仙台育英と東北の2強対決構図は仙台育英がややリードか(宮城県)
100年となった2015(平成27)年夏の全国高校野球、甲子園の決勝でまたしても仙台育英は敗れたが、これで春夏通算3度目の準優勝となった。21世紀最初の甲子園大会となった、01年春の第73回選抜高校野球大会でも仙台育英は準優勝している。その2年後の夏には東北がダルビッシュ 有投手(日本ハムファイターズ→テキサスレンジャース)を擁して決勝まで進んだが、優勝には後一歩届かなかった。21世紀に突入して宮城県勢が確実に全国でも上位の位置にあることを如実に示しているといってもいい現象である。その証拠に、仙台育英は明治神宮大会では優勝も果たしている。
宮城県の2強の厚い壁
平沢 大河(仙台育英)
仙台育英と東北、この両校の対決の構図というのは、1970年代からここ40年以上も宮城県の高校野球をリードする形で継続してきている。というよりも、こと甲子園ということになると、ほとんどこの両校以外の出場はないといっていいくらいだ。
70年以降で、両校以外の甲子園出場校を拾ってみても、83年夏の仙台商、88年夏の東陵、体育系コースのある市立仙台が98年と、02年夏の宮城大会の大番狂わせといわれた仙台西。それに、21世紀枠代表として05年春に一迫商と09年春の利府、12年春の石巻工が出場にたどり着いた。利府はその後、14年夏に出場を果たしている。この年は春には東陵が出場しており、唯一2強のどちらも甲子園出場しておらず、それぞれ春夏通算して2度目の甲子園を勝ち取っている。他には11年夏の古川工があるくらいだ。
これら甲子園経験組の中では、東陵が2強を追いかける筆頭で、利府と古川工が続いているという構図か。いずれにしても、仙台育英と東北の2校の力が図抜けている。だから、組み合わせが決まると、他校はどうしてもまず、この両校の位置を見てどこまで行けるのかというところを測ることになる。
ただ、甲子園での実績ということになると、準優勝2回の仙台育英の方が上回っている。しかし、県内の実績ということになると、東北の方が歴史も古いし上ということになる。
都の杜の早慶戦
福田 恭平(東北)
グレーのユニホームに慶應大のようなイメージの雰囲で大人のチームという印象の仙台育英と、タテジマで体の大きなマッチョ系の選手の印象が強い東北。両校のイメージも若干異なる。ライバルのイメージはそのままチームカラーにも表れている感じがする。それだけこの両校のつばぜりあいは目が離せないということである。
この圧倒的な両校とは別に、仙台市民のノスタルジーをくすぐる仙台一と仙台二の「杜の都の早慶戦」というのがある。仙台市を二分するといっていい進学校が仙台一と仙台二だ。この両校は旧制中学時代からのライバル校で、毎年5月には「杜の都の早慶戦」といわれる対抗戦が行われている。おそらく、全国にいくつかある高校野球の定期戦の中でも一番盛り上がっている試合といっても差し支えないであろう。甲子園出場云々とは別に、この試合に賭ける両校の意識は別の意味でも高くなっていかざるを得ないのではないだろうか。
仙台一は南学区、仙台二は北学区という分かれ方をしており、それぞれの地域の優秀な中学生たちが進学していくということで、当然地元での評価も人気も高い。ちなみに、両校の比較でいえば、ここ何年かは野球も進学もわずかながら仙台二の方が若干リードしているようだ。こうした県を代表する2校のライバル意識というのは、日本的な教育文化の一つの具象だったのだともいえる。そんなノスタルジーを感じさせてくれるのが「杜の都の早慶戦」である。
もちろん、秋季県大会で上位に食い込むようなことがあれば、もちろん21世紀枠の代表候補として推薦されることは間違いない存在である。
また、仙台三や柴田、宮城農も近年ベスト8など上位に食い下がっている。
(文:手束 仁)