文武両道の進学校ならではの工夫と勝利への貢献の仕方!酒田東(山形)頑張る!マネージャー
過去には選抜出場経験もある酒田東高校野球部。文武両道の進学校として限られた時間に効率よく練習し、少人数ながらも秋の県大会では16強に進んだことなどが評価され、この春の第91回選抜高校野球大会の21世紀枠山形県推薦校に選出されるなど、徐々に力をつけてきているチームである。酒田東野球部を支えるマネージャーは5名。彼女達に、日頃の活動や想いについてお話を伺った。
先輩達が創り上げた新たな酒田東野球部!
他校には負けない声で応援する酒田東のマネージャー
酒田東野球部を支えるマネージャーは門脇涼夏さん、佐藤日和さん、髙橋ひよりさん、加々谷朱里さん、斎藤優衣さんの5名である。
彼女達の主な活動は、ジャグ作り、タイムキーパー、ノックの補助(ボール渡し・カバー)、体重記録、データの収集・記録、バッティング練習の補助、試合でのスコア記録、アナウンス、SBOカウント係など様々だ。
酒田東野球部マネージャーならではの変わった活動と言えば、昨年度から力を入れているという「食事トレーニング」だという。
「他校と比べて体の線が細い選手が多く、パワー負けしてしまうと思いました。」
そこで始めたのが、体重の推移を数値化しグラフにして分かりやすくする事。ここで驚いたのが、1日分の補食を選手個人ごとに合わせた内容で用意しているという点である。
「これは保護者の方にも協力して頂いている活動なので、感謝の気持ちを忘れないようにしています。」と話してくれた。
食事トレーニングを行う学校は多いが、選手個人個人に合わせた内容の食事を用意している学校は中々ないのではないだろうか。これも14名(新入生を除く)と少人数な酒田東野球部ならではの工夫だ。
また、食事トレーニング以外にも昨年度から始めたのがデータ収集。彼女達自身で記録用紙を作成し、試合中に記録したものをその後整理し、分析に役立てている。
「球種の見極めは難しいですが、先生やコーチから教えて頂いています。データ収集が役に立ったと選手から言われた時にはやりがいを感じます!」と話した。
さらに、他校のマネージャーに負けない点は「声」だという。「今までに自分達よりも声を出しているマネージャーは見たことがありません!」と彼女達。試合中にベンチからグラウンドの選手に声をかける時も、マネージャーとしてのやりがいを感じ、1番楽しい時間だと話す。
そんな彼女達おすすめのマネージャーグッズはなんと「サビ止めスプレー」。これを使うだけでネットやゲージが動かしやすくなり、ベースがはめやすくなるのだとか。「道具を動かすために重宝しています」と話してくれた。今まで、笛や文房具グッズをあげるマネージャーが多かった中、これは珍しいアイテムだ。
マネージャーである彼女達が特に印象に残っている試合が、2018年9月23日に[stadium]天童市スポーツセンター野球場[/stadium]で行われた秋季山形県大会2回戦、九里学園戦である。この試合は、7回表まで4対4の同点と接戦を繰り広げていた。しかし、守備のミスから7回裏に4失点。勝利を逃し、苦い試合になった。彼女達も、「とても悔しくて心に残っています。しかし、この試合で学んだ事はたくさんあります。この悔しさを忘れずにこれからのシーズンを戦っていきたいです」と振り返る。
昨年の夏で特に印象に残っているという試合が、2018年7月14日に[stadium]荘内銀行・日新製薬スタジアムやまがた[/stadium]で行われた夏の甲子園山形県予選2回戦、山形城北戦だ。真夏の猛暑の中、各地で行われる予選。この日も猛烈な暑さだった。
「記録的な猛暑の中、酒田東の選手は1人も倒れることなく最後まで戦い抜きました」と話した。何度も試合が中断される中、落ち着いてプレーしている選手の姿が印象的だったという。
チームの中心として戦い抜いて引退していった先輩達の存在はとても大きかったようだ。「酒田東が目標としている“文武両道”を成し遂げている先輩達でした。特にマネージャーの先輩は、食事トレーニングやデータ収集をやることを決めて、今の活動の基礎を作ってくれた存在でした。私達が目標とするマネージャー像です」。さらに21世紀枠山形県推薦校に選出されたことについては、「評価して頂いた、時間がない中工夫して練習しているという点は先輩方が作り上げたものです。私達は、先輩方の良さを引き継ぎ、日々の練習に励みたいです」と語った。
日頃から「選手をサポートし甲子園に連れて行ってもらう」ではなく、「一部員としてチームの勝ちに貢献する」という意識を心掛けているという彼女達。
21世紀枠山形県推薦校に選出された裏側には、選手達の努力のみならず、しっかり者のマネージャー達の努力もあったに違いない。
[page_break: マネージャーが選手を動かしていく野球部!]マネージャーが選手を動かしていく野球部!
左から門脇涼夏さん、佐藤日和さん、髙橋ひよりさん
ここからはマネージャーの佐藤日和さんに詳しくお話を伺います!
小学生の時から野球を始め、中学時代はソフトボール部に所属していたという佐藤さん。「高校生になったら野球部のマネージャーになる」という事は、なんと小学生の時から決めていたという。
「中学3年生の時、夏の甲子園山形県予選準々決勝、酒田東対鶴岡東戦を観戦しました。私立を相手に粘り強く戦い抜いた姿に感動し、酒田東でマネージャーをやろうと決意しました。」
マネージャーの活動の中で、常に先生方やコーチに「目配り・気配り・心配りを出来るようになれ、と言われてきました」と話す佐藤さん。そこから周りを見て判断しようと意識するようになったという。また、たくさんの人に助けてもらいながら行えているというマネージャーの活動について、「以前よりも感謝の気持ちを持つようになりました」と話す。
そんな佐藤さんの憧れのマネージャーは1つ上の先輩マネージャーである。食事トレーニングとデータ収集の発起人だ。「先輩は気配りもでき、先を見て動いていた印象です。選手にも先生方にも信頼されていました。」佐藤さんは先輩のようなマネージャーを目指し奮闘中だ。
また、嬉しいと感じた出来事も話してくれた。「酒田東野球部には伝統があります。そのため、OB・OGの方々が多いので練習や試合の時にたくさん声をかけてもらいます。嬉しいですし、活動の励みにもなります。」これは酒田東ならではの光景だ。
さらに、「私にとって、21世紀枠の山形県推薦校に選んで頂いた事は自慢のエピソードです。自分達の頑張りを見てくれている人がいるんだと実感し、これからの練習の励みになりました」と話してくれた。
しかし、マネージャーとしての活動も順風満帆ではない。ときには選手と意見がぶつかることもあったという。「だからこそ、今になり腹を割って話せるようになったんだと思います」。
「選手を動かすのがマネージャーだ」と先生に言われてからは、意見を言うにしても言わないにしても、チームを良い方向にもっていくことが必要だと感じているという。
佐藤さんにとってマネージャーとは、「選手達の後ろについていくのではなく、時には厳しいことも言って選手を動かす存在」だという。
最後に選手へ向けて、「まだまだ体の線が細いので、もっともっとご飯を食べるように!夏は必ず全員で甲子園に出場しよう!」とコメントをくれた。
着実に甲子園へと近づいている酒田東野球部。選手を支えるだけでなく、叱咤激励し、ともに戦うマネージャーたちにも注目していきたい。
文=編集部