源田壮亮「自分の長所を知り伸ばし続けた守備の道」
2017年、西武ライオンズにドラフト3位で入団した源田壮亮。その鉄壁の守備は見るものを魅了し、パ・リーグで新人王を獲得した。そんな源田について、恩師・渡辺正雄監督(大分商)に話を聞いた。
源田壮亮の強みは自分を理解していること
源田壮亮選手(埼玉西武ライオンズ)
「源田の前に、プロに言ったのは巨人に行った岡崎さん(岡崎郁・巨人スカウト部長)なので、それからというと20年も空いていたわけですよ。」
「当然プロの人からも源田を高校からプロへという話もあり、源田の中でもプロ野球選手になれるというものは出てきていました。ただ本人冷静で、まだ自分にはちょっと足りない部分があると、守備に関しても。なので高校からは行かずに一回ちょっと上の、大学を見たいと。」
「普通飛びつくと思うんですけど、そういう所も冷静だった。今が旬なのかどうなのかという状況判断が長けていたんだと思いますね。」
恩師・渡辺正雄監督は、源田壮亮を状況判断が長けていると評する。それは、自分の置かれた状況だけでなく、試合での状況などにも通じる強みである。
[page_break:源田壮亮の強みに対するアプローチ]源田壮亮の強みに対するアプローチ
高校時代の恩師・渡辺正雄氏
自分を理解していることは、練習のアプローチにも現れる。渡邉監督は源田の練習についてこのような話をしてくれた。
「一番うまいのは守備だと思います。本人の中で自信があるところだと。普通野球選手って自信が無いところを強化していくんですね。源田は自信のある守備を練習するんですね。源田の『それでも遊撃手というものを極めよう』とする姿ですよね。」
「当然地元に帰ってきて、グラウンドに顔だして、何するかと言ったら当然守備ですもん。バットなんて全く振りません。本当に守備をしていますし、そこに川瀬(川瀬晃・ソフトバンク)だったり広瀬(広沢伸哉・オリックス)だったり、帰ってきても同じように守備をしていますね。」
自分の課題、自分の強み、を理解した上での源田のアプローチを見ると、源田の目的が見えてくる。プロ野球は相対評価である。相対評価される上で、選手は比較対象より良いパフォーマンスを示す必要がある。ただ、弱みを練習して相手と同じレベルになっても。相対評価の上では、まさに相手にならんだだけであり、その上で次の比較が行われる。源田はその相対評価で、守備で抜群の差をつけるという選択肢を選んだことになる。源田が見据えた道が見えてくる。
源田壮亮から影響を受けた指導方法
指導を受ける大分商の選手
渡邉監督は、インタビューの中で源田から得た貴重な経験を教えてくれた。
「僕(自分の指導方法は)は厳しかったですけど、源田などあの組と出会って、自分がプロに行くために努力していく姿を見た時に、僕のようなちっぽけな人間の野球感なんてどうでも良いと思いましたよね。」
渡邉監督は、源田との出会いがターニングポイントになったと語る。そして、「この子達(選手達)にかかわらせてもらっている」と考えるようになった。
「自分も可能性を引き出してくれるんじゃないか」という思いで大分商業の門をたたく生徒たちの芽を潰さずに、寄り添いながら伸びていく方法をさがす指導方針に転換することになる。
実際に、源田の後に入学し、後にソフトバンクに入団することになった、笠谷俊介についてこのように語ってくれた。
「笠谷俊介というのが入学してきて、一年生から自分自身で花開こうとしているんですよ。高校野球ってかならずしも、1年、2年、3年って良くなるとは限らないじゃないですか。1年生から特別に試合に出してしまったらどうなのかなぁという葛藤はあったのですが、本当に本人、プロに行くために、大分商業を甲子園に導くために、1年生とか2年生とか関係なく1年生なのに、こう花開こうとしているのに、これ指導者が花開かせなかったらどうしようもならない。花開こうとしているんだったら、開かせようと思って。」
源田の出現が、指導方法に大きな影響を与えたのは想像に難くない。
[page_break:源田壮亮との出会いが変えた大分商の基準]源田壮亮との出会いが変えた大分商の基準
ノックを受ける源田壮亮選手(埼玉西武ライオンズ)
源田との出会いは、指導方法でなく、大分商が求める選手の目標基準にも大きく影響を与えた。
「源田が基準になっているので、ハンドリングであったり、野球に取り組む姿勢であったり。(源田の)高校時代、大学時代、社会人も動きは全部チェックしていたので、うちの選手が今度高卒からプロに行きたいとなった時に、源田がここまでできているので、ここまでのラインといのがあります。この動きができないとプロにはいけないと言うのは今の現役生にも話はしていますね。」
まさに、プロに行くための基準があり、源田に続く選手はそれを参考にできるのである。
「川瀬も源田の動きというのは当然知っていますし、去年入った広沢にしても当然そうですし、今回森下弟(森下颯太・大分商3年)も1番・遊撃手で、そしてそれができる伸びしろがあるレベルに来ている。」
源田壮亮から始まった大分商ショートストップの系譜は今、大型遊撃手、森下 颯太に引き継がれようとしている。
(取材・文=田中実)
■源田選手のインタビュー動画はコチラ!
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