「いろいろな人の夢を背負って」頑張ってほしい 恩師が語る・森 唯斗(福岡ソフトバンクホークス)【後編】
一昨年、昨年と日本シリーズ連覇を果たした福岡ソフトバンクホークス。その快挙が決まるマウンドに立っていたのはいずれもこの豪腕・森 唯斗だった。
2013年にドラフト2位で三菱自動車倉敷オーシャンズから入団すると、140キロ後半をアベレージとする回転数の多いストレートに落差の大きい縦変化球で6年連続50試合以上登板。一昨年からは守護神も務めるタフネス右腕。ただ、社会人4年間の前、徳島県立海部高等学校で過ごした3年間で過ごした日々はほとんど知られていない。
そこで今回は森 唯斗が海部2・3年時に監督を務め、現在は徳島科学技術で指揮を執る福井 健太監督に高校時代のお話をうかがうことに。そこで出てきたのは「鉄腕」の裏にある「意外な」側面だった……。
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「鉄腕」の秘められた高校3年間 恩師が語る・森 唯斗(福岡ソフトバンクホークス)【前編】
打撃の課題が生んだ「抑え・森唯斗」の発想
2年時の森 唯斗(福岡ソフトバンクホークス)を含む海部の円陣<撮影:大久保 隆太>
森が3年の代は他の学校にもいい投手がそろっていました。徳島商には杉本(裕太郎・青学大からは野手~JR西日本~オリックス・バファローズ)、夏に甲子園に行った徳島北には左腕の阪本(寛典・拓殖大)、そして鳴門第一(現:鳴門渦潮)には大阪ガスに行って2018年都市対抗胴上げ投手になった緒方(悠)。四国を見ても愛媛県には秋山 拓巳(西条~阪神タイガース)、平井 諒(帝京第五~東京ヤクルトスワローズ)、高知県にも明徳義塾には石橋 良太(拓殖大~Honda~東北楽天ゴールデンイーグルス)、高知にも公文 克彦(大阪ガス~読売ジャイアンツ~北海道日本ハムファイターズ)がいた。森の高校時代も最速は143キロまでいったんですが、レベルは高かったですね。
その中で海部は打てないチームでした。たとえば同学年で一番いい投手と言われていた鳴門第一と練習試合で対戦しても緒方が向こうは投げて、ウチも森と戎谷がいるから「1対1」とか「1対2」とかで1時間少しで終わる。そして春の県大会でも鳴門第一と対戦して初回に失策が絡んで4点を失って、その裏に2点を返してそのまま終わる。そんな感じだったんです。
ですので最後の夏は「戎谷で行けるところまで行って森をリリーフに回す」ということになりました。ただ、小松島西に敗れた3回戦も戎谷がピンチを背負って森がリリーフし、レフト線に落とされた打球が決勝点になって1対3で敗れた。そんな感じで打撃の課題は結局、最後まで解消できませんでしたね。試合が終わった後は森も泣いていました。
[page_break:「いろいろな人の夢を背負って」頑張ってほしい]「いろいろな人の夢を背負って」頑張ってほしい
森 唯斗(福岡ソフトバンクホークス)
森の進路は本人も勉強が好きではなかったので(笑)、社会人を探すことにしました。ただ、最後の夏が終わってもなかなか進路が決まらない。その中で鳴門第一の鎌田(智仁・現:城北監督・2019侍ジャパンU-18代表アシスタントコーチ)監督の筑波大時代の同級生が三菱自動車倉敷オーシャンズのマネージャーをしていた縁などがあって、練習参加した結果入社が決まったんです。今考えればなかなかない流れですよね。
卒業の時は「3年でプロに行けるように頑張れ」と言って送り出しました。それから4年はかかりましたが、プロに行けて今に至るわけです。ただ僕も立教大の時に亜細亜大の1年生で入ってきた松田 宣浩(福岡ソフトバンクホークス)と同じように森も「将来的にはプロには行ける素材」とは思っていましたが、正直ここまでにはなるとは想像していませんでした。
それでも今になって思うのは「やはり彼にはリリーフが最適の場所・天職だったんだなあ」ということ。三菱自動車倉敷オーシャンズでも彼は先発中心だったんですが、短いイニングで最大の力を発揮する方がよかったということなんでしょうね。そして社会人・プロに入っても自分の能力を成長させた本人もそうだし、そこを引き出してくれた福岡ソフトバンクホークスのみなさんも凄いと思います。森とは今でもオフシーズンに顔を合わせる機会があるんですが、印象は高校時代と変わらない。リリーフの場面に対しても「楽しいです」って言ってました(笑)
これからの森 唯斗に対して思うのは、まずはずっとエンジン全開でやっているので「ケガをしない」ということ。高校時代は緒方の方が上だった評価からここまで来ているのが凄いことですし、いろいろな人の夢を背負っているので、頑張ってほしいですね。
(取材・文=寺下 友徳)
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