ホークス期待の大砲候補は愛されキャラ? 恩師が明かす若鷹戦士・リチャードの沖縄尚学時代
188センチ、117キロと屈強な体格は、グラウンドに立つと一際目立つ。
プロ5年目のソフトバンク・リチャード内野手(沖縄尚学出身)。常勝軍団・ホークスのなかでも、首脳陣が期待する注目の大砲候補としても知られ、王貞治球団会長からも指導され続けている。
育成選手として入団。プロ2年目までは背番号127を付けていた。3年目の2020年のシーズン前に支配下登録に昇格し、現在の52番を背負うと、2021年には1軍で初ホームラン。2022年は開幕1軍入りを果たした。
将来の4番候補は一段ずつ階段を上っているところだが、沖縄尚学時代の恩師・比嘉公也監督に高校3年間の様子を聞いた。
思わず起用してしまうほどロマン溢れるポテンシャル
高校時代のリチャード(沖縄尚学)
リチャードといえば、恵まれた体格を生かしたバッティングだ。
ファームにはなるが、5月16日時点でウエスタン・リーグのトップを走る5本塁打を記録。打点もリーグ2位の18打点と結果を残している。比嘉監督もリチャードのバッティングについては、当時から抜きんでたものがあったという。
「尚学ボールパークは100メートルもないグラウンドですが、捉えた時の打球は『どの球場でも入るだろうな』と思わせるような飛距離でした。それだけ入学した段階でパワーは凄かったですね」
守備をやらせても、スローイングをはじめ大きな問題はなかった。バッティングのみならず持っていたポテンシャルは優れていた。その才能には比嘉監督も「周囲に『何かやってくれるだろう』という期待を持たせてくれるところは、華があると思います」と教え子へ賛辞の言葉を贈る。
しかし、比嘉監督が課題に挙げていたのは、性格の部分だった。
「ムラっけがあるといいますか。しっかり練習をやれるときと、そうでないときがあって。そこを直そうと思って、当時は厳しく指導しました」
もちろん比嘉監督が聞けば「やっています」と答えるため、本当に練習からしっかり取り組めていたのか。指導の成果があったのか確かめることは難しかったが、「力は持っていたので、どうしても起用してしまいましたね」と潜在能力に心惹かれ、試合に出し続けてきたという。
[page_break:愛されキャラの覚醒へ期待膨らむ]愛されキャラの覚醒へ期待膨らむ
ソフトバンク・リチャード
持っているポテンシャルは光るものがあるが、ムラっけがある。そんなリチャードを試合に起用し続けたことを「どうしたら上へ這い上がれるか本気で考えていたかもしれないです」と少し後悔している様子もあったが、試合に出続けていたからこそ、ムラっけが無くなってきたという。
「エラーや凡退の経験が多いほど、『やらないといけない』となると思うんです。その点、リチャードは周りに比べて早く試合に出ていましたので、多くの失敗を経験しました。
打点が欲しいところで取れない。周りの期待に応えられない。その結果を受けて『どうすればいいのか』と考えたと思うんです。そのおかげもあって、ムラっけが少しずつ無くなったのを覚えています」
失敗した数だけ心もたくましくなったリチャード。成長した末に甲子園には手が届かなったが、2017年のドラフトで育成ではあるもののNPBの世界に飛び込む。
支配下登録を目指して奮闘を続けてきた最中で、2019年の秋に王会長に直接指導を受けたことをはじめ、アジア・ウインターベースボールリーグでの活躍などで注目度が急上昇。そして2020年には支配下登録を勝ち取り、背番号52に変わった。
2021年に1軍初ホームラン、2022年は開幕1軍スタートとレギュラー奪取に向けて、あと少しという立場まで来ている。そんな教え子の成長ぶりに「周りに恵まれていると思います」と周りの環境があってのものだと比嘉監督は感じられているようだった。
そのうえで、「当たり前だと思わずに、感謝してやってほしいですね」と教え子に釘を刺したが、こうした機会をつかんだのはリチャードの人柄も関係しているだろう。
「彼は年上にも良い距離間で接することができるので、人懐っこいところがあります。それで怒らせるくらいなんですけど、憎めないんですよ」と少し頬を緩めながら比嘉監督は話す。
平たく言えば愛されキャラ。憎めない器を持っている選手だから人を惹きつけ、偉大な先輩たちからも指導を仰ぐことができたのだろう。
育成時代を含めてプロ5年目に突入。1軍はもちろんファーム、さらには3軍と数多くの成功と失敗を重ねたはずだ。その数だけ成長を続けてきたであろうリチャードは、いったい、いつ覚醒するのか。期待の若鷹が球場に数多くのアーチを描く瞬間を心待ちにしたい。
(取材=田中 裕毅)