Column

決勝進出校が、都合8度という山口県のしぶとさ

2016.06.19

 山口県は各街々が独立独歩の形で存在しているのが特徴だ。都市としても宇部、下関、岩国、周南、柳井、下松と存在していて、それぞれに産業が根付いているという印象がある。

山口県勢の甲子園での活躍

1998夏、宇部商無念のサヨナラボーク

 ところが「山口県の県庁所在地は?」こう問われると一瞬、考えてしまう。そして、しばらくしてから、なーんだという思いと共に「山口市」と答えることになる。県名と県庁所在地の都市名が同じなのに、一瞬考えてしまうのは、理由が二つある。一つは、山口市がもう一つ表だって出てきていないので非常に印象が薄いということ。そして、もう一つは県庁所在地になってもおかしくないかなと思わせるような地方都市がそれぞれ産業を携えながら存在しているからだ。

 そんな状況が、高校野球の現象にも表れている。山口県勢の甲子園での決勝進出回数が8回もあり県勢の通算勝利数も108勝で岡山県よりも上で19位ということにややビックリする。というのは、昭和30年代の下関商の全盛期を除けば、それほど山口県勢は甲子園で強いという印象がないからだ。

 優勝は1958(昭和33)年柳井1963(昭和38)年春下関商なのだが1964(昭和39)年夏早鞆72年夏柳井74年夏防府商85年夏宇部商などが準優勝している。宇部商以外は決して常連校という印象ではないだけに、改めて意外な印象を強めているのだろう。いずれも、必ずしも下馬評が高いというわけではなかったのにもかかわらず、いつの間にかスルスルと勝ち上がってきて決勝まできてしまって気がついたら準優勝しているというケースが多いようだ。

 しかも、それぞれが各市から出てきているというのも特徴的である。県大会の段階から頭抜けてはいないのに、ねちねちと勝ち上がっていく執念は、その昔の長州藩の誇りが意外に力を発揮しているということになるのだろうか。

このページのトップへ

[page_break:今後も宇部商が中心となるか]

今後も宇部商が中心となるか

 ところで、県内では突出した力を示した63、64年頃の下関商だったが、その後しばらく甲子園から遠ざかる。それが、79年春81年夏に復活し95年には久々に甲子園で勝利した。15年夏にも久しぶりに姿を現したが、ユニホームは当時と同様のデザインで左胸に大きく角ばった感じの「S」一文字だけというものである。当時を知るオールドファンたちはその懐かしさとともに池永 正明という稀有の制球力を持った投手の名前を思い出し、時代を語ることができた。

 早鞆は準優勝の2年後に再び出場し、その翌年も顔を出すものの以降パタリと消えてしまった。もう、野球部は強化されていないのだろうかと思っていたら、01年の春季中国大会で優勝し、12年春に出場を果たした。こちらも左胸にワンポイント「H」マークである。

 今は亡き津田 恒美(協和醗酵→広島)のいた南陽工この春も出場を果たすなど、宇部商とともに印象は強い。また03年優勝の広島広陵を下して8強入りした岩国も渋く存在をアピールしている。岩国に並ぶ進学校の徳山や、新しい力としては下松市にある華陵08年春に21世紀枠代表として出場し、09年夏は自力で出場するなど力を示している。

 とはいえ、基本的にはやはり宇部商が中心となって今後も進んでいくであろう。玉国 光男監督がいつも勝ちにいけるチームを作っており、とくに甲子園で初戦負けがほとんどないということは評価されていいだろう。98年の延長15回、豊田大谷との試合の藤田 修平投手(福岡大)の痛恨のサヨナラボークも印象深い。01年02年夏と立て続けに甲子園に姿を見せており、05年には連続出場。31年間監督を務めた玉国監督が勇退後を引き継いだ中富 力監督となって07年春にも出場。以降、やや南陽工などに押され気味のところもあるが、県内ではリーダー格といっていいだろう。

 10年南陽工以降、県内代表校としては柳井学園岩国商岩国宇部鴻城と顔ぶれが変わっている。他にも山口西京豊浦、多々良学園から校名変更した高川学園あたりも忘れてはいけない存在である。

(文:手束 仁

このページのトップへ


注目記事
【6月特集】快進撃の作り方

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.04.24

春の埼玉大会は「逸材のショーケース」!ドラフト上位候補に挙がる大型遊撃手を擁する花咲徳栄、タレント揃いの浦和学院など県大会に出場する逸材たち!【春季埼玉大会注目選手リスト】

2024.04.24

東京国際大の新入生は、リーグ戦デビューの二松学舎大附の右腕、甲子園4強・神村学園捕手、仙台育英スラッガーら俊英ぞろい!

2024.04.24

【福島】田村、日大東北、只見、福島が初戦を突破<春季県大会支部予選>

2024.04.24

【佐賀】敬徳と有田工がNHK杯出場を決める<春季地区大会>

2024.04.24

【春季四国大会逸材紹介・香川編】高松商に「シン・浅野翔吾」が!尽誠学園は技巧派2年生右腕がチームの命運握る

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.23

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.23

【春季埼玉県大会】地区大会屈指の好カードは川口市立が浦和実を8回逆転で下し県大会へ!

2024.04.21

【神奈川春季大会】慶応義塾が快勝でベスト8入り! 敗れた川崎総合科学も創部初シード権獲得で実りのある春に

2024.04.22

【和歌山】智辯和歌山、田辺、和歌山東がベスト8入り<春季大会>

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.05

早稲田大にU-18日本代表3名が加入! 仙台育英、日大三、山梨学院、早大学院の主力や元プロの子息も!

2024.04.23

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.02

【東京】日大三、堀越がコールド発進、駒大高はサヨナラ勝ち<春季都大会>

2024.04.12

東大野球部の新入生に甲子園ベスト4左腕! 早実出身内野手は司法試験予備試験合格の秀才!