Column

メンバー決めは投票制! 西村 慎太郎監督(西日本短大付属)vol.1

2019.03.18

 「うちのチームはメンバー決めが投票なんですね。1番から9番まで2点で、10番から20番までが1点で一人一人が監督になったつもりで毎年投票するんです」

 西村 慎太郎監督(西日本短大附属)のこの言葉は強烈な印象が残った。

 まず始めに思ったのが、「なんと大変なことを子供に託したのか」。そして次に頭に浮かんだのは「その真意を知りたい」である。

 今回は、西村監督が採用した、「投票制メンバー決め」について深く掘り下げたい。

メンバーの投票制を取り入れようと思ったのはいつ?

メンバー決めは投票制! 西村 慎太郎監督(西日本短大付属)vol.1 | 高校野球ドットコム
西村 慎太郎監督

 西村監督がメンバーの投票制を考えた背景には2つの「気付き」がある。

 1つ目の「気付き」は、西日本短大附属が1992年に浜崎 満重前監督の下、全国大会優勝を成し遂げた後の選手たちの行動にある。

 浜崎は新日鉄堺で監督を勤めた後に、西日本短大附属の監督に就任。社会人野球のレベルの高い野球を高校野球に持ってきた指導者である。 西村監督もまた、浜崎の指導を受けた選手の1人だ。西日本短大附属は、1992年の全国制覇以降なかなか[stadium]甲子園[/stadium]に出れずにいた。

 西村は、当時を振り返りこのように回想している。

 「非常に素晴らしい指導者がいる。すごい監督がいるから選手が頼りすぎて伸びないのではないか? 自分たちのときは(浜崎)監督に負けたくない!認められたいから、監督の求めるレベルまで早く行くぞ!という雰囲気があった。優勝した後は、監督の言うことさえ聞いてるから大丈夫となっている」

 自分たちで考えずに、偉大な指導者に依存しすぎている選手達に西村は違和感を感じていた。

 「いつのまにか監督に依存してしまって、生徒たちが伸びる方向でなく、監督に乗っかってるだけに見えたんですよ。選手に能力がどんなにあっても、そういう風になっては伸びないと思いました」

[page_break:普段の生活態度は必ず野球にも出る]

普段の生活態度は必ず野球にも出る

メンバー決めは投票制! 西村 慎太郎監督(西日本短大付属)vol.1 | 高校野球ドットコム
西日本短大付属のグラウンド

 そして、もう一つの「気付き」が寮で経験である。

 西村監督は西日本短大附属で17年監督をしている。その以前はコーチをし、コーチ時代から選手とともに寮生活をしている。当時の寮生活で一つの気付きがあった。

 「いい選手たくさんいるんですけども、公式戦で結果出ないんですよ。なんでかなと思うと、すごく寮生活のあり方とか、野球やってる時と、日常生活が全く違う子が多いんですよ。監督の前では良い顔をする。だけど公式戦になると日頃抜いてますから、力に変わったりする、そういう選手をたくさん見てきました。やっぱり監督に好かれたいでやってるレベルじゃだめなんです」

 どうしても、裏表が出来てしまう。そうすると野球のプレー中に表の顔でなく、裏の顔が出てきたりと大事な場面で本来の力が出ないことがある。西村監督は、そのような二面性を排除して、野球以外の日常生活を正すことで、野球でも状況が変わろうと心が乱れない選手につながると考えた。

 この2つの「気付き」から、西村監督が導き出したのが、メンバー決めの投票制である。

 「自分が最初監督になった時、これじゃあ選手伸びないなと思って投票制に変えたんですね。 17年前です」

 こうして「選手が自分で考えて動ける」ために、そして「日常生活からの改善」のためにメンバー決めの投票制は始まったのである。

選手は監督以外に360度気をつける

メンバー決めは投票制! 西村 慎太郎監督(西日本短大付属)vol.1 | 高校野球ドットコム
投票制の意図を語った西村監督

 「子供達は大変ですよ。なぜかというと僕(監督)に好かれたいって簡単ですよね。1人に胡麻すればいいんですから。でもチーム全員に認められるって、一人じゃないですよね。二人以上です。それは生き方をもっとあげないといけないですよね。誰からもこいつちゃんと頑張ってるなと思われないといけないわけですから。だからそっちの方が難しいです」

 この言葉にすべてが詰まっている。選手たちは投票制になったことで、監督だけでなく周りの選手にも、納得して投票されるだけの選手にならないといけないのである。他の選手と触れ合う場所は、グランドだけではない。授業中であったり、寮のなかであったり。その全ての行動から変える必要がある。

 これこそが、西村監督が選手に望んでいる、日頃の生活からの鍛錬なのだろう。更にその先には、将来選手たちが高校を卒業した後、社会で羽ばたけるための人間力の育成に繋がっているのである。

 vol.1はここまで。vol.2では「人を怖がらない」ことと、コミュニケーションの関係を軸に、西村監督にお話を伺います。次回もお楽しみに!

文=田中 実

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.04.22

【埼玉】花咲徳栄は伊奈学園と、昌平は正智深谷と初戦で対戦<春季県大会組み合わせ>

2024.04.22

【和歌山】智辯和歌山、田辺、和歌山東がベスト8入り<春季大会>

2024.04.23

【春季埼玉県大会】地区大会屈指の好カードは川口市立が浦和実を8回逆転で下し県大会へ!

2024.04.22

【九州】神村学園、明豊のセンバツ組が勝利、佐賀北は春日に競り勝つ<春季地区大会>

2024.04.22

【仙台六大学】東北高で4番を打った1年生・佐藤玲磨が決めた!東北工業大が“サヨナラ返し”

2024.04.17

仙台育英に”強気の”完投勝利したサウスポーに強力ライバル現る! 「心の緩みがあった」秋の悔しさでチーム内競争激化!【野球部訪問・東陵編②】

2024.04.21

【神奈川春季大会】慶応義塾が快勝でベスト8入り! 敗れた川崎総合科学も創部初シード権獲得で実りのある春に

2024.04.22

【埼玉】花咲徳栄は伊奈学園と、昌平は正智深谷と初戦で対戦<春季県大会組み合わせ>

2024.04.22

【和歌山】智辯和歌山、田辺、和歌山東がベスト8入り<春季大会>

2024.04.23

【春季埼玉県大会】地区大会屈指の好カードは川口市立が浦和実を8回逆転で下し県大会へ!

2024.04.09

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.05

早稲田大にU-18日本代表3名が加入! 仙台育英、日大三、山梨学院、早大学院の主力や元プロの子息も!

2024.04.14

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.02

【東京】日大三、堀越がコールド発進、駒大高はサヨナラ勝ち<春季都大会>

2024.04.12

東大野球部の新入生に甲子園ベスト4左腕! 早実出身内野手は司法試験予備試験合格の秀才!