【選抜出場校徹底分析】秀岳館高等学校（熊本）

九鬼 隆平（秀岳館）

チーム記録
打率5位
1試合平均得点7位
得失点差平均6位
長打率2位　0.585
安打数に占める長打の割合2位　36.8%
1試合平均安打1位
1試合平均盗塁3位
1試合平均三振の少なさ4位

防御率10位
1試合平均奪三振9位
1試合平均許盗塁10位
1試合平均失策9位

　打率、得点、安打、盗塁、三振など32校で上位のオフェンスにディフェンスが噛み合い、初の九州チャンピオンに輝いた。
打線の中心は4番で主将の九鬼隆平（2015年インタビュー）で、打率5割1分1厘をマーク。本塁打4、打点23、長打率1.067はいずれも32校の打者で2位にランクされた強打者だ。23安打を放ちながら長打の割合が60.9%という数字は驚異的だ。さらにチームトップタイの6盗塁を成功させ、三振もわずかに1と、データからは相手投手が打ち取るのは至難の業と言えるくらいのものを感じる。3番・木本凌雅は九鬼に次ぐ打率4割8分8厘で11打点。5番・堀江航平の11打点、6番。廣部就平の10打点と九鬼の周りにもチャンスに強い強打者が揃う。

　試合別の成績を見ると際立つのが三振の少なさで、最も多かったのは九州準決勝の日南学園戦での5個だった。安打数でも11試合中10試合で相手チームより多い。
唯一敗れた明治神宮大会1回戦の東邦戦でも、相手の藤嶋健人（2016年インタビュー）から9安打を放った。ただこの試合では11試合で唯一盗塁を記録していない。この点がウイークポイントと言えるのか、それとも先の戦いを見越して相手キャッチャーを探っていただけなのか？

　投手陣は公式戦で7人が登板。これは32校で最も多い数である。
柱になるのはエース・有村大誠。ただ、10試合で完投は4。チーム総投球回数の61.24%に抑えられたところに、鍛冶舎 巧監督の先を見越した長期プランを感じる。特に県大会での起用法が顕著で、完投2試合はともに5回コールド。決着がつくのがもっと長ければ、継投していたのではという読み方もできる。逆に九州大会に入ると2試合連続で9回完投。準決勝以降は再び継投に転じており、初めから九州前半の2試合を有村に託すと決めていたのかもしれない。個人ランキングを見ると、与四死球率1.71が32校の主力投手（投球回数25以上）で5位入った。

　九州決勝と、明治神宮大会1回戦で先発した堀江は10イニングで無失点と好投した。元々はエース候補だっただけに、最後の2試合だけで結果が出たのは大きい。夏の練習試合では8月16日の大阪桐蔭戦の先発など、少ない登板機会ながらもしっかりと準備できていたことがうかがえる。
1試合平均許盗塁は32校で10位の0.42。キャッチャーの九鬼は最後の東邦戦での3個が悔やまれるが、それまでは10試合でわずかに1盗塁と強肩ぶりを発揮した。
守備陣は11試合7失策で1試合平均0.73は9位。ただ、失点に占める自責点の割合が75.0%でとやや低く、この数字をもう少し良くしたいところだ。
秋を勝ち上がる過程で最も苦しんだのが県準々決勝の開新戦で、唯一の1点差ゲーム。この試合だけ安打数が相手の方が多かった。

　秋季大会の登録選手は23人で、全員が1試合以上は出場した。11試合全てに出場した外野手の半情冬馬がスーパーサブ的な存在だ。レギュラーの左打者が2人と少ないだけに、途中出場する左打者がカギを握る可能性もある。
現在の上級生は鍛冶舎監督の就任と同じ時期に入学。指揮官がかつて関西で中学生を指導していたこともあり、近畿地方出身者が13人と多くなっているのが特徴。逆に地元の熊本出身は1人だけという構成になっている。