プロセスを褒める 西村 慎太郎監督(西日本短大付属)vol.4
以前、西村慎太郎監督(西日本短大附属)のインタビューで、『「本気」の行動に挫折はない』を執筆した。今回のコラムは、本気のアプローチでは、結果でなくプロセスを見ることの重要性に迫りたい。
プロセスを褒めてあげる
西村慎太郎監督
「[stadium]甲子園[/stadium]にいったら成功なんだ、[stadium]甲子園[/stadium]行かなかったら失敗なんだ。だけど僕は逆で子供達が必死にやってる姿を認めてあげる目を大人が持てば。人は絶対成長すると思う」
この西村監督の言葉には2つの大切な想いがつまっていると思う。
1) 結果でなくプロセスを見る
2) プロセスに注目する環境は周りが作る
この2点だ。
「ヒットを打った瞬間に、つい『よく打った!』と結果に注目しやすいです。打った結果を褒めると、それをまたやろうとしてプレッシャーにしかならないですよ。だけど必死にやってる姿を褒めると、頑張ることの面白さとか、認められ方を覚えるので、絶対人は伸びると思います」
「結果は後ですよ、力があるやつはいっぱいいるんですから。だから、どこを認めたり褒めてやったりするかです。僕たちが練習時間を選手とあれだけ費やしているのは、実はその瞬間と出会うためにじっと我慢して見てるためなんです」
西村監督は、結果でなくプロセスを大事にしている。そして、プロセスを褒められるように出来る限り練習を見ているのである。選手の成長のために出来る限りの時間を費やす。これは一貫した西村監督の考え方である。
[page_break:プロセスを褒められるのは、グランドだけではない]プロセスを褒められるのは、グランドだけではない
西日本短大附グラウンド
またプロセスを褒められる環境は、何もグランドの中だけではない。
「僕は練習で、家に帰って素振りをしている姿とか、一生懸命眠たいのに勉強してる姿とか、それを『よく頑張ってるな』と言ってあげると人を伸ばすと思います」
選手が日々の生活で接する多くの場面で、褒められる行動は沢山落っこちている。周りの大人が皆で変わることで、子どもたちは大きく飛躍するのである。
「子どもたちに対して何かできたわけではないんですよ。彼らは一生懸命、無心にやって、何が良いか悪いかわからないので、『こんなすごいことをやってるんだぞ』というのは僕らが拾って、『はい』って(子どもたちに)見せてあげるだけなんです。それが僕らができる仕事なのかなと思ってます」
あくまでも裏方に徹する。主役は子供達である。これこそが西村監督の指導者論なのだろう。
編集後記
「自分のために生きるなら人間1人分の能力でいい。でも他者のために何か役に立つ仕事は2人以上のことをやって行かないといけないので、自分を高めてることなんです。だから昔から人達は『人の役に立ちなさいよ』と僕たちを育ててくれたんじゃないかと思うんです。
今は自分のためにと言いながら結局自分の能力分も生きてない。他者のためにと言って、自分の能力が上がっていってることに気付けば、ものすごく楽になると思うんですけどね。全部で人の役に立つことはできないかもしれないけど、そういう発想で動いた方が絶対自分の成長にも繋がると思います」
裏方に徹する西村監督に話を聞いた時の答えである。2度の[stadium]甲子園[/stadium]出場の名将は、選手を支えながら、選手の成長を1番に考えている。
文=田中 実