Column

伊藤 光捕手(明徳義塾-オリックス・バファローズ)「プロ入りを確信した」別格の肩

2015.12.28

 オリックス・バファローズの正捕手を務める伊藤 光。強肩・強打・俊足に加え甘いマスクを兼ね備える26歳のプレーは高卒7年目で「侍ジャパン」トップチームにも多数選出経験を持つ俊英ならではのスマートさに満ちている。

 ただ、そんな彼の出身高が全寮制、公私共に俗世間から隔絶された環境下で鍛え上げる明徳義塾(高知)であることは意外にも知られていない。では、高校時代の伊藤 光はどんな球児だったのだろうか?今回は名将・馬淵 史郎監督から見えた伊藤 光の実像を語ってもらった。

最初に見たときから「プロへ行ける」と思った

伊藤 光捕手 恩師の明徳義塾・馬淵 史郎監督

 (伊藤)光は最初に見たときから「プロに行ける」と思いました。肩とキャッチボールは図抜けていたし、足もチームで1・2を争うくらい速い。だから練習ではショートを守らせたこともありました。
フィールディングとかは1学年上に永松 泰典(関西大~鷺宮製作所)といういいキャッチャーがいたので、すぐに試合に出られるレベルではなかったけど、彼の場合は明徳義塾でなくてもある程度のレベルにある学校に行っていればプロには行ける素材。その部分では順調には行ってくれたと思います。

 その反面、バッティングはアッパースイング気味だったのでプロに入っても苦しむとは思っていました。どうしても「遠くに飛ばしたい」という意識が強く、内角低めのボールは滅法強くてよく飛ばしていたから、高校時代は最後までその傾向がなかなか直らなかった。
だから、ベルトより上の速いボールはダメだったんです。ただ、プロに入って昨年からはセンター方向に叩きつけて打てるようになった。ここは頑張っている部分だと思いますね。

このページのトップへ

[page_break:実は「特進コース」の頭脳と肩の逸話 / 明徳義塾らしい「勝てる捕手」になってほしい]

実は「特進コース」の頭脳と肩の逸話

伊藤 光捕手(オリックス・バファローズ)

 光は頭もよかったんですよ。明徳義塾では「特進コース」。だからリードの原則も理解していました。捕手としての能力も高かった。当時2番手捕手だった浦 翔太郎拓殖大で主将をして、今はJFE西日本の正捕手になっているくらいですからね。

 さらに送球も肩の高さのまま二塁まで届く。となるとランナーは誰も盗塁してこない。相手チームも諦めがついたのか一塁にランナーが出てもバントしかしてこなかったです。だからNPBのスカウトはいっぱい来てもらっていたけど、中でもオリックス・バファローズは一番熱心だった。3年になってからずっと見に行ってくれていたし、6月からはスカウト部長もよく見に来ていました。

 ただ、それゆえにリードに酔う部分もあったんです。「投手が打たれても俺のせいじゃない」みたいな。加えて、当時の明徳義塾は投手もよくなかったし、高知国尾 健人國學院大~現:松山城南高<愛媛>コーチ)がエースで、守れて強かった(2006年明治神宮大会優勝・2007年連続甲子園出場)。
最終学年で明徳義塾高知は4度対戦して、勝ったのは新人戦との四国大会代表校順位決定戦だけ。甲子園に通じるは決勝戦で負けました。正直言って実力差がありすぎる中で捕手として光は苦労したと思う。それが逆に言えば今に活きているんじゃないかな。

明徳義塾らしい「勝てる捕手」になってほしい

 光は今でも秋季キャンプで高知に来ると「到着しました」と連絡をくれる。真面目だし、チャラチャラしたところはまるでないです。一方でさきほど話した利己的な部分もプロ向きな部分。

 だからこそ、これからの光には日本を背負って立つキャッチャーになってほしい。今年はチームの成績も自分の成績もよくなかったけど、明徳義塾出身者らしい「勝てる捕手」になって、「侍ジャパン」にも戻ってほしいですね。

 「名将」とうたわれるゆえんでもある冷静沈着な分析の影にある愛弟子への励まし。そんな明徳義塾馬淵 史郎監督の激励を背に受け、伊藤 光は2016年、オリックス・バファローズの「22番」を背負い、悔しさにまみれた2015年から逆襲への火ぶたを切りにいく。

(取材・構成=寺下 友徳


注目記事
・【12月特集】冬のトレーニングで生まれ変わる

このページのトップへ

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.04.24

春の埼玉大会は「逸材のショーケース」!ドラフト上位候補に挙がる大型遊撃手を擁する花咲徳栄、タレント揃いの浦和学院など県大会に出場する逸材たち!【春季埼玉大会注目選手リスト】

2024.04.24

東京国際大の新入生は、リーグ戦デビューの二松学舎大附の右腕、甲子園4強・神村学園捕手、仙台育英スラッガーら俊英ぞろい!

2024.04.24

【福島】田村、日大東北、只見、福島が初戦を突破<春季県大会支部予選>

2024.04.24

【佐賀】敬徳と有田工がNHK杯出場を決める<春季地区大会>

2024.04.24

【春季四国大会逸材紹介・香川編】高松商に「シン・浅野翔吾」が!尽誠学園は技巧派2年生右腕がチームの命運握る

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.23

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.23

【春季埼玉県大会】地区大会屈指の好カードは川口市立が浦和実を8回逆転で下し県大会へ!

2024.04.21

【神奈川春季大会】慶応義塾が快勝でベスト8入り! 敗れた川崎総合科学も創部初シード権獲得で実りのある春に

2024.04.22

【和歌山】智辯和歌山、田辺、和歌山東がベスト8入り<春季大会>

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.05

早稲田大にU-18日本代表3名が加入! 仙台育英、日大三、山梨学院、早大学院の主力や元プロの子息も!

2024.04.23

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.02

【東京】日大三、堀越がコールド発進、駒大高はサヨナラ勝ち<春季都大会>

2024.04.12

東大野球部の新入生に甲子園ベスト4左腕! 早実出身内野手は司法試験予備試験合格の秀才!