Column

【侍ジャパンU-18代表コラム】「負けず嫌い」から世界へ翔ける「ドクターK」成田 翔

2015.09.02

 侍ジャパンU-18代表は9月1日(火)、「第27回 WBSC U-18ベースボールワールドカップ」第5戦を迎えた。この日は大阪市内に強く降った雨のため、当初予定から2時間15分遅れとなる19時45分開始。が、若き侍たちはその影響を全く感じさせず、メキシコに12対0と7回コールドで5連勝。全勝で1stラウンドを終えた。今回はその象徴的存在となった先発で4回7奪三振無失点の左腕・成田翔秋田商<秋田>3年)を支えるマインドと、今大会にかける想いを探る。

「負けず嫌い」と「大先輩への憧れ」から土台作りへ

メキシコ戦で先発のマウンドに上がった成田 翔(秋田商)

 大幅なプレイボール遅れを吹き払う素晴らしい投球である。
捕手からボールを受け取ったら、5秒~10秒以内に投球動作へ。168センチ68キロと近年の野球では決して大きくない身体を目いっぱい使い、140キロ台の直球と縦横スライダーを駆使する左腕は、まるで前回大会のエース・松井 裕樹桐光学園-東北楽天ゴールデンイーグルス)を彷彿とさせる。

 試合後には「メキシコ打線を見て外角のストレートが見えていないと感じたので、今日は外角高めの直球を軸に投げ込んでいきました」と冷静さも健在。声の主はこの夏、「東北のドクターK」と称された秋田商(秋田)の3年生・成田 翔(かける)である。

 そんな成田は1年夏にも甲子園マウンドを経験している。初戦敗退に終わった富山第一(富山)戦で2回3奪三振の好投(試合レポート)。が、この時の最速は「132キロ」。すなわち、彼は2年間で10キロ以上もスピードアップを実現させたのだ。

 ではいかにして、これほどの投手に成長したのか。さらに理由を聞くと真っ直ぐな瞳の視線がいっそう強くなった。

「自分は強烈な負けず嫌いなので、とにかく誰よりも走って、誰よりも投げたことだと思います。負けた次の日はすぐに走るなど、何か悔しいことがあれば、すぐに練習に移っていたと思います」

 これは秋田商の大先輩・青山学院大を経て現在は東京ヤクルトの左腕エースとして君臨する石川 雅規選手の影響である。167センチの小さな大投手に憧れ秋田商に入学した成田は石川投手と高校・大学で同期バッテリーを組んでいた太田 直監督からそれらのエピソードを聞いてすぐに行動に移した。

 確かに筆者も昨年11月に石川投手にインタビューした時「体の大きな選手に負けたくない気持ちがあって、今の自分がある」と語ってくれたことがある。

 よって投球フォームも「キレ」で勝負する石川投手と同じく、いかに打者の近くで、さらに指先にしっかりと力が伝わることを追求。普段のキャッチボール、投げ込みから今の形を築き上げた。そして現在では彼の代名詞でもある縦横スライダーも独学で修得。様々なアプローチから全国で戦える土台を築いてきた。その集積が、最後の夏でのハイ・パフォーマンス「東北のドクターK」全国登場につながっていった。

 対戦国はどんな国?!

【U-18】若き侍の対戦相手を紹介! メキシコ編

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2015年 第27回 WBSC U-18ベースボールワールドカップ

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第27回 WBSC U-18ベースボールワールドカップ

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[page_break: 侍ジャパンU-18でも欠かさない「向上心」]

侍ジャパンU-18でも欠かさない「向上心」

大学日本代表戦で三番手で登板した成田 翔(秋田商)

 コーナーへ狙い通りに投げ分ける制球力で秋田大会では39イニング55奪三振。さらに甲子園では初戦となる2回戦龍谷(佐賀)戦で16奪三振。3回戦では難敵・健大高崎(群馬)に対し10回3失点にとどめ秋田商80年ぶりベスト8入りの原動力となり、東北対決に敗れた仙台育英(宮城)戦(試合レポート)でも自己最速の144キロを計測。
26回3分の2で30奪三振と聖地でも「ドクターK」の称号を確固たるものにした成田は、初の侍ジャパンユニフォームを身にまとうことになる。

 これまでは遠い存在だった最速151キロ左腕・小笠原 慎之介東海大相模<神奈川>3年)ら豪華投手陣と顔を合わせた成田。が、ここでも怖気づくことはない。すぐに負けず嫌いのスイッチが入った。

「1人1人凄い投手ばかりで、より負けたくない気持ちになりました」
一方でリスペクトは忘れず、心は熱く、頭はクールに。成田は「負けない」方法を様々な行動で実践に移す。

 小笠原とは変化球の握りを確認しあいながらキャッチボール。切れ味鋭いストレートが武器である上野 翔太郎中京大中京<愛知>3年)のキャッチボールもさらにキレのあるストレートを投げるための参考にした。代表投手たちの行動を、しっかりと自分に還元し続けたのである。

 よってメキシコ戦は成田にとっては待ち遠しかった代表戦の初マウンドであると同時に、といった負けず嫌いからの「向上心」を実践に移す格好の場となった。

「みんな好投をしていて、そこは素直に凄いと思っていましたが、でも自分がマウンドに上がってからには誰よりも好投したいという気持ちはありました」。これなら予定開始時間の遅れなど全く気にするはずもない。

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必然の奪三振ラッシュ、そして頂点へ

試合後のインタビューに答えるの成田 翔(秋田商)

 かくして必然の奪三振ラッシュは始まった。
2回表には140キロ前後の直球、120キロ前後のスライダーの高低をうまく使ったコンビネーションで三者連続三振を奪うと、3回にも2つの奪三振を取り、4回には一死一、二塁で前日のブラジル戦で4打数3安打5打点の活躍を見せた4番・キニョネスを縦スライダーで空振り三振。5番・ミジャンは一転、ストレートで空振り三振。

 4回7奪三振無失点。しかも球数は61球。スーパーラウンドではどの場面でも登板できる可能性を残した。成田の視線も、もちろん次のステージへ向いている。

「今までもどこの場面でもいけるように準備をしてきたように、スーパーラウンドでもどこでも行けるように準備をしていきたい。自分の気持ちの強さが空回りしないように、しっかりとメンタルコントロールはできています」

 1日の休養日を経て、カナダ・韓国・キューバの順で1stラウンドBグループ上位3カ国と対戦するスーパーラウンド。そして決勝戦までの4連戦はさらにハードなものになることは間違いない。

 ただ、侍ジャパンU-18代表にはこの男がいる。成田 翔。負けず嫌いと向上心を兼ね備え、その方法論と実践論も的確な小さな左腕は、誰よりも大きな栄冠「U-18野球世界頂点獲得」へ翔ける。

(文=河嶋 宗一

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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