Column

パ・リーグ新人王候補・小深田大翔(神戸国際大付出身)がこぶちゃんと呼ばれた高校3年間

2020.12.17

 福岡ソフトバンクホークスの4連覇で幕を下ろした2020年のプロ野球。今後、様々なタイトルの発表など楽しみは残っているが、毎年注目されるのが新人王。予想は様々だが、パ・リーグで一歩リードしているのが東北楽天ゴールデンイーグルスの小深田 大翔だ。

 大阪ガスから即戦力のドラフト1位で入団し、期待に応える活躍だったが、神戸国際大付時代はどんな球児だったのか。恩師・青木尚龍監督にお話を伺った。

期待を裏切らない選手だった

パ・リーグ新人王候補・小深田大翔(神戸国際大付出身)がこぶちゃんと呼ばれた高校3年間 | 高校野球ドットコム
高校時代の小深田大翔選手

 青木監督は小深田選手のことを知ったのは彼が中学時代のこと。大阪桐蔭で活躍していた船曳 烈士報徳学園の注目右腕・久野 悠斗なども輩出した佐用スターズからの連絡からだった。

 「良い選手なので、お願いします」

 そして2011年4月、小深田選手は神戸国際大付の門をたたき、青木監督の指導のもと甲子園を目指す日々をスタートさせる。同級生には東京ヤクルトスワローズで奮闘する蔵本 治孝や、JFE東日本でプレーする大園 祐也らがいた。

 そうした同級生たちと比較すると、体格面においては小柄だった小深田選手は劣る部分があった。しかしプレーは絶対的な信頼を寄せるほどの安定感があった。

 「守備範囲に来た打球に対しては弾くことがありませんでしたし、送球ミスも一切見たことがない。雑なプレーがなく、1つ1つのプレーがきちんとしていました」

 また神戸国際大付というと強打の印象が強いが、小深田選手が現役時代、強打の神戸国際大付のなかでは特別な存在だった。

 「セーフティバントと言った小技であったり、繋ぎのバッティングができたりする選手でした。なので、バッティングが良くなったのは近畿大学に進んでからだと思います」

 主力選手ではなかったとのことだが、首脳陣が期待したことに対しては必ずプレーで応えてくれる。また練習することが好きでもあったため、居残り練習することも多かったとのこと。

 口数は少ないほうだったこともあり、決してチーム内では目立つような存在ではなかったが、野球に対して真摯に打ち込む姿を含めチームの勝利には欠かせない存在。それが小深田大翔だったと青木監督は語る。

 そんな小深田選手は、1人の高校生としても落ち着きのある生徒だったことを青木監督は振り返る。

 「小深田は常に平常心なんです。1つ1つの行動はキチンとしていますし、当たり前のことは当たり前にやってくれる。なので、自然と小深田に対しては『これくらいはやってくれるだろう』と期待をしてしまうんです。それでも、その期待を超える結果を残してくれた選手でした」

 何事に対しても全力で取り組んでいたという小深田選手。そんな小深田選手の姿を見て「あそこまで常に全力でやることをブラさないと、同級生も下級生も逆らえないです」と当時の練習の取り組みから、青木監督は小深田選手の芯の強さを改めて感じていた。

[page_break:心も体も安定している愛されキャラだった]

心も体も安定している愛されキャラだった

パ・リーグ新人王候補・小深田大翔(神戸国際大付出身)がこぶちゃんと呼ばれた高校3年間 | 高校野球ドットコム
小深田大翔選手

 そんな小深田選手は1年生の秋には既にスタメンに名を連ねており、2年生の秋に近畿大会出場。8番セカンドで京都翔英戦もスタメンで出場するなど、チームを支え続けると、3年生の春にも近畿大会まで勝ち進み、自慢の守備を武器に準優勝に貢献する。

 集大成の夏となった2013年は優勝候補として兵庫大会へ。2回戦から登場した神戸国際大付は伊川谷と対戦するが、結果は2対3でまさかの初戦敗退。「初戦敗退は初めてでした」という形で小深田選手の高校野球は幕を下ろすことに。

 その後、小深田選手は青木監督とも相談し、近畿大学への進学を決意。青木監督も近畿大の方へお願いをして小深田選手を近畿大へ送り出すと、期待に応えるように小深田選手は1年生から活躍。4年生の時は主将を務めるなどリーグ通算107安打を達成。

 この成長を見て青木監督のなかでも「プロに行けるんじゃないか」という感覚が芽生え始めたという。

 「口数の少ないタイプですが、手を抜かなくて丁寧なプレーで引っ張る。主将を任せてくれたことを含めて、送りだした先でしっかり育ってくれました」

 チームにとって欠かせない存在だったという小深田選手。2020年のプロ1年目から112試合で打率.288と好投手が数多くいるパ・リーグの中で好成績をマーク。しかもこの成績はパ・リーグで6位というルーキーとしては素晴らしい成績を残した。そんな小深田選手のエピソードを1つ青木監督が教えてくれた。

 「彼は3年間でどこが痛いとか、故障というのがなかったですね。それだけボディバランスが安定しているので、偏りがないから怪我をしないですし、体に無理がないんです。だから1つ1つのプレーも安定していたと思います」

 心も体も常に安定していた高校生・小深田 大翔。取材中、青木監督は小深田選手のことを「こぶちゃん」や「こぶ」と呼ぶことも時折あった。そうした愛される一面も小深田選手がプロの世界で活躍している1つの要因なのではないだろうか。

(記事=田中 裕毅

関連記事はこちら!
勉強嫌いな球児でも文武両道で東大野球部に入るための4つの法則 東京大野球部 前監督・浜田一志さん
沖縄出身初の東京大野球部員 島袋祐奨(東京大)の「文武両道」を続けるための思考法

東京大学野球部主将・笠原健吾さん(湘南高校出身)が考える「勉強を行う意味」と「文武両道の秘訣」

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.04.14

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.14

【茨城】岩瀬日大が9回4点差を逆転、東洋大牛久も9回逆転サヨナラで県大会切符<春季県大会地区予選>

2024.04.14

【山梨】日本航空、東海大甲府が初戦突破<春季大会>

2024.04.14

【奈良】高田商などコールド発進<春季大会>

2024.04.15

【春季東京都大会】日大豊山、注目の好投手を攻略し、コールド勝ち!指揮官「うちが東京を勝ち上がるには機動力しかない」

2024.04.09

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.14

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.12

東大野球部の新入生に甲子園ベスト4左腕! 早実出身内野手は司法試験予備試験合格の秀才!

2024.04.10

【沖縄】エナジックが初優勝<春季大会の結果>

2024.04.09

慶大が全新入生を公開! 甲子園優勝メンバー14人、智辯和歌山・報徳学園からも有力選手獲得!

2024.04.09

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.03.17

【東京】帝京はコールド発進 東亜学園も44得点の快勝<春季都大会1次予選>

2024.04.05

早稲田大にU-18日本代表3名が加入! 仙台育英、日大三、山梨学院、早大学院の主力や元プロの子息も!

2024.04.14

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.02

【東京】日大三、堀越がコールド発進、駒大高はサヨナラ勝ち<春季都大会>