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第4回 健大高崎(群馬)葛原美峰コーチ流ゲームプラン立案メソッド 「精巧なプランの下、実行される機動破壊」【Vol.2】2017年05月10日

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【目次】
[1]走:最も相手にダメージを与える方法を採用する
[2]攻:「できること」「できないこと」を明確にする

健大高崎(群馬)葛原美峰コーチ流ゲームプラン立案メソッド 「木」ではなく「森」を視る【Vol.1】から読む

 もはやおなじみの「機動破壊」。だが、健大高崎はそれだけではない。走攻守にわたり緻密に練られたゲームプラン。その存在がチームの力を何倍増しにもしている。いったい、どのような流れでゲームプランは練られていくのか。立案者である葛原美峰コーチに秘訣をうかがった。

走:最も相手にダメージを与える方法を採用する

葛原美峰コーチ(健大高崎)

 健大高崎にとって、もっともストロングポイントとなる「走」。冒頭で示したように、また、過去の野球部訪問の記事にもあるように、健大高崎の走塁の胆は「ピッチャーにバッターと1対1の勝負をさせない」心理状況を作らせることにある。

 その威力は年々進化を遂げているわけだが、対戦相手に応じて機動破壊のプランは変わる。葛原コーチが最も印象的なゲームとして挙げるのは、2015年夏の甲子園3回戦秋田商(秋田)戦(延長10回3対4で敗戦)だ。
秋田商には、その後千葉ロッテにドラフト3位で入団した成田 翔投手がいました。分析した結果、正直、打てない――特にスライダーは――という結論になり。それでも勝つための方法を考えた時に、『とにかく打たない』と考えました。そしてとにかく球数を増やす。追い込まれたらがんばって2球ファールする。そして『散兵戦術』でいこうと」

「散兵戦術」とは、明治維新期に外国の軍隊が見せた戦術で、兵が一箇所に固まらず散開することであらゆる角度から敵軍を攻撃した兵法である。これに勝機を見出そうとした。
「塁に出たらあらゆる方向からピッチャーを攻める。そしてとにかく牽制球をもらう。牽制も球数にカウントするイメージです。結局、3回までに15球以上は牽制をもらったのではないかな。それで7回以降に勝負をかけようと」

 試合は中盤まで1対3と2点ビハインド。だが、8回裏に2点を取り追いついてみせた。まさにプラン通りである。
「8回の攻撃も同点にした後、一死三塁の状況を作りだせたのですが逆転まではできず。結局、力及ばず不運もあり負けてしまいましたが、自分の中では戦略がはまったベストゲーム。選手のみんなは打ちたいはずなので我慢して一生懸命ファールを打ってくれた。その姿に、本当に涙が出そうでした」

 結局この試合、成田投手には161球を投じさせた。牽制球も入れると、200球近く投げさせたことになる。このように、ゲームプランによっては、盗塁よりも牽制をもらうことの方が重要になる場合もある。
この間のセンバツ(2017年春)の札幌第一戦でいえば、徹底的に戻ることを意識させました。戻って戻って戻りまくる。どんなに牽制を工夫しても、ピッチドアウトしても、牽制された時には既に戻って塁上に立っているぐらいきっちり戻る。そうすれば、盗塁よりリスク少なく重圧をかけられますから」

 この試合、健大高崎の盗塁は1。だが、牽制球は1、2回だけで13を数えた。試合序盤からランナーを意識し続けさせた時点でペースは握っている。結果、11対1の勝利。「機動破壊」がいかに精巧なプランの下、相手心理を巧みに突いているかがよくわかる。

【次のページ】 「何点勝負か」からプランを練る

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プロフィール

伊藤亮
伊藤 亮
  • 生年月日:1977年
  • ■ 東京都出身。都立三鷹高校野球部
  • ■ 2004年よりフリー編集兼ライターに。
    『ジーコ備忘録』『ピンポンさん』『セルジオ越後のフットサル入門』『直伝 澤穂希』『俊輔の言葉』など幅広くスポーツ関連書籍の取材・編集を行う傍ら、『新興衰退国ニッポン』(講談社)など、時事問題やカルチャーに関する書籍編集にも数多く携わっている。
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