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「気持ちの強さ、フォーム、腕の振り、全てで他の選手より優れていた」恩師が語る山本拓実(中日ドラゴンズ)【前編】

2019.11.16

 2020年シーズンが幕を開け、キャンプインまで各地で選手たちが自主トレを行い、汗を流している。2019年シーズンのセ・リーグでは、巨人が広島の4連覇を食い止めて見事優勝を果たした。そのセ・リーグでシーズン5位に終わったのが中日だ。

 かつて落合博満氏を監督にすえて投手王国として一時代を築き上げ、再建が待たれる。その中で最も期待されているであろう投手がプロ3年目に入る山本拓実だ。

 高校時代は、大阪桐蔭の西谷浩一監督が、「どうしても対戦したい」ということで練習試合を敢行。プロ2年目となる2019年は9試合に登板して初勝利を含む、3勝3敗という成績を残し、ブレークの兆しを見せる。そんな期待の新成人・山本は高校時代、どんな3年間を過ごしてきたのか。母校・市立西宮で監督をする吉田俊介監督に当時の話を伺った。

燃えるものを随所に見せる男だった

「気持ちの強さ、フォーム、腕の振り、全てで他の選手より優れていた」恩師が語る山本拓実(中日ドラゴンズ)【前編】 | 高校野球ドットコム
高校時代の山本拓実投手

 「プレーをする姿、目つきからも燃えるものと言いますか。気持ちの強さを感じさせる選手でした」

 恩師・吉田監督が笑顔を見せながら語った山本投手の第一印象だ。2015年に市立西宮の門を叩いた山本投手を指導し始めた吉田監督だが、実際にプレーを見たのは入学をしてから。最初の出会いこそ、練習の見学でグラウンドに足を運んできた時だが、プレーを見ることはなかった。

 他の選手たちとともにプレーをしている山本投手を見て吉田監督は2つのことに気づいた。
 「気持ちの強さはもちろんなのですが、腕の振りの強かったですし、フォームが綺麗だったのは、他の選手より優れていたと思います」

 フォームの完成度に吉田監督は心を惹かれたが、懸念したのは体力。現在は167センチ71キロとプロの中でも少し物足りない。しかし、入学時はもっと小さく細い体つきをしていた山本投手。高い技術力に体力が追い付いていなかったからこそ、吉田監督は「殻を破ったら楽しみやな」という期待を抱きながら指導にあたった。

[page_break:細かな部分に目を向ける指導方針]

細かな部分に目を向ける指導方針

「気持ちの強さ、フォーム、腕の振り、全てで他の選手より優れていた」恩師が語る山本拓実(中日ドラゴンズ)【前編】 | 高校野球ドットコム
恩師・吉田俊介監督

 そんな山本投手を筆頭に吉田監督は投手陣に対して大事にしている指導方針がある。それが、「細かな部分に目を向けて考えること」だという。
 「腹筋や体重移動、さらにはフィニッシュの形など、部分的なことばかりであまり投げ込みだけにしていないです。地道な練習ばかりなのですが、それをいかに投球に落とし込んでいけるのか、ただやるのではなく考えるのが大事なんです。ですので、選手たちには何のためにやるのかは伝えています」

 取材日当日もピッチャーはフィニッシュの形を意識したトレーニングをしているのを見たが、吉田監督にとってそういった細かなところの質を高めていくことがピッチングに繋がると考えているのだ。

 では、山本投手はこの指導方針を受けて、どのような姿勢で練習に取り組んでいたのだろうか。
 「彼はその辺りをしっかり考えて、『この動作は、投球にこれに繋がる』と1つ1つメニューに対して理解していました。その上でメニューを消化できていたと思います」

 こうして山本投手は毎日しっかり考えながらメニューをこなしていくと、2年生の春には球速は大台の140キロに到達。1年間で15キロほど一気に伸ばすことが出来たのだ。

 そして迎えた2年生の夏は5回戦で敗退するという結果に終わる。夢舞台・甲子園には届かず、山本投手はチームのエースとして新チームをスタート。春の選抜に向けて秋の兵庫県大会を勝つつもりでいた。

 しかし結果は地区予選で敗退。県大会にすら出場ができず、甲子園の道のりは夏だけとなったのだ。まさかともいえる結果に吉田監督はこう振り返る。
 「本人の中ではかなりショックみたいだったんです。『自分が試合に出場して投げているのに地区予選で負けるのか」と。この結果が悔しくて『もっとやらなければ甲子園に行けない。だから、甲子園に行けるレベルの選手になろう』と目の色変えて冬を過ごしていましたね」

 前編はここまで。後編では山本選手の最後の夏への取り組みやドラフト当日、そして3年目を迎える教え子へメッセージをもらいました。後編もお楽しみに!⇒(後編を読む)

(取材・文=田中 裕毅

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◆山本拓実の好投を分析してみた⇒兵庫のシンデレラボーイ!報徳を追い詰めた167センチの剛腕
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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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