「まるで打球音が違った」ミスタードラゴンズの道を突き進む高橋周平(東海大甲府出身)の高校時代
東海大甲府時代の高橋周平
8年ぶりのAクラスを達成した中日ドラゴンズ。ベテラン・中堅・若手も充実の昇竜軍団をキャプテンとして率いるのが高橋周平(東海大甲府出身)である。東海大甲府時代は高校通算71本塁打を放った大型遊撃手として注目され、2011年のドラフトではオリックス、東京ヤクルト、中日の3球団から指名され、競合の末、中日が交渉権を獲得し、中日に入団。
プロ1年目から本塁打を放ち、2018年に11本塁打を記録し、初の規定打席到達。2019年も規定打席に到達し、キャリアハイとなる打率.293をマークし、ベストナイン、ゴールデングラブを獲得。そして今年は3年連続の100安打を達成し、打率3割もかかっている。今や中日の顔といっても過言ではない存在だ。
今回は高橋選手を指導した東海大甲府の村中秀人監督に当時の話を伺った。
打球音で高橋が打っているのがわかった
村中監督が高橋周平を初めてみたのが、湘南クラブ(現・湘南ボーイズ)時代だった。
「湘南クラブの監督が私の教え子で、その監督から(実力が)抜けている選手がいるよと教えてもらって。
まだ荒削りなところがありましたけど、将来は高い水準に達して、プロでも通用する選手になるかなと思いました」
高橋は1年春から公式戦に出場。ただこの時、足に菌が入り、一時期、戦列を離れることとなった。
「本人は帰りたくないといったんですけど、まだ先は長いからということで、いったん帰省させて治療を優先させました」
高橋の逸材としての評価は、中日でスラッガーとして活躍した森野将彦(東海大相模)以来だった。そして高橋の凄さを物語るエピソードを1つ上げた。
「なんといっても打球音が違いましたね。普通の選手とは全く違う打球音がありました。
普通の選手は「バチっ!」という感じなんですけど、周平の場合はブシっ!という感じでした。打球音で、高橋が打っているのがすぐわかりましたね」
そんな高橋に対し、村中監督は指導したことが2つ。
「彼の場合は間のとり方とバットの位置を教えました。スイング軌道、トップの位置は変える必要もなかったので、そのまま行かせました」
高橋が本格化したのは2年春。本塁打を量産するようになり、関東大会に出場。まず取手二戦で場外本塁打を放ち、さらに日大三相手に快打を披露し、一気に評価を高めた。
甲子園を狙った2年夏は3回戦敗退。新チームがスタートし、高橋は主将に就任した。
今の活躍は若手時代の苦労があったから
高橋周平
村中監督は主将就任のきっかけについてこう語る。
「やはり一番、公式戦を経験していますし、実績を残していますので、彼がチームを引っ張る形で、後ろの選手についていければという形で決めました」
高橋主将は行動で引っ張るタイプだったと振り返る。
「あまりものはいわないキャプテンでした。自分がやっていることを後ろからついてこいというタイプだったと思います」
高橋は高校通算71本塁打を記録した猛打だけではなく、遊撃守備についても高く評価されていた。ただ長年、多くの選手を指導してきた村中監督は、高橋がプロで遊撃手をやるタイプではないと思っていた。それでも遊撃手をやらせた理由とは。
「本来はサードです。彼が目標としているプロでレギュラーをとりたい。プロで活躍したいということを実現するには、ショートで守備範囲の広さを体で感じながらプロで通用する内野手になってもらいたい。
そういう思いで高校時代はショートをやらせていました」
高校でも、プロでも、遊撃手が求められる能力は他のポジションと比べても求められるハードルは高い。高橋は遊撃手をこなしながら、内野手としてのスキルを高めていった。
そして高校3年になると、さらに大きな注目を浴びるようになった高橋は3年春の県大会決勝で、山梨新記録となる高校通算57号となる本塁打を飛ばし、優勝に貢献し、春季関東大会に出場。この関東大会でも8打数5安打4二塁打の活躍を見せ、期待通りのパフォーマンスを示した。
最後の夏は山梨大会ベスト8で敗れたが、高校日本代表に選ばれ、第9回アジアAAA野球選手権では決勝の韓国戦で本塁打を打つ活躍を見せ、優勝に貢献した。さらにMVPを獲得。
村中監督は「普段から木製バットで練習をすることはあったのですが、それでも木製バットの練習の絶対量は不足していたと思いますので、その中でもよく打ったと思います」と教え子の活躍をたたえた。世代ナンバーワンスラッガーとして評価されるようになった高橋は中日ドラゴンズに入団。1年目から一軍を経験し、高卒8年目で規定打席到達。9年目は初の打率3割がかかっている。この活躍について村中監督は
「やはりプロの投手は速球のスピード、変化球のキレが段違いで、苦労したところはあったと思います。それでも1年目で高いレベルで投手を見させてもらって、5年目~6年目に開花して今にいたったのは、スタッフの方々にチャンスをもらったことが大きいかなと思います。ドラフト1位で活躍できるかといわれればそうではありませんですし、そこをクリアしての段階で頑張っているのは素晴らしいことです」
すでに多くの同世代のドラフト1位や上位選手が戦力外通告を受けている。一軍の試合に出場しながら、20代後半で引退を決めた選手が多い現状を考えると、高橋は高校時代とは違う中距離打者になったとはいえ、一流選手の道を歩んでいるといえるだろう。今シーズンを終われば、来年10年目を迎える高橋選手。そんな高橋選手について村中監督はこうエールを送った。
「もう周りを引っ張っていかなければならない年代となりますね。中日ドラゴンズのチームに貢献していきながらチームを引っ張っていきながらやってほしい。それがいずれリーグ優勝につながると思います」
プロ野球選手として節目を迎える2021年。高橋周平にとってはさらにステップアップするために重要な1年となる。
(記事=河嶋 宗一)
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