Column

侍ジャパン大学代表から見る投手と野手の成長度の違い

2015.08.26

 8月26日に開催される侍ジャパンU-18代表と侍ジャパン大学代表との壮行試合。だいぶ前から対戦が決まっていたカードということに加え、[stadium]甲子園[/stadium]で開催されることとなり、大きな注目を集めている。今回は大学代表に目を向けて述べたいと思う。

投手は大学で急成長!

田中 正義(創価大)

 大学代表の顔ぶれを見て感じたのは、高校時代に代表経験のある選手が殆どいないということ。4年生では横尾 俊建日大三ー慶應大)、谷田 成吾慶應義塾ー慶應大)、3年生では浦和学院佐藤 拓也浦和学院立教大)の3人である。

 投手を見ると、高校時代から急激に伸びた選手が多く、野手と比べると成長速度がずば抜けて早い。
一方で野手は、注目選手に挙がるも高卒でプロ入りできるかを基準で見ると、物足りなさはあったが着実に力をつけて注目されるようになった選手が多い。

 急激に伸びた投手の一例として名前を挙げると、田中 正義創価創価大)、高橋 礼専大松戸ー専修大)、濱口 遥大三養基ー神奈川大)の3人。
田中は高校時代、外野を中心に守っていた。3年夏には登板経験はあったが、そこまで目立つ存在ではなかった。大学入学を機に投手転向。数々の好投手を輩出した創価大の投手メソッド(先輩から学べ vol.1vol.2vol.3)によりメキメキと実力を伸ばし、昨春は2年生ながら創価大のエースとして全日本大学選手権に出場した。
いきなり佛教大戦で最速154キロを計測し、9つの三振を奪い完封。その後も150キロ超の速球で、亜細亜大九州産業大などの強豪を破り、ベスト4入りを果たした。

 その後もハーレム国際の代表選手に選出され、2014年の明治神宮大会にも出場。さらには今年のユニバーシアード夏季大会の代表選手にも選ばれ、早くも2016年のドラフトの目玉として注目されている選手だ。

 高橋 礼は高校時代、120キロ台の速球、シンカー、スライダーで勝負する技巧派のアンダースローであったが、専修大学に入って一転。130キロ後半の速球とシンカーで勝負する速球派のアンダースローに変貌。全日本大学選手権大会大会でベスト8入りし、ユニバシアード夏季大会の代表選手に選出されるなど、2017年のドラフト候補として早くもリストアップされる存在だ。

 濱口は、神奈川大のエースとして、昨年の全日本大学選手権で準優勝。今年も大学選手権でベスト4に入るなど、全国トップクラスの実績を誇る大型左腕である。球速も140キロほどだったが、コンスタントに140キロ後半の速球、落差あるチェンジアップで翻弄するパワーピッチングを見せ、田中とともにドラフト候補として注目される。

 3人とも光るものは持っていても、高校時代は、ずば抜けた能力を持った選手ではなかった。しかし大学で飛躍的にパフォーマンスを伸ばせば、代表に名を連ねる可能性を持っていることが分かる。


注目記事
・第27回 WBSC U-18ベースボールワールドカップ特設ページ
・【8月特集】打撃力アップ
・2015年秋季大会特設ページ

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[page_break:野手は一歩ずつ積み上げて伸びていった]

野手は一歩ずつ積み上げて伸びていった

高山 俊(明治大)

 野手はどちらかというと、高校時代から有望選手として名前が挙がっていた選手が多い。
高校時代から代表だった谷田 成吾横尾 俊建については、全国区のスラッガーであり、浦和学院佐藤 拓也は投打ともにセンス溢れる素晴らしい選手であった。順調に素質を伸ばし、谷田と横尾については長打が打てる野手としてリストアップされ、佐藤は1年からレギュラーの座を獲得し巧打系の外野手として注目される。

 また高校時代に代表入りはなかったが、走攻守三拍子揃った内野手として注目されていた茂木 栄五郎桐蔭学園早稲田大)は一歩ずつレベルアップを遂げて、ドラフト上位候補に名を連ねる存在となった。
今年の春季六大学リーグで5本塁打を記録し、全日本大学選手権大会では優勝。MVPも獲得するなど大学球界を代表する逸材も場数を踏んで素質を開花させた。茂木のパンチ力溢れる打撃、広角に長打を打てる打撃技術はU-18代表選手にとっても参考になるかもしれない。

 横尾とともに2011年甲子園優勝を経験し、3年秋に東京六大学通算100安打を達成し、現在、東京六大学通算117安打を誇る高山 俊日大三明治大)。打撃、走塁、守備ともにメキメキと伸ばし、ドラフト上位候補に挙がる逸材だ。選手としてのスキルの高さは、一大学プレーヤーの範疇を超えており、まるでプロの選手を見ているかのような完成度。大学4年間の積み重ねで、ここまでの選手になるのかと思わせる選手である。

 他では、昨年11月のU-21代表に選出され、軽快な足さばきから守備範囲の広さを見せる柴田 竜拓(岡山理大付ー國學院大)や強肩巧打の三塁手・藤岡 裕大(岡山理大付ー亜細亜大)、ヘッドスピードが速いスイングから強烈な打球を連発するスラッガー・吉田 正尚敦賀気比青山学院大)も1年春から試合出場経験を積んで、課題であった対応力を磨き、今や大学球界を代表する選手になった。

 もともと大学代表というのは、高校時代から代表だった選手が選ばれるのは稀なことなのだ。高校で代表に選ばれる選手は、高校卒業とともにプロへ行きやすい傾向にあるため、今回も高校時代からの代表経験がある選手が3名しかいなかった。

 この数字を見ると、多くの選手は下級生からの下積みを経て、代表選手になるまでに成長した過程があったことが分かる。今回のようなU-18代表に選ばれず、大学で野球をすることを選択する選手は、ぜひ大学代表を目指して取り組んでいってほしい。

 初めての試みということで盛り上がる一戦。甲子園を沸かせたU-18代表の選手たちのプレーだけではなく、ハイレベルな大学野球の環境の中で、実力を伸ばしていった大学代表の選手たちのパフォーマンスも要注目だ。


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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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