第79回 社会人野球屈指のスラッガー・今川優馬(JFE東日本)の原点。高校時代の恩師の視点から今川の成長を語る 2020年05月18日

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恩師が見た今川の精神的な強さ



今川優馬(JFE東日本)
 

 今川の急成長を見た大脇監督はしっかりとチャンスを与えた。今川はその期待に応えるかのように、春先の練習試合で快打を連発。今川自身もレギュラーを狙える手応えを感じた期間と話しており、大脇監督もレギュラーとして考えていた。しかし、大会直前にアクシデントが起こる。
 チームはゴールデンウィークで青森に遠征し、八戸学院光星との練習試合で骨折してしまったのだ。今川は「絶望した」とショックを受けた練習試合だったが、実は怪我が発覚するまで大脇監督との一幕があった。

 「あいつは手首を骨折した時に、こちらに言ってこなかったんですよ。そこはこっちとの我慢比べと言いますか、『言って来いよ』と思いましたが、なかなか来なかったんです。それでこっちから『大丈夫か』と話しかけました。ただ見てみたら、明らかに骨折だと分かるものだと思いました。大丈夫というけれど、全然大丈夫じゃない。それでも弱音を吐かないところに『強いな、こいつ』と思いましたね」

 その後も今川は諦めずに、夏にベンチ入りし、甲子園を経験した。そんな今川にチャンスが訪れたのは夏の甲子園後の国体だ。ちょうど同学年のレギュラーが就職活動のため、今川に出番が回ってきた。健大高崎戦で本塁打を放ち、大活躍を見せた。今川は自信を深めた大会だと振り返ったが、大脇監督も「国体の活躍は素晴らしく、長崎国体の会場はかなり広い球場でしたので、遠くへ運ぶ大きな一発でした」と高く評価した。

 その後、東海大北海道キャンパス、JFE東日本を経て、ドラフト候補へ成長した。そして昨年都市対抗野球大会優勝を果たした。大会後、今川は母校を訪れた。
「選手の前で話をさせて、『夢は追い続けるものだ』とカッコいいことを話していましたね」
今川は都市対抗優勝を経験するまで、高校ではレギュラー獲得寸前で怪我、大学では指導者との衝突、指名漏れを味わった。そういう経験を経て、今の地位を上り詰めたのだから、重みのある言葉だ。大脇監督は指導者の話を素直に聞き入れる姿勢があったからこそ、伸びる選手だったと振り返る。
「いつか分からないですが、『目指していたら、目指していない選手よりは可能性が上がるよな』と選手と話をしていて。しかも『小さい時からやっていたんならプロ野球選手を目指さずに、何を目指す』と話もしていまして。親が金かけて、兄妹が応援に来て。家族がお前の野球に振り回されているんだから、『プロを目指さないと意味ないだろ』と。それを素直に聞き入れたのが今川だと思います」
 今川は6人兄妹の長男で、経済的に苦しい状況で野球をやらせてもらっていることを高校生の時から理解をしていた。だからこそ大脇監督の言葉は響いていた。
 現在はコロナの影響で、社会人野球の公式戦はほぼ中止となり、前年都市対抗野球優勝を経験している今川はドラフト前までの大舞台や都市対抗予選がない。それでもSNSを通して前向きな姿勢を発信している教え子を見て、夢が叶うことを大脇監督は願っている。

(取材・文=河嶋 宗一

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河嶋宗一
副編集長 河嶋 宗一
  • 出身地:千葉県
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