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名門松商学園と佐久長聖を中心だが上田西など新勢力も絡み合う【長野・2018年度版】

2018.05.03

長野の高校野球を語る上で欠かせない松商学園

名門松商学園と佐久長聖を中心だが上田西など新勢力も絡み合う【長野・2018年度版】 | 高校野球ドットコム
直江 大輔(松商学園)

 長野県の高校野球といえば松商学園である。前身の松本商時代から、県内を引っ張ってきた。初めて[stadium]甲子園球場[/stadium]に舞台が移った1924(大正13)年夏には準優勝を果たしている。その2年後の26年春にも決勝で広陵に敗れて準優勝となる。広陵との因縁は強く、27年春夏もいずれも準決勝で広陵に敗れている。この因縁は続いて、広陵を1回戦で下した28年夏には、それで勢いづいて快進撃を果たして全国の頂点に立っている。そして63年後、センバツ決勝に進出した際にも、またしても広陵と当るのだった。
 天敵となった広陵とは甲子園で都合6回顔を合わせている。1勝5敗と分が悪いが、決勝で二度当たっている他、勝った方がいずれも決勝進出しているというのも興味深い因縁ともいえる。

 その松商学園の最大のエポックとなったと言えるのが1991(平成3)年のことである。この年のセンバツに5年ぶりに出場を果たした松商学園は、長野県勢としては久々に前評判の高いチームだった。エースの上田佳範(日本ハム→中日)が安定しているというのが最大の要素だったが、1回戦で愛工大名電を3対2と1点差で退ける。当時の愛工大名電にはイチロー(オリックス→MLB)がエースで3番でいたが5打席を無安打に抑えている。
 これで勢いづいた松商学園、2回戦では前年夏の優勝校で夏春連覇に挑んだ天理を完封。さらに準々決勝では優勝候補筆頭だった大阪桐蔭も完封。準決勝では国士舘も完封して決勝進出を果たす。65年ぶりの決勝進出の相手が、当時と同じ因縁の広陵だった。5対2のリードから7回に追いつかれ、結局サヨナラ負けで優勝を逃すのだが、長野県は久々に高校野球に燃えた。

 この大会で上田投手の評価はさらにあがったが、夏も甲子園に出場。県勢としては久し振りに前評判が高かった。夏も、松商学園は3回戦で井手元健一朗(中日→西武→JR東海)のいる四日市工に延長16回の末に満塁で、上田が頭部に死球を受けサヨナラ押し出しで下している。結局準々決勝で、力尽きて松井秀喜が2年生で四番に据わっていた星稜戦で敗退する。
多くの長野県人は、この年の高校野球だけは強烈に記憶しているという。

[page_break:近年は佐久長聖を軸に、新鋭の上田西などが追いかける]

近年は佐久長聖を軸に、新鋭の上田西などが追いかける

名門松商学園と佐久長聖を中心だが上田西など新勢力も絡み合う【長野・2018年度版】 | 高校野球ドットコム
佐久長聖の西藤

 松商学園で盛り上がってから3年後の夏、初出場の佐久が、スイスイとベスト4に進出する。佐久長聖と校名変更した翌年も甲子園に姿を現すが、こうして勢力構図は松商学園時代から佐久長聖が中心へと移行していっていくようになる。佐久長聖は駅伝の強豪校としても知られている。
 佐久長聖躍進の背景には、長野新幹線や道路交通網の発達で、首都圏への遠征や見学も容易になってチームの意識アップしていったことも大きいだろう。また、選手も関東の少年野球の有望選手が入ってくるようにもなった。同じ東信地区では近年、勢いがいいのが部員も多い上田西だ。13年に甲子園初出場を果たすと、15年夏にも再び甲子園に姿を現している。

 このように、現在は長野県の勢力図は佐久長聖を軸に、新鋭の上田西と伝統の松商学園が絡むという三つ巴の様相と言っていいであろうか。近年を見ても、16年夏は佐久長聖、17年夏は松商学園となっている。

 歴史を振り返ると、戦前では、当初は長野師範(現信州大教育学部)の時代もあったが、以降は松本商のほかは長野商岡谷工の前身である諏訪蚕糸が目立つくらいである。
 戦後になると長野県の高校野球は低迷していくのだが、わずかに54年春に飯田長姫(旧飯田商)が、彗星のように現れて初出場初優勝を果たしている。エースの光沢毅(明治大→三協精機)は「小さな大投手」と絶賛された。

 ところが、その活躍を最後に長野県勢は甲子園では初戦負けという時代が続いていた。勝って一つかせいぜい二つという時代が長かった。丸子実(現丸子修学館)が大型チームとして評判になったこともあったが、ベスト4まで残ることはなかった。丸子実松商学園が県内2強という時代もあった。

 男子バレーボールで3連覇を果たした岡谷工も諏訪蚕糸の時代から野球は歴史がある。男子バレーボールといえば、現在は創造学園が強いが、野球でも健闘している。他にも、東海大三から見校名変更した東海大諏訪やかつての信州工から母体の武蔵工大が校名変更したことに伴って新校名となった都市大塩尻など私学勢が上位をうかがう。17年秋季県大会では長野日本ウェルネスが初優勝している。校名にもインパクトがあって一時的に注目を浴びた地球環境は、このところは大敗が続いている。

(文:手束 仁

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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