Column

専大松戸の持丸 修一監督が語った「甲子園に導いた一流の控え投手」

2016.03.28

 昨年、創部初の甲子園出場を果たした専大松戸。その指揮を執るのが持丸 修一監督である。竜ヶ崎一藤代常総学院の監督を務め、2007年冬に専大松戸の監督に就任。常にニコニコしながら、独特の茨城弁で選手たちに話しかける姿はとても親しみやすい雰囲気がある。今回はそんな持丸監督に控え選手のエピソードを話していただいた。持丸監督が話す一流の控え選手とはどんな選手なのだろうか。

学年トップで入学した角谷投手

角谷 幸輝選手(専大松戸)

「いろいろおりますが、やっぱり昨夏の千葉大会の優勝投手になった角谷幸輝を一番手に挙げたいですね。彼こそがスーパー控え選手です!」
角谷は浦安中出身で、Kボール千葉県選抜の左のエースとして活躍するなど、千葉県では有名な選手。選んだ先は上沢直之(北海道日本ハムファイターズ2015年インタビュー)など数多くの好投手を輩出する専大松戸だった。さらに角谷は勉学も優れた選手だった。
「彼は勉強が凄いできる子で、学年トップで入学したんです。生活態度もしっかりしていて、勉強もできて、野球の方では入学からコントロールも良く、変化球も良く、試合が作れる投手でしたので、1年からベンチ入りしていましたね」

 能力も高く、早くも登板機会を与えられた角谷。しかし同期には原嵩(千葉ロッテマリーンズ)がいた。1年からすでに140キロ台の直球も投げ込んでいた原。1年の時からプロへいくのでは?と才能を発揮していた選手だった。エースはもちろん原で、角谷がエースとして投げる機会はなかなか巡ってこなかった。
また角谷自身も悔しい敗戦を経験していた。2年夏の決勝東海大望洋戦。勢いに乗った東海大望洋打線を止めることができず、打者1人に投げて1安打を打たれてそのまま降板。秋も松戸国際に敗れて選抜出場を逃していた。この時の角谷を見て、持丸監督はこう感じていた。

「2年秋に松戸国際戦で負けてから自信を失っている感じがしました。それでも練習は一生懸命やっていましたし、私にどんどん話しかけて、何か習得しようと努力をしていましたよ。やっぱり自信をつけるには実戦で活躍するしかないんです。3年春では自信を付けさせること、そして夏を見据えて角谷に背番号1をつけさせました」

 角谷は持丸監督の期待に応え、県大会では2回戦松戸国際と対戦。長打力と細かな戦略を得意とする松戸国際打線に対しても全く恐れることなく投げていった角谷は1失点完投勝利を挙げると、松戸国際に勝利したことで自信がついていったのか、その後の試合でも拓大紅陵には延長11回まで投げ切り、1失点完投勝利。準決勝千葉敬愛戦でも1失点完投勝利を挙げ、関東大会出場に貢献したのだ。そして関東大会でも先発し大きな経験を積んだ角谷。持丸監督の期待に応えられる選手となっていった。

「結果的に彼のおかげで春季千葉県大会優勝することができましたので、夏でも先発で任せられる目処が立ちました。夏の大会では背番号1は原が着けることになったのですが、メンバー発表前に原に背番号1を付けることを角谷と外野グラウンドを歩きながら、話したんです。角谷は背番号10、11のどっちが良いと聞いて、角谷は背番号1に近い10番が良いということで、背番号10で夏に臨みました。それだけエースを取りたい思いがあったのでしょう」

■注目動画
「いつか、僕と戦うかもしれないライバルへ。」

「生きる道は、どこだ。」

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[page_break:最後は原、角谷、どちらがエースなのか分からないほどまでに]

最後は原、角谷、どちらがエースなのか分からないほどまでに

選手と対話する持丸監督

 角谷は先発投手として活躍。エース原の負担を減らす役割をしっかりと果たした。勝ち上がり、迎えた決勝戦の相手は2011年以来の甲子園出場を狙う習志野だった。この試合、先発したのは原。しかし原は4回途中まで投げて2失点で降板。角谷は2番手として登板した。角谷は安打を打たれながらも、失点を与えない。しかし7回表に1点を失い、0対3の3点ビハインドとなる。しかし懸命に投げる角谷の力投に応えたのが打線だった。7回裏に、原のランニング満塁本塁打などで一気に7点を入れて大逆転。そして角谷は安定感ある投球で追う習志野打線を凌ぎ、見事、千葉大会の優勝投手となり、初の甲子園出場をつかんだのであった。春の大会の時点で夏を見据えて積極的に起用した持丸監督の方針が功を奏した結果となったのだ。

 そして角谷の好投はまだ続く。甲子園1回戦花巻東戦では先発の原が5回途中まで投げて4失点。2番手として登板した角谷は130キロ前後の直球、変化球を巧みに投げ分け、3.2回を投げて無失点、無安打に抑える快投を見せた。試合には敗れたものの、初の甲子園の舞台で好投を見せたことは大きな自信になったことだろう。この活躍を見て持丸監督は、

決勝習志野戦は彼の好投がなければ7回裏の大逆転劇はありませんでしたから。そして甲子園の花巻東戦でも好投を見せてくれましたし、周りの人には、原と角谷がどっちがエースなんだ?と思わせるぐらいの活躍を見せてくれたと思います」

 どっちがエースなのか?角谷は大事な場面で原以上の活躍を見せていた。常にエースを目指して取り組んでいた角谷が、チームの危機を救う救世主となっていたのだ。まさに一流の控え選手というべき最後の夏であった。

 この活躍について、持丸監督は角谷の姿勢をこう称えた。
「活躍する選手は、素直であることは一番なのですが、教えたこと以上をやり遂げる選手ですね。プロ入りした上沢、原、渡邉大樹(東京ヤクルトスワローズ)、そして角谷。彼らは素直なのですが、自分たちで何をやるべきかを考えられる選手だったと思いますよ。教えれたことだけをやる選手は活躍できません」

 エースの座を奪うには、教えられた以上のことをしなければ無理だと角谷自身、気づいていたのだろう。その取り組みが最後の夏で功を奏したのだ。そして持丸監督が選手に接する時に特に大事にしていることも教えてもらった。
「彼らには考える力があったのでしょうか。選手との対話で大事にしているのは、『はい、いいえ』だけはなくすようにしています。私自身、その答え自体が嫌いですから。それが選手たちの考える力を養っているかもしれませんね」

 取材日も、今年のチームの主砲・丸茂 弘汰、主力選手の永井 雅哉と長時間、打撃について話し込んでいる姿が見えた。丸茂、永井も、自分の考えをどんどん持丸監督へ話していたのだ。そしてそれを受け入れる持丸監督。
専大松戸で活躍できる選手というのはこうしたやり取りの中で自分で考えて行動する力を養っているのだろう。今後も専大松戸のレギュラーだけではなく、控え選手の活躍が見逃せない。

(取材・文=河嶋 宗一

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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