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甲子園大会第1回出場校の100年の夏の歴史を振り返る ~和歌山中編~

2015.07.28

 今年、日本の高校野球発祥100周年を迎えた。
これは、1915年に大阪府豊中市で第1回全国中等学校優勝野球大会(現・全国高等学校野球選手権大会)が開催された年から100年が経ったということである。
今回は10回シリーズで、この第1回全国中等学校優勝野球大会に出場したチームの歴史を振り返っていく。シリーズ第2回は、和歌山中(現:桐蔭)の歴史を振り返っていこう。

和歌山中の第1回大会を振り返る

現在の桐蔭のユニフォーム

第1回大会(1915年)】

 夏の甲子園出場20回、その内、優勝2回、準優勝3回。そして選抜は16回出場、優勝1回、準優勝1回という輝かしい成績を残す桐蔭。その桐蔭高校の前身である、和歌山中が第1回甲子園に出場していた。第1回大会において、和歌山中はベスト4に輝いている。その戦いを振り返ってみる。

 和歌山中は初戦、久留米商と対戦。初回から得点を重ね、8回に一挙9得点を挙げるなど、10安打15得点の爆発的な攻撃力で15対2と久留米商を破った。続く2回戦は、鳥取中(現:鳥取西)との戦い。和歌山中は鳥取中投手鹿田に翻弄される展開で試合は進む。9回終わってわずか1安打。8回までは得点圏に一度しか走者を進められない事態であったが、最終回に大きく試合は動いた。

 鳥取中の敗因を一言で表すならば、「鳥取中はバントの処理方法が分からなかった」となる。嘘のような話だが、9回の和歌山中によるバント攻めにより鳥取中の守備は混乱。和歌山中は9回表に一挙7得点を挙げ、結果、1安打7得点で辛勝した。

 続く準決勝は、この年優勝することとなる京都二中との対戦。両チーム投手の好投が光るも、1対1で迎えた9回表一死後に雨が激しく降り試合は引き分けとなる。仕切り直しで再戦となった一戦は、京都二中の遊撃手、中堅手の連続後逸などで得点を挙げるも、結果は5対9で和歌山中が敗れた。


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[page_break:和歌山中悲願の初優勝と夏連覇 / その後の活躍]

和歌山中悲願の初優勝と夏連覇(1921年、22年)

 1920年にも、甲子園出場を果たした和歌山中であったが、投手北島の制球が定まらず、初戦で京都一商(現:西京商)に敗退してしまった。その悔しさから、翌年の1921年、大きく成長した和歌山中の快進撃が始まった。和歌山中は、初戦20対0、準々決勝21対1、準決勝18対2と、圧倒的な攻撃力で他チームをねじ伏せる。そして、迎えた決勝。相手は、前年初戦で敗れた京都一商であった。前年から投げ続ける投手北島も大きく成長し、打撃も変わらず好調。結果として、16対4で和歌山中が快勝し、悲願の初優勝となった。投手北島は4試合で四球6という好投を見せ、見事昨年の雪辱を果たすことにもなった。

 さらに、翌年の1922年も和歌山中の快進撃は続く。初戦は強豪早稲田実業との対決であったが、投手井口が踏ん張ることで早稲田実業打線を3安打完封。スコアは8対0と早稲田実業を下した。2回戦は立命館中(現:立命館)との対戦。初回先頭打者ホームランが飛び出すなど、再び和歌山中の大量得点が見込まれるかと思いきや、結果は4対1。安打数4と打撃が湿り始めた一戦であった。松本商(現:松商学園)との準決勝はさらに接戦となる。両チーム投手の好投が光り、9回に追いつかれそうになるもなんとか逃げ切り辛勝。2対1で和歌山中が決勝へ駒を進める。

 そして、迎えた神戸商との決勝戦。試合展開は和歌山中にとって苦しい展開であった。7回までで0対4とリードされ迎えた8回表の和歌山中の攻撃。9番阪井、1番田島の連打で得点をすると、動揺したのか神戸商の守備が乱れ始める。その隙を逃すまいと、一挙5得点。和歌山中が土壇場で逆転に成功。結果としては、9回にさらに3点を加え、8対4となり2年連続優勝の新記録を樹立した。当時、投手で4番であった井口 新次郎氏は早稲田大学に進学。のちに、野球殿堂入りを果たしている。

その後の和歌山中(桐蔭)の活躍

 戦前における上記以外の和歌山中の活躍で目立ったものは、1927年の選抜優勝、1928年の選抜準優勝、1930年夏のベスト4、19311932年の2年連続選抜ベスト4である。また、戦後の活躍としては、1948年、そして1961年の準優勝が最後となり、50年程は甲子園での勝利から遠ざかってしまっている。しかし、今春の選抜にも21世紀枠で出場するなど全国的な注目は未だ失っていない。現在でも、智弁和歌山などの強豪チームひしめく和歌山で、新たな時代の栄光を勝ち取ることに期待したい。


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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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