第65回 「捕手に転向してアイツの良さがすべて出た」 原口文仁(阪神)の捕手転向秘話2019年06月04日

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【目次】
[1]最初から適正があったわけではなく、最後の選択肢が捕手
[2]多くの人が心配し、応援してもらえるのはアイツの人間性があってこそ

 6月4日、阪神タイガースにあの男が帰ってきた。阪神が誇る強打強肩の好捕手・原口 文仁が、交流戦開幕戦・千葉ロッテ(QVCマリンフィールド)戦で一軍復帰する。

 今年1月に大腸がんを公表。手術、リハビリを乗り越えて4ヶ月で一軍復帰となった。そんな原口選手の復帰を心待ちにしていた方がいる。それが帝京高校時代の恩師・前田三夫監督だ。前田監督は捕手・原口を見出した方で、前田監督の存在がなければプロ入りもない。そんな原口の捕手転向秘話や原口の素晴らしい人間性を表すエピソードを紹介していただいた。

最初から適正があったわけではなく、最後の選択肢が捕手



帝京高校時代の原口文仁

 「原口は最初から捕手ではなく、一塁か、外野の兼任でした。肩はまあまあ良かったんですが、守備が下手くそでした。それならとサードをやらせたら、サードゴロが試合で捕れなくて『何をやってんだよー』と(笑) ピッチャーをやらせたんだけどそれもダメ。それが1年間続いて、高校2年生の時ですね。原口はバッティングがいいので、『お前、どこかやったことないか』と訊いたら、『小学校の時にキャッチャーをやったことがあります』と言うのでやらせてみたら、それがハマるんですよ」

 最初から適正があって転向したわけではなく、いろいろ試した中で最後の選択肢が捕手だった。しかし、その能力の高さは前田監督も驚きのものだった。
 「彼は指示が的確なので、チームが締まるし、投手も育つ。こいつ、こういうところがあるんだなと思いました。あと飲み込みが早い、早い!アイツは研究熱心だったんですよ」

 もし捕手に転向しなければ、原口のプロ入りはなかったかもしれない。大英断だった。前田監督は原口の努力ぶりに一目置いていた。原口は埼玉県の北西部にある寄居町出身で、学校まで実家から通っていた。
 「本当に遠い、遠い場所から通っていたんですよ。それで家に帰ってよく親父さんとティーを打ったらしいですよ。影での努力が一番身になりますよね」



原口文仁の恩師・前田三夫監督(帝京)

 また、投手から信頼を集めるためにフォローも忘れなかった。原口と同世代には149キロ右腕の平原 庸多(元東京ガス)、1学年下には山﨑 康晃(横浜DeNA)、鈴木 昇太(東海大卒)、そして2学年下には当時、スーパー1年生として注目を浴びていた伊藤 拓郎(現・新日鐵住金鹿島)とプロ注目の好投手が勢揃いだったが、前田監督は彼らの成長と活躍は原口の功績が大きかったと語る。

 「彼は影でこうだ、こうだということを必死になってピッチャーにアドバイスしたりしてましたからね。だからピッチャーも投げやすかったでしょう」

 そして前田監督が捕手・原口の最も評価している点は人間性だ。
 「私は何回も甲子園に出させてもらってますから、多くの良い捕手がいましたが、その中において特に原口の場合、打たれても腐らないんです。それでピッチャーが投げやすかったんだと思います。ピッチャーが打たれた時でも『俺の責任だ』ということを言い切ってましたから。コイツはピッチャーの心理をきっちり押さえてカバーしているなと想いましたね。普通、ピッチャーが打たれたら『何やってんだよ』と怒る捕手もいるんですが、彼の場合、そういうのは無かったもんね」

 地道に攻守で実力を伸ばし、3年夏に甲子園出場。正捕手としてベスト8入りに貢献した。そして、日米親善高校野球大会の日本代表にも選ばれた原口は、そこでも献身的な姿勢で代表投手たちを支えた。
 「高野連本部の中沢記念館(中沢佐伯記念野球会館)で合宿をしたんですよ。そうしたらピッチャー全員のところへ本人が回って、球種は何か、得意なボールは何か、何で三振を取れるのか、みんなメモしたらしいです。それを後で聞きました。彼のそこが良いところだと思います」

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プロフィール

河嶋宗一
副編集長 河嶋 宗一
  • 出身地:千葉県
  • ■ 現場第一主義。球児に届けたい情報とあれば日本だけでなく海外まで飛び回る。
  • ■ 副編集長、またドットコムのスカウト部長と呼ばれ、日本全国の隠れた名選手を探索。
  • ■ 幅広いアンテナと鋭い観察力でダイヤの原石を見つけだす。
  • ■ 編集部の理論派として、今日も球場に足を運ぶ。
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