Column

選手たちの笑顔のために!「影の奥の影の存在」を目指す 目白研心マネージャー

2018.12.02

 新宿区にある目白研心高校。中高一貫の高校で野球部には23名の部員が所属している。そんな目白研心高校野球部を支えるマネージャーの活動について迫った。

選手との壁を作らず「欠かすことのできない存在」に


京近朱莉さん

 目白研心の野球部23名の部員を支えているのは2年生のマネージャー・京近朱莉(きょうちかあかり)さん。京近さんの主な仕事は、ジャグの用意にノック時のボール渡し、補助や備品管理、試合中のスコアラ―が中心。そんな京近さんは、練習中のノック渡しが一番楽しい時間だそうだ。
 諦めずに最後までボールを追いかける姿は、京近さんにとっては選手たちが楽しそうに練習しているように見え、自分も楽しくなってしまうと言う。それと同時に選手たちの楽しそうな姿が見られること、そして選手と同じ瞬間を分かち合えることに嬉しさを感じている。

 選手と同じように辛さや楽しさを味わうために最も意識していることは、選手との壁を作らないこと。そのために出来るだけグランドに関わり、どんな時でも大きな声を出すことを心がけている。
 そうすることで、選手にとって嬉しいことがあると自分のことのように嬉しくなって喜ぶことができている。

 ここで選手に京近さんのことを聞いてみると、「決して欠かすことのできない存在」「人一倍声を出してくれるし、辛いときは明るい笑顔と性格でいつも助けられている」というコメントが寄せられた。「今では京近がいないチームは考えられません」とまで言われており、選手からの信頼も厚いことがわかる。

 そんな京近さんは中学時代テニス部に所属。マネージャーになったきっかけは高校受験でくじけそうなとき、テレビで見た高校野球の試合で球児が必死にプレーする姿に感動し勇気をもらったからだ。だからこそ高校野球に少しでも恩返しをしたいと思い、マネージャーになることを決意。現在、京近さん一人でマネージャーとして野球部を支え続けている。

 だが、一人でマネージャーを務めているため相談することができず、悩み事を一人で抱え込んでしまい挫折しかけたこともあった。その時に気づかされたのが、夏まで一緒に活動してきた3年生の存在がどれだけ大きいものだったかということ。3年生の先輩は、一人でマネージャーになった京近さんを時には厳しく指導したが、常に優しく気遣ってくれていた。そんな先輩と接することで高校野球の魅力に引き込まれていったのだ。

[page_break:どんな時でも笑顔があふれるチームへ]

どんな時でも笑顔があふれるチームへ


熱心に取り組む京近朱莉さん

 京近さんに高校野球の魅力を伝えてくれた先輩方との夏の大会、都立高島相手に2対0でリードしていた場面から、2対4と逆転され負けてしまった試合でのこと。追いつかれた時も逆転された時も下を向かず、笑顔で仲間を支えあう姿が今でも忘れられないと話してくれた。

 尊敬する先輩たちが引退して新チームを結成した翌日、小岩高校との練習試合が1番の思い出に残っている。その試合では多くのミスがあったが、裏を返せば多くの課題が出たということでもある。今はその課題に練習で一つ一つ取り組んでおり、その成果はきっと試合などで結果として残り、選手の笑顔につながるだろう。その瞬間を見ることこそが京近さんのやりがいなのだ。

 高校野球への愛に溢れたコメントをしてくれた京近さんにとって、マネージャーとは「影の奥の影の存在。そして野球を安全にするためいつも通りの環境を整える存在。」である。ケガをしないこと、体調を崩さないことを第一に、毎日全員の顔色や体調の変化を気にしている。
 そうした意識があるからこそ、どんな状況でも視野を広くすることができるようになった。選手を一番近くで支え、練習などが少しでもスムーズに進むような存在を目指し日々取り組んでいる京近さんにとって、視野の広さは今後も必要な武器となるだろう。

 マネージャーという仕事を通してどんな状況でも視野を広く持てるようになった。しかし、選手とは違いマネージャーの仕事は目に見えない部分が多い。その中で監督から褒められたことが自慢の一つと話してくれた。
 さらに監督から「成長することは変わること」という言葉をかけられ、その言葉が印象に強く残っている。

 もしマネージャーになっていなかったら?という質問には、常識もわからず遊びっ放しだったと答えてくれた。しかし選手とマネージャーお互いが支えあっている様子を見れば、そんなことはなかったのではないかと思ってしまう。

 このようにして選手とマネージャーが一緒になって目白研心野球部を変えていき、また成長させていくのだろう。最後に選手たちにこんなエールを送った。
「学校でも他の子たちとは違う環境の中、いつも毎朝早起きして辛いトレーニングを頑張り夜遅くまでボールを追って、その中でも勉強に必死に食らいつく皆はどんな高校球児よりもかっこよくて、世界で一番輝いています。いつも本当にありがとう。これからも頑張ろうね」

 選手からのふいに来る「ありがとう」の一言に照れる瞬間があると明かしてくれた京近さんをはじめ、目白研心野球部の笑顔がこれから多くみられることを期待したい。

(文=編集部

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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