前回のコラムの続きになる。野球というゲームに置き換えるなら、野球は「相手より多くの得点を記録して、勝つことを目的とする」スポーツである。古賀 豪紀(こが・ひでとし)監督(九州文化学園)が7分間ノックを行わないのは、その目的を達成するための取捨選択なのである。この真意を更に踏み込んで読み解いていきたい。
今までの連載記事
vol.1:背番号は総選挙で決めるその真意 古賀 豪紀監督(九州文化学園)
vol.2:どこよりも重みのある背番号 古賀 豪紀監督(九州文化学園)
vol.3:個人的な会話をしない「見る」コミュニケーション 古賀 豪紀監督(九州文化学園)
vol.4:たった一言の「声がけ」が大きな力になる!古賀 豪紀監督(九州文化学園)
vol.5:7分間ノックはしない!どこで最高のパフォーマンスを出すのか?古賀 豪紀監督(九州文化学園)
全力疾走は本当にいつも必要なのか?

古賀豪紀監督(九州文化学園)
「日本人は全力疾走を美化するじゃないですか、夏の40度の中で常に全力疾走してどうなるんだ」
この古賀監督の言葉は、実は7分間ノックに通じるものがある。
「猛暑の中、もし長打を放って、三塁まで狙ってアウトになったとします。このアウトでチェンジになり、その後ベンチに全力で戻ってきます。さらに守備がライトなら、自分のポジションまで全力で走って戻ります。その次にライトに打球が来たら、もうはぁはぁ言って、取れないんですよ」
野球というゲームに置いては、最悪のパターンである。もし全力疾走が目的になっていたらそれでも良いが、野球というゲームの目的は、「相手より多くの得点を記録して、勝つことを目的とする」と決められているのである。だからこそ、古賀監督は猛暑のなか攻守交代時の全力疾走には反対なのである。これも野球の目的を達成するための取捨選択だ。
「全力の意味が。この中(グランドの中)で全力でやるのに、攻守交代が全力だと思ってるんですよ。違うんですよ。打ったらもちろん全力ですよ。ただ、ベンチから走っていくのは全力じゃないですよ。でも日本はそれを望んでるんですよ。だから観客も望んでるんです」