久しく続いた2強対決構図は仙台育英がややリードしていたが今後は…【宮城・2018年度版】
宮城県をリードしてきた仙台育英と東北
昨年も激しい戦いが行われた仙台育英vs東北
県を代表する強豪校であり有力校の仙台育英は2015(平成27)年夏にも決勝進出を果たし、敗れはしたものの、これで春夏通算3度目の準優勝となった。21世紀最初の甲子園大会となった01年春の第73回選抜高校野球大会でも仙台育英は準優勝している。ライバル東北も、その2年後の夏には東北がダルビッシュ有投手(日本ハム→MLB)を擁して決勝まで進んだが、優勝にはあと一歩届かなかった。
こうして、東北地区では21世紀に突入して宮城県勢が確実に全国でも上位の位置にあることを如実に示している。実際、仙台育英は明治神宮大会では優勝も果たしており、全国の頂点にも立った。
ところが、その仙台育英がピンチに立たされている。17年に部員の飲酒等の不祥事が発覚。その責任を取る形で、準優勝の実績を作ってきた佐々木順一朗監督が辞任。12月6日から活動停止という状態となっており、今後の動向が注目されている。
歴史的には仙台育英と東北の両校の対決の構図というのは、1970年代からここ40年以上も宮城県だけではなく、東北地区の高校野球をリードする形で継続してきている。甲子園出場ということになると、ほとんどこの両校以外の出場はないといっていいくらいだ。
70年以降で両校以外の甲子園出場校を拾ってみると、83年夏の仙台商、88年夏の東陵、体育系コースのある市立仙台が98年と、02年夏の宮城大会の大番狂わせといわれた仙台西。他には11年夏の古川工がある。それに、21世紀枠代表として05年春に一迫商と09年春の利府、12年春の石巻工が出場にたどり着いている。利府はその後、14年夏に出場を果たしている。この年は春には東陵が出場しており、平成になって唯一二強のどちらも甲子園出場していない年となった。
これら甲子園経験組の中では、東陵が2強を追いかける筆頭ともいえる。それを追うのが利府で17年秋季大会も準優勝している。
[page_break:杜の都の早慶戦とは?]杜の都の早慶戦とは?
仙台二ナイン
いずれにしても、仙台育英と東北の2校の力が図抜けていることは確かだ。それだけに、仙台育英の不祥事は、勢力図に大きな影響を与える可能性はある。
追いかける勢力としては東陵と利府に続く存在としては、17年秋季大会では角田と仙台南が4強に残っている。さらには仙台三に柴田、東北楽天の岸孝之投手を輩出している名取北なども健闘している。近年は富谷や岩ケ崎、白石工なども実績を残している。また、私学勢力としては聖和学園や女子バレーボールの強豪で知られる古川学園に、大崎中央などもいる。
勢力構図とは別に、仙台市民のノスタルジヤをくすぐる仙台一と仙台二の「杜の都の早慶戦」というのがある。仙台市を二分するといっていい進学校が仙台一と仙台二だ。この両校は旧制中学時代からのライバル校で、毎年5月には「杜の都の早慶戦」といわれる対抗戦が行われている。おそらく、全国にいくつかある高校野球の定期戦の中でも一番盛り上がっている試合といっても差し支えないであろう。甲子園出場云々とは別に、この試合に賭ける両校の意識は別の意味でも高くなっていかざるを得ないのではないだろうか。
仙台一は南学区、仙台二は北学区という分かれ方をしており、それぞれの地域の優秀な中学生たちが進学していくということで、当然地元での評価も人気も高い。ちなみに、両校の比較でいえば、ここ何年かは野球も進学もわずかながら仙台二のほうが若干リードしているようだ。こうした県を代表する2校のライバル意識というのは、日本的な教育文化の一つの具象だったのだともいえる。そんなノスタルジヤを感じさせてくれるのが「杜の都の早慶戦」である。
(文:手束 仁)