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スイングスピードは中2で全国1位。楽天ドラ1・吉野創士の中学時代の恩師が語った「逸話」

2022.01.07

スイングスピードは中2で全国1位。楽天ドラ1・吉野創士の中学時代の恩師が語った「逸話」 | 高校野球ドットコム
楽天1位・吉野 創士(昌平)

 2021年のドラフトで昌平(埼玉)の吉野 創士外野手が楽天に1位指名を受け、プロ入りを果たした。高校通算56本塁打を誇りながら俊足も兼ね備えている。走攻守で世代トップクラスの野手として注目を浴びてきた吉野の姿に、感慨深い思いでドラフト当日を迎えた人物がいた。

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 吉野が中学3年間を過ごした東京城南ボーイズの大枝茂明監督は「あたかも自分がドラフト1位で指名されたかのように舞い上がってしまうほど嬉しかった」と当日の思いを振り返った。長年、多くの中学野球で球児を指導してきた中で、トップクラスの潜在能力を秘めていた吉野が「無事」プロ入りを果たした瞬間は指導者冥利に尽きるひとときだった。

 「この子は必ずプロに行きます」。その確信を周囲に伝えるようになったのは吉野が中学2年の5月ごろだった。この時期に行われる関東ボーイズリーグ大会で「上で試す」ということで初めて上級生もいる公式戦で使った。すると吉野はデビュー戦で本塁打を記録。チームもベスト8に進出した。ベスト8進出チームから代表1人ずつスイングスピードを測る機会があり、「3年生からは負けた責任として選ばずに、2年生の吉野を行かせてみました」とチームの代表で吉野を計測会に臨ませた。すると全国1位の記録を叩き出し、計測を行ったメーカーの担当者をはじめ、周囲を驚かせた。「2年生なのにすごいスイングをしている、高校野球の強豪校クラスの数字です、とびっくりされました」。大枝監督も驚いたが、そこから吉野に対し指導者としての責任が芽生えた。

 ポテンシャルは抜群。そんな吉野がこれからもしっかりと持ち前のパフォーマンスを発揮できるように、最高の状態で上の舞台で羽ばたいてほしいという思いで試練を与えた。最後の全国大会は「7番・サード」で起用。常に慢心は許さなかった。そして、少なからず強豪校の誘いがあったというが社会人野球の強豪・シダックスでプレーした経験のある黒坂洋介監督の熱意を信じ、プロ野球選手の輩出もなければ、甲子園出場経験のない埼玉の昌平への進学を後押しした。


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大枝茂明監督(東京城南ボーイズ)

 昌平では「黒坂監督が城南ボーイズの選手を大切に扱ってくれて、技術面、精神面ともに指導してくれた結果がこのような評価(ドラフト1位)になったのではないかと思っています。吉野を大切に育ててくれたことには感謝しています」と高校野球の舞台でも埋もれることなく、下級生のころから頭角を現し、高校通算56本塁打をマークする世代屈指のスラッガーに成長。同じく東京城南ボーイズから昌平に進んだ古賀 智己外野手とともにクリーンアップを務め、2年秋には県大会初優勝も果たし、昌平高校野球部の歴史も変えた。

 186センチ、76キロと、スラッとして長距離打者とは思えない体格。それでも背筋力と合理的なスイングを身につけ、持ち前のスイングスピードに磨きをかけた吉野は、あっという間に球を遠くに飛ばし、多くのアーチを描いた。本塁打を放った試合後の取材でも「高校通算〇〇本目です。打った球は…」と質問せずとも、即座にはっきりと答える。メディアに対しても真摯的な姿勢で、通算本塁打へのこだわりを感じさせる姿が印象的だった。

 大きな期待を背負って挑んだドラフト当日。吉野は楽天に単独1位指名を受けた。「高卒外野手」では最も早く名前を呼ばれ、世代No.1の評価ということを示した。これは大枝監督にとっても「答え合わせ」ができた瞬間でもあった。「記者会見などが終わった後に、黒坂先生、母親、吉野という順番で報告を受けました。彼も喜んで興奮していました。誰もまさか1位とは思っていなかったので」と指名当日を振り返る。

 そして仮契約後の日曜日、吉野が東京城南ボーイズのグラウンドへ挨拶に訪れた際には、「契約金でマシン2台」をおねだり。ちょうど現在使っている打撃マシンが古くなっていた。「1台とは言わず2台買ってくれ、と言いました。笑って快諾してくれました」。そして「吉野の練習場としてマシン2台をここに置いておいて、プロの世界で苦しんだ時にはいつでもここに戻ってこいよ」と言葉を添えた。

 大枝監督の夢でもあった「高卒ドラ1」でプロ入りを実現し背中が大きくなっていたが、これからも「教え子」ということは変わらない。

(記事=藤木拓弥

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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