徹底するというようなことです。カットプレーにしても、みんな肩は強かったから、正確に投げることを強く意識するといったことだとか。ちょっとずつのプレーを積み重ねていくという感じですね。

傳法:自分は秋も春もずっとマスクをかぶっていたんで、配球のクセなんかも結構研究されていました。特に春はけん制を1回しか入れてなかったんで、そのあと簡単に走られてしまった。だからけん制のタイミングを変えたり、わざとけん制をいれなかったりとかしました。打たれるのは仕方がないんで、簡単に進塁させないことを心掛けていきました。

金澤:自分のテンポで投げていると、制球が乱れた時に修正できないことが多かった。だから捕手のテンポを信じて投げることを意識していました。

 これまでの反省を生かし、内容の濃い「試合のための練習」ができるようになった北海道栄は、徐々に完成されたチームへと成長していった。夏が近づくにつれて、どんどん自信を深めていった選手たち。そこには「最後の夏」という変な気負いはなく、自然体で試合に臨めるたくましい姿があった。

公平 銀仁郎(北海道栄高等学校)

――公式戦で球場入りする時、今年のチームは本当に落ち着いてましたよね。まるでこれから練習するかのような感じでしたけど、どんな練習でメンタル面は鍛えてきたんですか?

公平:一番鍛えられたのは“罰走”ですね。グラウンドの周囲の土手とか、ポール間とかグラウンド1周走るんですけど、タイムは設定されていても、本数は設定されていない。終わりが見えないんですよ。体力的には何とかいけるんですけど、「あと何本」というのがわからないから、とにかく走り続けるしかない。永遠すぎて、気持ちが遠くなっていくような…

林:あれはメンタル鍛えられたよなぁ…

上野:普通の“ランメ”(ラン・メニュー)もきつかったけど、ある程度時間が過ぎれば必ず終わるから、まだ余裕があるんです。でも“罰走”は、全然終わりが見えない…

公平:いや、“ランメ”の時も、永遠だったことが多かったよ。練習開始からずっと土手を走っていて、日が暮れて見えなくなったら、今度は室内のバルコニーを永遠とタイム走。2時間以上休みなしで走りっぱなしっていうもの、しょっちゅうでした。

林:自分たちは人数も多くて、自由人が多かったから、“やらかす”選手も多かった。だから“罰走”も多かったような気がします。

上西:たまに走りすぎて、“ゾーン”に入ることもあったよな。

 まだまだ、熱いトークは続きます!後編もお楽しみに!

(取材・写真=京田 剛


今年も大好評!
【僕らの熱い夏2016 特設ページ】

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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