近年、山形県で着実に力をつけてきている高校がある。米沢市内にある九里学園だ。古くは女学校から始まり、100年以上の歴史のある学校だ。美しい木造の旧校舎は国の登録有形文化財に登録されている。そんな伝統ある高校で、非常に先進的でユニークな考えのもと野球部を指導している髙橋 左和明(たかはし・さわあき)監督に話を聞いた。髙橋監督の柔軟な考えと思考力の秘密に迫りたい。
これからの時代どんなスキルが必要なのか?

インタビューに答える髙橋 左和明監督
「AI(人工知能)については、世の中だけの問題でなく野球にも影響がある。例えば、野球にだけ集中していれば将来それで生きていけるかと言ったら、それも難しくなる世の中になるのではないか」
髙橋監督の第一声である。インタビューが「AI」で始まったのは、私の取材の中では初めてである。この「AI」に込められた意図を読み解いてみたい。
「21世紀の世の中、人はどういったスキルというのを身につけていかないといけないんだ。野球にだけ集中していれば将来生きていけるかと言ったら、それも難しくなる世の中になるのではないか。何か達成するということは、一つの大事なことだと思うのですが、それプラスアルファのスキルを身につける必要があります」
髙橋監督が考えているのは、九里学園で指導した生徒たちの将来なのである。卒業するまでに野球という縁で繋がった生徒たちに、どのようなスキルを身につけ卒業させてあげられるのか?これこそが髙橋監督の考えなのである。
AIは、得られたデータの解析、分析をする能力に長けている。いわば一度決められたルールを実行、もしくはそのルールに基づいた解析を得意とする。さらに言えば大量のデータが来ても、ルールに則った解析を一瞬で行えるのである。ただしそこに独自性はない。一方、AIに欠けている事は自分で考えてアウトプットする創造力である。
だからこそ、髙橋監督が今の生徒に求めるのは、「独創性のある考えをアウトプットする」力である。インプットだけでないアウトプット、つまり双方向のやり取りが出来る力である。髙橋監督はそれを「コミュニケーション能力」と言う。
では、髙橋監督が取り入れる「コミュニケーション能力」を伸ばす方法を見てみたい。