Column

山川穂高が沖縄で怪物の片りんを見せていた時代、甲子園には菊池雄星がいた

2018.08.22

山川の中部商を破った興南、その興南を破った今宮の明豊


現在活躍中の山川 穂高選手(写真=共同通信社)

 沖縄県の中部商から岩手県の富士大へ進学して、やがてドラフト2位指名で西武入りを果たす山川穂高(西武)。高校時代には沖縄大会決勝まで進んでいるが甲子園出場はない。その年の中部商は初戦で嘉手納に3対2。2回戦は前年甲子園でベスト4に進んでいる浦添商に4対1と快勝。

 さらに3回戦では美来工科を下し、準々決勝でもコザに快勝。準決勝では沖縄水産に5対3で勝つが山川はこの試合で本塁打を放っている。決勝では興南に2対4で敗れるが、4番山川は長打こそなかったものの2安打している。2009年の夏のことである。

 ところで、この年は自民党が敗退して政権交代があって民主党政権となり鳩山由紀夫総理大臣が誕生した年でもあった。
 山川については、当時の中部商・盛根一美監督は、かつて東京都の高校野球関係者が沖縄を訪れた際に「当たればすごくデカい打球を打つ選手がおるんだけど、高校時代に化けきれるかどうか」というように、いささか粗さも目立つ選手だったようだ。やはり、富士大に進学してリーグ戦などで実戦経験を積んでいくうちに、ブレイクしていったのだろう。

 なお、山川穂高のいた中部商を下して甲子園出場した興南は、翌2010年には春夏連続優勝を果たして全国の頂点に立つのだが、この年の甲子園では初戦で明豊に敗退している。


高校時代に大活躍をした今宮 健太選手と菊池 雄星選手

 その明豊には、今宮健太(ソフトバンク)がいて、遊撃手としてそのセンスの良さは群を抜いていたのだが、内野からいきなりリリーフのマウンドに立って、151キロをマークして、スタンドを「ウォーッ」と唸らせるという怪腕ぶりを示しているが、その身体能力の高さは同世代の中でも特筆ものと言っていいのではないだろうか。

 明豊は準々決勝に進出するが、花巻東に競り負ける。花巻東には、その年の最大の目玉と言ってもいい存在となっていた菊池雄星がいた。菊池雄星は春のセンバツでも準優勝投手となっており、大会前から注目を浴びていたが期待通りの活躍を果たしたと言ってもいい。

 ただ、夏の選手権では疲労から背中を痛めていたということもあって、本調子ではなかったということもあり、準決勝で優勝する中京大中京に1対11と大敗を喫してしまう。


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[page_break:菊池雄星のいた花巻東は間接的に清峰に春の雪辱を果たす]

菊池雄星のいた花巻東は間接的に清峰に春の雪辱を果たす


高校時代の堂林 翔太選手(左)と今村 猛選手(右)

 菊池がセンバツ決勝で対戦したのは今村猛(広島)がエースとしていた清峰だったが、清峰は夏の長崎大会では準々決勝で大瀬良大地(広島)の長崎日大に敗れて春夏連続出場を逃している。

 そして、その長崎日大が甲子園出場を果たしているのだが、初戦で花巻東と対戦して、菊池が本塁打3本を浴びつつも花巻東が8対5で終盤に逆転勝ちしており、花巻東は間接的に清峰に春の雪辱を果たしていることになる。

 大瀬良は九州共立大を経て、山川と同じ年のドラフトでプロ入りを果たすことになる。大瀬良も、投手としての素材力は元々高かったのだろうけれども、大学へ進学してさらにブレイクした選手だったともいえよう。

 この年の夏の甲子園は中京大中京が43年ぶりの優勝を果たしている。決勝では、新潟県勢としては初めて決勝進出を果たした日本文理が、8回までは6点をリードされていながら9回二死から長短打4本を集中させるなどで5点を返すという球史に残る大追撃の決勝戦となった。

 最後、中京大中京河合完治三塁手がライナー打球を捕球して試合終了。その瞬間、球場は満場の拍手で包まれるというものだった。


高校時代の筒香 嘉智選手(左)と秋山 拓巳選手(右)

 この年のドラフトでは高校生では菊池雄星が6球団強豪の末西武が引き当て、3年夏は甲子園に出場することは出来なかったが横浜筒香嘉智がDeNAの1位指名。清峰今村猛は広島の、今宮健太もソフトバンクの単独1位指名だった。また、智辯和歌山岡田俊哉が中日の外れ1位となっている。

 さらに2位指名では甲子園の優勝投手でもある中京大中京堂林翔太を広島が野手を前提として指名。また、初の高専からの指名選手ということで近大高専鬼屋敷正人が巨人に2位指名されて話題となった。

 阪神は4位で西条秋山拓巳を指名。ドラフト的には、4位指名まで残っていたのが不思議なくらいと言われたが、今の活躍を見れば阪神は上手な指名をしたともいえよう。

 ちなみに西条は、夏の甲子園に出場して、初戦は八千代東を下し、2回戦で今宮のいた明豊に完敗している。

 また、この年の秋にはヤンキースの松井秀喜がワールドシリーズで日本人として初めてのMVPに輝いており、日本の野球人もますますインターナショナルな舞台で活躍しているということを再認識することのできた年でもあった。


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見逃すことのできない用具の進化


新しいロゴで展開している新色・ラディッシュのグローバルエリート

 そんな年にミズノのグローブから新たなシリーズが展開された。それが『グローバルエリート』である。今では球児の間で定着している『グローバルエリート』は、実はこの年からラインナップが展開されているのだ。

 100回目の夏の甲子園でも多くの球児に使われている大人気シリーズだが、新たなシリーズを展開し始めたのはグローブだけではない。ウエアに目を向けると、コンプレッションタイプからミドルフィットと呼ばれるタイプが現れた。これは身体にフィットしたタイプより緩いフィット感を採用したタイプである。袖の部分のみコンプレッションを残し、胴体部分は少しルーズにするという、メリハリのあるウエアが誕生した。


Vコング02よりも飛距離アップとされている、新製品のJコング02

 スパイクも2000年代から主流となった軽量化が激化した影響で、さらなる軽量化を図るべく足の甲の部分の製法を変更。また靴裏の金具歯の配置をシリーズ化させたミズノのスパイク。昨年末には打撃に特化した『PSシリーズ』と呼ばれるものまで販売されるようになった。

 そんなミズノが満を持して今夏に新バット『Jコング02』を展開予定である。2000年代に販売が始まった大人気バット『Vコング02』よりも飛距離がアップしている『Jコング02』。高校野球に新たな風を吹かせるのか。

 他にも新たな用具が高校野球界にどんな影響を及ぼすのか。時代とともに野球の技術だけでなく、用具の進化にも目が離せない。

文=手束仁


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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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