Column

「いろいろな人の夢を背負って」頑張ってほしい 恩師が語る・森 唯斗(福岡ソフトバンクホークス)【後編】

2020.02.11

 一昨年、昨年と日本シリーズ連覇を果たした福岡ソフトバンクホークス。その快挙が決まるマウンドに立っていたのはいずれもこの豪腕・森 唯斗だった。

 2013年にドラフト2位で三菱自動車倉敷オーシャンズから入団すると、140キロ後半をアベレージとする回転数の多いストレートに落差の大きい縦変化球で6年連続50試合以上登板。一昨年からは守護神も務めるタフネス右腕。ただ、社会人4年間の前、徳島県立海部高等学校で過ごした3年間で過ごした日々はほとんど知られていない。

 そこで今回は森 唯斗海部2・3年時に監督を務め、現在は徳島科学技術で指揮を執る福井 健太監督に高校時代のお話をうかがうことに。そこで出てきたのは「鉄腕」の裏にある「意外な」側面だった……。

「いろいろな人の夢を背負って」頑張ってほしい 恩師が語る・森 唯斗(福岡ソフトバンクホークス)【後編】 | 高校野球ドットコム前編はこちらから!
「鉄腕」の秘められた高校3年間 恩師が語る・森 唯斗(福岡ソフトバンクホークス)【前編】

打撃の課題が生んだ「抑え・森唯斗」の発想

「いろいろな人の夢を背負って」頑張ってほしい 恩師が語る・森 唯斗(福岡ソフトバンクホークス)【後編】 | 高校野球ドットコム
2年時の森 唯斗(福岡ソフトバンクホークス)を含む海部の円陣<撮影:大久保 隆太>

 森が3年の代は他の学校にもいい投手がそろっていました。徳島商には杉本(裕太郎・青学大からは野手~JR西日本~オリックス・バファローズ)、夏に甲子園に行った徳島北には左腕の阪本(寛典・拓殖大)、そして鳴門第一(現:鳴門渦潮)には大阪ガスに行って2018年都市対抗胴上げ投手になった緒方(悠)。四国を見ても愛媛県には秋山 拓巳西条~阪神タイガース)、平井 諒帝京第五~東京ヤクルトスワローズ)、高知県にも明徳義塾には石橋 良太(拓殖大~Honda~東北楽天ゴールデンイーグルス)、高知にも公文 克彦(大阪ガス~読売ジャイアンツ~北海道日本ハムファイターズ)がいた。森の高校時代も最速は143キロまでいったんですが、レベルは高かったですね。

 その中で海部は打てないチームでした。たとえば同学年で一番いい投手と言われていた鳴門第一と練習試合で対戦しても緒方が向こうは投げて、ウチも森と戎谷がいるから「1対1」とか「1対2」とかで1時間少しで終わる。そして春の県大会でも鳴門第一と対戦して初回に失策が絡んで4点を失って、その裏に2点を返してそのまま終わる。そんな感じだったんです。

 ですので最後の夏は「戎谷で行けるところまで行って森をリリーフに回す」ということになりました。ただ、小松島西に敗れた3回戦も戎谷がピンチを背負って森がリリーフし、レフト線に落とされた打球が決勝点になって1対3で敗れた。そんな感じで打撃の課題は結局、最後まで解消できませんでしたね。試合が終わった後は森も泣いていました。

[page_break:「いろいろな人の夢を背負って」頑張ってほしい]

「いろいろな人の夢を背負って」頑張ってほしい

「いろいろな人の夢を背負って」頑張ってほしい 恩師が語る・森 唯斗(福岡ソフトバンクホークス)【後編】 | 高校野球ドットコム
森 唯斗(福岡ソフトバンクホークス)

 森の進路は本人も勉強が好きではなかったので(笑)、社会人を探すことにしました。ただ、最後の夏が終わってもなかなか進路が決まらない。その中で鳴門第一の鎌田(智仁・現:城北監督・2019侍ジャパンU-18代表アシスタントコーチ)監督の筑波大時代の同級生が三菱自動車倉敷オーシャンズのマネージャーをしていた縁などがあって、練習参加した結果入社が決まったんです。今考えればなかなかない流れですよね。

 卒業の時は「3年でプロに行けるように頑張れ」と言って送り出しました。それから4年はかかりましたが、プロに行けて今に至るわけです。ただ僕も立教大の時に亜細亜大の1年生で入ってきた松田 宣浩(福岡ソフトバンクホークス)と同じように森も「将来的にはプロには行ける素材」とは思っていましたが、正直ここまでにはなるとは想像していませんでした。

 それでも今になって思うのは「やはり彼にはリリーフが最適の場所・天職だったんだなあ」ということ。三菱自動車倉敷オーシャンズでも彼は先発中心だったんですが、短いイニングで最大の力を発揮する方がよかったということなんでしょうね。そして社会人・プロに入っても自分の能力を成長させた本人もそうだし、そこを引き出してくれた福岡ソフトバンクホークスのみなさんも凄いと思います。森とは今でもオフシーズンに顔を合わせる機会があるんですが、印象は高校時代と変わらない。リリーフの場面に対しても「楽しいです」って言ってました(笑)

 これからの森 唯斗に対して思うのは、まずはずっとエンジン全開でやっているので「ケガをしない」ということ。高校時代は緒方の方が上だった評価からここまで来ているのが凄いことですし、いろいろな人の夢を背負っているので、頑張ってほしいですね。

(取材・文=寺下 友徳

関連記事
◆他の恩師が語るシリーズを読んでみる
◆山本拓実の好投を分析してみた⇒「気持ちの強さ、フォーム、腕の振り、全てで他の選手より優れていた」恩師が語る山本拓実(中日ドラゴンズ)【前編】
◆小園海斗の高校時代に迫る⇒鮮烈だった「追い込まれてからのフルスイング」 恩師が振り返る広島・小園海斗(報徳学園出身)の高校時代の成長

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.03.28

大阪桐蔭、大会NO.1右腕に封じ込まれ、準々決勝敗退!2失策が失点に響く

2024.03.28

中央学院が春夏通じて初4強入り、青森山田の木製バットコンビ猛打賞も届かず

2024.03.28

【センバツ準々決勝】4強決定!星稜が春初、健大高崎は12年ぶり、中央学院は春夏通じて初、報徳学園は2年連続

2024.03.28

星稜・戸田が2安打無四球完封で初4強、阿南光・吉岡はリリーフ好投も無念

2024.03.28

健大高崎が「機動破壊」以来、12年ぶり4強、山梨学院は連覇の夢ならず

2024.03.23

【春季東京大会】予選突破48校が出そろう! 都大会初戦で國學院久我山と共栄学園など好カード

2024.03.24

【神奈川】桐光学園、慶應義塾、横浜、東海大相模らが初戦白星<春季県大会地区予選の結果>

2024.03.23

【東京】日本学園、堀越などが都大会に進出<春季都大会1次予選>

2024.03.27

報徳学園が投打で常総学院に圧倒し、出場3大会連続の8強入り

2024.03.25

異例の「社会人野球→大学野球」を選んだ富士大の強打者・高山遼太郎 教員志望も「野球をやっているうちはプロを狙う!」父は広島スカウト

2024.03.08

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.03.17

【東京】帝京はコールド発進 東亜学園も44得点の快勝<春季都大会1次予選>

2024.03.11

立教大が卒業生の進路を発表!智弁和歌山出身のエースは三菱重工Eastへ、明石商出身のスラッガーは証券マンに!

2024.03.23

【春季東京大会】予選突破48校が出そろう! 都大会初戦で國學院久我山と共栄学園など好カード

2024.03.01

今年も強力な新人が続々入社!【社会人野球部新人一覧】