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中村 晃選手(帝京-福岡ソフトバンクホークス)「勝負強く、ストイックで、器用さもあり理想的な野球選手だった」

2016.03.05

 昨年、2年連続で日本一を達成した福岡ソフトバンクホークス。投打ともに強力な布陣のホークスだが、主に1番打者として活躍するのが中村 晃選手である。2013年からレギュラーに定着し、3年連続で打率3割を記録。さらに昨年はプレミア12、そして今年は侍ジャパン強化試合・チャイニーズタイペイ戦にも出場予定で、国際大会経験も豊富な中村選手。今年も強力なホークス打線をけん引する存在として活躍が期待される中村選手の高校時代を、帝京前田 三夫監督に伺ったが、こういう選手だからこそレベルの高い舞台で活躍できるのかと思わせる内容だった。

中村選手インタビューも合わせてチェック!

「『首位打者・最高出塁率』を目指す『深み』の深層」


「量をやりながら、質も求める」

勝負強いの一言に尽きる中村の甲子園の活躍

中村 晃選手(福岡ソフトバンクホークス)

「彼は朝霞第二中時代から有名な選手で、入学当時はやっぱり抜けていましたね。体は174、5センチとそう大きくないんですけど、身体に秘める力はかなり強かったですし、打撃では飛ばす力、当てる力もずば抜けていました。また肩も強く、足も速かった。そして守備ではハンドリングが本当に柔らかく、天性のものがありました。
最初、私は彼を投手兼野手として期待していたんですよ。でも本人は打者が好きだったようで、投手として活躍することはありませんでした。入学時から本塁打はポンポン打っていましたし、2年生になれば不動の4番ですよ」

 当時の帝京には中村の1学年上には勝見 亮祐(日体大卒業)、不破 卓哉(武蔵大卒業)、塩沢 佑太筑波大卒)など強打者が揃っていた世代だった。その世代を押しのけて4番に座った中村はやはりずば抜けていた。

「下級生が4番を打つことに不平不満を漏らす奴は誰もいなかった。彼の良いところは勝負強いことですよ。4番は特に警戒されるのに、それでも勝負強い打撃を見せていました」

 2年夏の甲子園(2006年)ではまず2回戦の如水館戦で本塁打を放つなど4打数3安打2打点の活躍、さらに3回戦の福岡工大城東戦でも適時打を放った。準々決勝では智辯和歌山と対戦したが、8回終了時点で4対8と4点ビハインド。そして9回表、二死一、二塁の場面で、中村が初球を打ちそれが適時打となり、そこから猛反撃を仕掛け、12対8と逆転した。結局その裏に5点を失い12対13で敗れたが、9回表のこの逆転劇は中村の一打から始まった。3試合連続打点を記録した中村は確かに勝負強かった。

「どの場面でも活躍をしていましたし、ここぞという場面で本当に活躍していましたね。新チームでは中村が主将をやるのですが、口数が少ない奴でしたけど、姿勢も素晴らしいですし、実力もあり、誰もが認める存在。彼の一言、一言に説得力があって、みんなついていきましたので、私からすれば、本当にチームが作りやすかったですね」

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[page_break:努力家でさらに器用な一面が今の活躍につながっている]

 そして3年春(2007年)も甲子園に出場。中村はこの大会でも活躍した。初戦の小城戦では4打数3安打。準々決勝の広島広陵戦では、相手エース・野村祐輔2010年インタビューからソロ本塁打を放つなど3打数2安打の活躍。準決勝では大垣日大に4対5で敗れたとはいえ、2打点を記録するなど、4番打者としてしっかりと仕事をこなした。前田監督から4番中村はどう映っていたのだろうか。

「4番らしい4番打者といえば、体格も良く、そして本塁打を多く打てる打者だと思いますが、中村の場合、長打を打つだけではなく、場合に応じて逆方向に打ち返すこともできますし、さらにバントもしっかりと出来て、足も速い。4番打者だけではなく、上位打線、下位打線もできる器用さを持った選手でした。ホークスでは1番を打っていますけど、そういう器用さが今に生きているのではないでしょうか。春が終わると、3年生に進路相談をするのですが、ここで中村はプロへ行きたいと明言しました。実力もそうですが、野球に取り組む姿勢も申し分ないものがありましたし、プロへ行くだろうと思いました」

努力家でさらに器用な一面が今の活躍につながっている

中村 晃選手(福岡ソフトバンクホークス)

 そして中村は3年夏も甲子園に出場。1回戦の駒大岩見沢戦で1打点、2回戦の神村学園戦で2打点、そして準々決勝の佐賀北戦で3打数3安打の活躍と、この大会でも評判通りの活躍。大会後の日米親善試合で、日本代表に選出された。前田監督は金城 孝夫コーチ(現・長崎日大監督)が中村の打撃に驚いていたエピソードを明かしてくれた。

「金城さんから『中村は引っ張る打球も、流し打ちする打球も同じだな!』と言われまして。本当にそうなんですよね。右打者ならライト方向、左打者ならレフト方向へ流した打球が弱くなるんですけど、中村は逆方向でも長打、本塁打が打てますし、そういう技術は本当に優れたものがあったと思います」

 そして2007年の高校生ドラフトで3位指名を受け、福岡ソフトバンクホークスに入団した中村 晃。高卒7年目となる2014年に最多安打、そして昨年はプレミア12にも出場し、日本を代表する選手として成長を果たしている。そんな中村の姿をどう見ているのか。

「想像以上ですね。最初、プロに入って苦労するんだろうなぁと思いながらも、それでも活躍してほしいと思っていましたし、今の活躍は本当に嬉しいものです。やっぱり活躍できたのは高校時代から努力家の一面があったから。ストイックに取り組みますし、オフになれば、『お正月は部室空けてください』とお願いがくるんです。そこで中村はお正月の期間、グラウンドで練習をしていくんです。そこがすごいところだと思います。

 ホークスは本当にすごい選手の集まり。そういう中で、自分は何で生きていくべきなのかを考えてやっていますし、高校ではよくホームランを打っていましたが、プロでは中距離打者として生きていて、環境に応じてやっているのが感じられます。そこは選手たちも見習ってほしい部分ではあります」

 まさに野球選手のお手本であるといえる。今後の中村について前田監督はどんな期待をしているのかを伺った。
「彼の良さである前向きな姿勢で、継続してやっていってくれれば良い結果が出てくると思いますし、今の姿勢を崩さないでほしいですね」

 話を聞いて、早くから活躍する一流選手は実力、姿勢面、試合の活躍度と全く隙が無いと思わせる内容だった。今後も超一流と呼ばれるような実績を残していくのか、見逃せない。

(取材・構成=河嶋 宗一

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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