トライアウト受ける日ハム・宮台康平。東大の恩師・浜田氏「野球への火は消えていない」
東京大学出身の宮台 康平投手(湘南出身)の戦力外が決まった。湘南高時代は、2年冬に神奈川選抜でスリランカ遠征を経験し、3年春に県大会ベスト8に進出。東大入学後は大学通算6勝を挙げ、150キロを記録する速球派左腕として大学日本代表入りも果たすなど活躍。同大学として6人目のプロ野球選手となった。
戦力外通告の一報を受けて大学時代の恩師である浜田 一志氏は、宮台投手と会って今後の話をしたと言い、トライアウトに向けて気持ちを新たにする教え子へエールを送った。
今しかできないことを頑張って欲しい
大学時代の宮台 康平
「野球への火はまだ消えていない様子で、トライアウトに向けての強い気持ちを感じました。迷って決められないなら色んな人を紹介するよと言うと、大丈夫ですときっぱりと言ったので、基本的に私は聞き役でアドバイスすることもありませんでした」
宮台投手は7日に行われるトライアウトに向けて、まずは支配下で野球を続ける道を模索するという。野球がダメだった時のことは今は全く考えておらず、浜田氏も「今しかできないことなので、とにかく頑張って欲しい」と熱いエールを送る。
今シーズンはファームで14試合・39イニング2/3に登板も、0勝4敗、防御率7.71と奮わず、日本ハム在籍3年間でも1軍登板は僅か1試合に止まった。浜田氏は、宮台投手が登板した日の投球は普段から映像でもチェックしており、今シーズンは投球フォームからも迷いが感じられたという。
「昨年は大学時代のようなしなやかさが戻ってきたように感じましたが、体の回転に迷いがあるように感じました。フォームを試行錯誤しているのだと思います」
浜田氏は東京大監督時代、全国の高校を精力的に回り受験テクニックを伝授しつつ東京大野球部を紹介。その中で入部見込み選手のリストを作成するなどチーム強化に努め、2013年春から7年間14季にわたって監督を務めた。宮台投手が中心選手となった2016年には年間4勝、2017年秋の法政大戦では15年ぶりの勝ち点を挙げるなど実績を残した。
入部見込み選手のリストには、湘南高に通っていた宮台投手の名前も載っており、合格発表が行われた日にはすぐに入部届を持って学校を訪問したと思い出を語る。
リリースと体重移動が一致し球速アップ
宮台康平と恩師・浜田一志監督(当時)
「湘南高校に成績も非常に良く、将来性を感じさせるサウスポーがいると聞いていました。東大の合格発表があったその日のうちに、湘南高校にいってすぐに入部しようと言ったの覚えています」
そしていざ宮台投手が東京大野球部に入部すると、ポール間走を走る姿を見て「ひょっとするとこれはプロに行けるレベルの素材なのでは」と感じたという。投げるボールの質や体の強さももちろんだが、浜田氏の目を最も引いたのは野球に取り組む姿勢だった。
「東大の中では取り組む姿勢ずば抜けていましたし、六大学で色んな選手を見ても引けを取らないなと思いました。プロに行ける可能性があるなと」
大学1年の秋にはマウンド立ち試合にも登板していたが、受験勉強でしばらく体を動かしていなかったこともあり、球数も始めは抑えながら調整していた。先発しても始めは1試合50球決めて、それ以上は絶対に投げさせない。そこから60球、70球と徐々に設定の球数を増やしていき投げる体力もつけていった。
「一試合で150球を投げて完投するという目で見ると、やはり始めは物足りなさがありました。1年時から140キロくらい投げる能力はあったと思いますが、本人も受験勉強明けで抑えていたところはあったと思います。大学では150キロを計測したので、恐らく10キロぐらいは伸びたのではないかなと思います」
東京大監督時代は、食事の栄養改善などを行い他大学に負けないパワーアップを進めてきたが、それ以上に宮台投手の球速アップの要因となったのは投球フォームの修正であった。浜田氏は体重移動とリリースのタイミングが一致することを重視してきたが、宮台投手もそのタイミングを徐々に掴みながら球速を伸ばしてきた。
「球速が出るというのは、リリースと体重移動が一致するかどうかで、体重移動だけしてリリースが遅れると球にも勢いがありません。そのリズム感が大事です。そこが上手く噛み合うようになり、さらに右足を踏み出した時にそこで耐える力がついたのだと思います」
成長を見守ってきた浜田氏は、7日のトライアウトに臨む教え子に「精一杯頑張って欲しい」と背中を押す。プロ野球12球合同トライアウトは12月7日(月)に非公開で行われる予定で、終了後から入団交渉が解禁される。支配下登録への道は開けるのか注目だ。
(記事=栗崎 祐太朗)
関連記事はこちら!
◆勉強嫌いな球児でも文武両道で東大野球部に入るための4つの法則 東京大野球部 前監督・浜田一志さん
◆沖縄出身初の東京大野球部員 島袋祐奨(東京大)の「文武両道」を続けるための思考法
◆東京大学野球部主将・笠原健吾さん(湘南高校出身)が考える「勉強を行う意味」と「文武両道の秘訣」