「自身の経験を通して、選手に何を伝えたいのか?」髙橋 左和明監督(九里学園)vol.6
「柔軟性」という切り口で取り上げてきたコラムも今回が最終回になる。髙橋 左和明(たかはし・さわあき)監督(九里学園)は、自身の経験を通して築き上げた考え方で、選手に何を伝えたいのか?髙橋イズムの真髄に迫る。
これまでの連載
これからの時代どんなスキルが必要なのか?髙橋 左和明監督(九里学園)vol.1
仙台育英時代が髙橋監督にどのような影響を与えたのか!?髙橋 左和明監督(九里学園)vol.2
特別編!選手の為の組織・竹田イズムの真髄 髙橋 左和明監督(九里学園)vol.3
日本とは対象的だったアメリカ野球のオンとオフ 髙橋 左和明監督(九里学園)vol.4
竹田イズムの上に経験を積み重ね築き上げてきた髙橋イズム 髙橋 左和明監督(九里学園)vol.5
自分で考え、決断して、行動してほしい
グランドでの高橋左和明監督
髙橋監督は、自分で考え、多様な経験を積んできている。それは、常に好奇心や疑問を持ち、自分で考え、行動してきたからに他ならない。この考えは髙橋監督自身だけでなく、選手にも身に着けてほしいと願っているスキルの一つだ。
学生時代の限られた時間で、生徒自身が何が必要なのか自分で考えて行動することを推奨している。もちろん野球だけでなく、すべての学生生活に置いてである。
その1つに短い練習時間がある。
「野球の練習時間を長くすると、やっぱりそれ以外のやれることは限られてくるじゃないですか。野球の練習は効率的に行うことで、時短を考えています。早く終わらせてまず家に帰る、家で家族と食事をする。だから練習が終わるのは6時にしています。4時から6時です。
その後は、自分の時間。勉強をしたい子もいるだろうし、本を読みたい子もいると思います。将来のために資格を取りたいとか、漢字検定、英語検定を取ろうとする子もいます」
これこそが、髙橋監督の考えなのである。何が自分に必要なことか考え、自分で行動する時間を野球以外でも取るのである。選手を信じないと出来ない非常に難しいことでもある。なぜなら、目が届かない時間であるため、生徒が遊ぼうと思えばいくらでも出来てしまう。髙橋監督は、生徒が自分で考え動いてくれることを信じたのである。非常に勇気のある行動だ。
この事は実は野球にも活きてくる。目的を持ち自分の時間を行動できれば、野球でも自分で考えてプレーすることが出来る。
髙橋監督は今年の新チームについて、
「今年の子達は2年生は特に、自分で考えたりできます。そういう視野をもっている子が多いです。今までの期間中に目的をもって資格をとった子もいます。割と充実した、いわゆる高校生活ができてるのかな」
と語っている。そう、大事なことは野球やそれ以外でも自分で考え、行動出来ることを髙橋監督は望んでいる。髙橋監督の教育者としての顔を一部を見れた気がする。
選手からの意見も参考にするフレキシブルさ
高橋左和明監督
最後に、もう一つ髙橋監督の凄さを紹介したい。
「選手にアンケートを取っています。単純なアンケートですよ。指導者に望むこととか、チームをより良くするためにどうしようかとか、そういうアンケートを取ります。やりたい練習があればとか、それを取り入れてやることもあります」
髙橋監督の「学び」の対象は、選手にも及んでいる。選手から良い意見が出て、それが目的と沿っているのであれば取り入れるのである。
では、髙橋イズムとはどんなものだろうか?
常に何かに疑問を持つ。好奇心・学びたいという心を持ち続けること。
目的を持ったら、それを目指して行動をしてみること
そして、更に深く考え考察する
アウトプットする
ただしこれは、髙橋イズムの最終形でない。髙橋監督は今後も色々な経験を重ね、考え方も進化していくに違いない。もしかしたら5年後は、新しい考え方になっているかもしれない、そんなポジティブな変化を期待させてくれる指導者なのである。
文=田中 実