人を怖がらない力 西村 慎太郎監督(西日本短大付属)vol.2
「人を怖がらない子って強いですよ。怒られたりしても人間関係が崩れないとかそういう経験をしてきている子ですね。 昔でいう愛情を受けてきたことゆうこなのかなと思います。なので「怒られても大丈夫だ」と、「この人は自分を良くするために言ってくれる」、とかを分かる子は、人を怖がらないです」
西村慎太郎監督(西日本短大附属)の言葉である。
今回のコラムは、西村監督が考える、「人を怖がらない子」の野球に置けるメリットと、怖がらない子にするための工夫を聞いてみた。
コミュニケーションの時間が短くて済む
西村慎太郎監督
人間関係を円満にするには、コミュニケーションが大事である。それは野球に限らず、人とつながる社会であるならばどの場所でも必要なスキルである。
「人を怖がらない子」は、人を信頼している。相手を受け入れてコミュニケーションが取れる器があることになる。
西村監督は、技術指導時の例を挙げてくれた。
「疑って聞くのとまずやってみようというのでは全然違いますよね。だから限られた時間で成果を出そうとするならば、人を怖がらないこと(信頼関係があること)が一番大きい」
逆に、この信頼関係がないとどうなるのであろうか?
「それがない子達は常にこう探りながらやっている。時間が倍かかります。相手の腹を読み、探りながらやります。今まで寮生を預かってきて感じました」
多くの生徒を指導してきた経験があるからこそ、力強く語ってくれた、「人を怖がらない」力である。
[page_break:どうやったら信頼関係を作れるのか?]どうやったら信頼関係を作れるのか?
西日本短大付のグラウンド
こうなると、興味が出てくるのが、どうやったら信頼関係を作れるのか?言い換えれば「人を怖がらない子」になれるのか?である。
「失敗させることですね。人間関係で失敗したことも、成功したこともないから、何か成功か失敗かわからないんです。ぶつかっても大丈夫だよ、友達同士がぶつかっても大丈夫だし、ぼくら指導者とぶつかっても大丈夫だよ、という場面を見せてあげることです」
失敗しても、大丈夫だという実体験をもたせてあげることが大事になる。人との関係を怖がる子供は、ぶつかることに、「問題になるんじゃないか」「自分が嫌われるんじゃないか」と考える。これは別に子供が悪いわけではない。そのような環境を今まで大人が作ってきたことが要因と西村監督は考えている。
「だから僕はグランドではぶつかります。ぶつかってもどうもなからろうと言うのを見せるためです」
西村監督は、選手にぶつかっても大丈夫な経験をさせようとしているのである。この事の効果を更に高める西村流メソッドがある。それこそが、「メンバー決め投票制」である。
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春、夏のベンチメンバーは西村監督は決めないのである。すべて選手間の投票で決まる。
「メンバー決めは投票ですから、僕に胡麻をする奴は一人もいないんですよ。『この野郎ノッカー!』と選手も言いますし、僕もぶつかります。ぶつかっても大丈夫です。なぜなら、お互い利害で動かないんで。ただお互いに利害が生じてくるから、測かるわけです。それは僕はもうグランドの中で全部やります」
ここまでなぜ、「人を怖がらない力」に拘るのか? それは西村監督の生徒への愛情がある。
「高校を卒業して野球でうまく行く子、行かない子いますけど、卒業して社会でうまくやっている子は野球の上手な下手じゃなくて、そういうことができた子です」
だから、こそ西村監督は社会に出て活躍できる子供にするために、今日も選手と向かい合っている。「人を怖がらない」ことを理解できる経験をさせるために。
vol.2はここまで。次回は「体験」という言葉に着目して西村監督にお話を伺っていきます。西村監督はどういったことを語ってくれるのか。次回もお楽しみに!
文=田中 実