なぜ新人王・宮城大弥は愛される選手なのか?そして興南の名将が贈った大成するためのメッセージ【後編】
今年のペナントレースはセ・パ両リーグともに優秀な新人で溢れた。パ・リーグはこの男が新人王に選ばれた。それがオリックスの宮城 大弥投手だ。
興南(沖縄)時代は2度の甲子園に出場。さらにU-18代表にも選出され、2019年NO.1左腕と評された。新人王対象となる今年は13勝、防御率2.51と、いずれもエースの山本 由伸投手(都城高出身)に次ぐ成績だった。入団後から人気も急上昇し、人気プレイヤーとなった宮城。高校時代を知る、興南の我喜屋 優監督に話を聞いた。
苦い経験を糧にできるのが宮城の強さ
オリックス・宮城 大弥(興南)、我喜屋 優監督(興南)
2年夏も甲子園に出場。3年生になると、ストレートも140キロ後半に達し、切れ味鋭い変化球を武器に春季九州大会では、26イニングで41奪三振、防御率0.65と圧巻の投球内容でNPBのスカウトへ好アピール。世代NO.1左腕と評する声が多くなっていた。
しかし最後の夏は県決勝で沖縄尚学に敗れ、3年連続の夏の甲子園出場はならなかった。我喜屋監督は決勝戦の投球について「らしさ」があまりなかったと振り返る。
「沖縄尚学との打ち合いという形になりましたが、高校生であるが故のまっすぐでの勝負が仇になったのかなと」
確かに最後の夏や春の九州大会での宮城の投球は力勝負する傾向があった。老獪さを売りにする現在のピッチングと比べるとギャップがある。どう考えても、次元が違うのだが、NPBの世界では力みが抜けた大人びた投球を実践している。
「当時、押し出しが決勝点になりましたが、あれもツーストライクと追い込んでから、今みたいな緩いボールを投げるのではなく、まっすぐまっすぐで、強気強気が裏目に出たのかなと思います。
宮城が素晴らしいのは、それだけはプロの世界では絶対ダメだぞと自覚し、もう一個緩いボールを使うようになった。そしてキャッチャーのリードもハマってそれが今の宮城のピッチングだと思います」
恩師の発言からは、苦い経験をしっかりと糧にできる宮城の学習能力の高さが分かる。興南の3年間で、宮城がプロの投手として活躍する素質が備わった。そして体力的な土台も高校のトレーニングで培った。投球は老獪そのものだが、マウンド以外ではにこやかな表情、ひょうきんなキャラクターも相まって、先輩選手から可愛がられている姿をよく見かける。そのギャップにファンになった方も多いだろう。我喜屋監督は高校以前の教えが大きいと語る。
「そういう意味では、彼は練習でも決して根をあげないですし、人の悪口も言わないですし、家庭のしつけも良かったと思います。さらに宜野湾ポニーの指導者の教えも非常に良かったなと、こうした繋がりが今日の彼を形成しているんじゃないですか」
これからも大きな花を咲かせるよう、根っこ(土台)を太くすること
高校時代の宮城 大弥(興南)
宮城はオリックスの環境に恵まれ、自分のキャラクターを押し出しながら、メキメキと成長を見せ、今季は13勝を挙げ、リーグ優勝を経験。日本シリーズでは第2戦に登板した。普段から日本シリーズを見る我喜屋監督だが、いつもとは違う気持ちだった。
「僕は結果は聞くけど、1回から9回まで追うよう観ることはあまり無かったのですが、逆に言えば親の気持ちになればあまり観たくない(笑)
他の日本シリーズだったら観るんだろうけど、自分の教え子が出る場合は活躍できるんだろうかというヒヤヒヤしたものがありますから、後からどうだったと聞くことが多いです」
高卒2年目の投手がオリックスのエース・山本 由伸投手(都城出身)に次ぐ勝ち星、防御率を残し、堂々の新人王を獲得した。さらなる成長へ向けて我喜屋監督は教育者としてエールを送った。
「今年、新人王の資格があり、それを認めてもらったと自信を持ってほしいと思います。
ただし、来年も週刊誌やマスコミからの取材も含めて、あくまでも他人の期待と、自分のやるべきことを分けてほしいですし、ムードだけで迎えると落とし穴があるのは明らかですし、その罠にはまらないことですね」
野球人にとって人生で一度しか獲れない新人王は誇れるタイトル。ただプロ野球選手は1年1年が勝負。祝福ムードに終わらず、今季の反省を活かし、レベルアップを目指してほしい願いが込められていた。そして2022年。さらに厳しいマークを受けてプロ野球人生を過ごすことになるだろう。我喜屋監督は最後にメッセージを送る。
「興南の教え、前の宜野湾ポニーの教え、そしてプロでの教え。先輩たちの作ってきた成功体験、失敗体験を経て、彼も幅広く大きな人間になってもらいたいですし、その後にまた力と技術が付いてくると確信しているので、とにかく日々努力。
彼の『スコアボード』はこんなもんじゃないはず。
ずっとずっと続けられる、大輪の花が咲き続ける選手になってもらいたい。
そのためには人様には見えない根っこを太くすることですね。
新人王、リーグ優勝だとか今の宮城は満開が続いてますが、それは散っちゃいますから。それをカバーするには、根っこを太くすること。新しい芽が出てきて大きな大木になって枝も大きくなるはずです」
太く長く活躍する大投手になるには、常に謙虚であるのみ。自身が生きてきた環境から学んだ教えを着実に活かす宮城なら成し遂げられるはずだ。
(記事:河嶋 宗一)
松嶋征子
2023-11-08 at 4:46 PM
宮城ひろや投手今年の活躍に心からの拍手送ります。来年も苦しいことも辛いこともたくさんある事と思いますがひろや投手なら乗り越えられ増すよ。群馬から応援してます!