Column

【三年生座談会】小松大谷高等学校(石川)【後編】

2015.10.10

 前編では、下口 玲暢(主将、1番・捕手)、木村 幸四郎(8番・投手)、西田 将大(4番・右翼手)、鈴木 研志(3番・一塁手)、南村 楓河(2番・二塁手)、千田 啓介(6番・遊撃手)の6選手に、昨夏星稜戦での悔しい大逆転での敗戦から、今夏に向けての取り組みについて伺った。
後編では、昨夏星稜戦から1年越しのリベンジをサヨナラ返しで果たした舞台裏や、今彼らが思うことについて迫った。現役球児に託すメッセージとは?


前列左から下口 玲暢主将、木村 幸四郎選手、後列左から南村 楓河選手、千田 啓介選手、西田 将大選手、鈴木 研志選手(小松大谷高等学校)

3点差をはね返してのサヨナラ返し!

鈴木 研志選手(小松大谷高等学校)

 2015年夏、小松大谷石川大会において順調に勝ち進み3回戦を突破。準々決勝の相手は星稜に決まった。
先発マウンドに上がった木村は8回途中で降板するも、粘りの投球で星稜打線を3失点に抑える投球を見せた。

木村 ピンチの場面はたくさんありましたけど、そのたびに去年の悪夢を思い出しました。「去年はここで冷静になれずにパニくって、大量失点を喫したな。今年は常に気持ちを一定にしよう」と自分に言い聞かせながら投げられたおかげで、今年はどんなピンチを迎えても冷静でいられました。3点は取られたけど、自分の投球はできた。去年の自分だったら失点を3点で食い止めることはできなかったと思います。

千田 今年は絶対に幸四郎を一人にしない。そのことをを一番に考え、常に声をかけ続けました。

 9回表、木村の後を受け、マウンドに上がった松下 雄也星稜打線を三者凡退に打ち取る。一年前、星稜に8点のリードをひっくり返された試合では小松大谷が9回表に三者三振を喫していた。そのことを小松大谷ナインはしっかりと覚えていた。

鈴木 去年も9回表が三者凡退でポンポンポンと終わったなと。3点のビハインドでしたけど、「これはいける!」という気持ちが一気に湧きましたね。誰一人として諦めてはいなかったです。

木村 9回裏の攻撃に入る前のみんなの表情がすごく明るくて。これは流れがきてるなと思いました。円陣の輪の中で「今年はおれたちがやり返してやる番だ!」と叫びました。そうしたら先頭打者の下口キャプテンが三塁線を破る二塁打を放って出塁しました。去年の星稜も先頭のキャプテンが出塁して、あの怒涛の攻撃につながっていったのですが、そのことも全員が覚えていました。「これはいけるぞ!」と、一気に押せ押せムードになりました。

僕らの熱い夏 2015

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[page_break:小松大谷戦士の現在の思い]

 3対3の同点に追いつき、なおも無死満塁。打席には4番・西田が入った。

西田 当てにいかず、しっかり振っていこうと言い聞かせて打席に入りました。三塁ランナーの足が速かったので、外野にフライが上げられれば、十分犠牲フライになるだろうと。

 西田が放った飛球はレフトに飛んだ。サヨナラ犠牲フライ。一年越しのリベンジはサヨナラ返しという、ドラマのような形で成った。小松大谷のベンチ、応援団の興奮は最高潮に達した。

鈴木 嬉しさのあまり、千田は試合後に過呼吸を起こし、救急車で病院に搬送されてしまったんです。

一同 そうだった、そうだった!

千田 3点目が自分のエラーで入ったんです。その時点でメンタルにきてしまって…。最終回、みんなのおかげで逆転出来て。あまりの嬉しさに過呼吸になってしまいました…。

 甲子園に挑む選手たちが、極限ともいえる精神状態で戦っていることがリアルに伝わってくるエピソードである。

小松大谷戦士の現在の思い

西田 将大選手(小松大谷高等学校)

 星稜を撃破し、30年ぶりの甲子園出場まであと2勝と迫った小松大谷。しかし、前述の通り、準決勝で石川金沢に敗退。2年続けて甲子園出場を目前で逃がすという形で、3年生の高校野球生活は幕を閉じてしまう。

 最後のゲームから約2か月。現在の思いを各選手に訊ねてみた。

鈴木 今思うと、悔いが残ることの方が多いです。できることならもう一度、高1からやり直したいです。

南村 自分は本気で努力し始めるのが遅かった。一年生の時から試合に出るくらいのつもりでやればよかった。高校野球を一年生からやり直せたら…と思います。

西田 入部してから引退までがすごく早く感じました。特にこの1年がものすごく早かった。もっとできたんじゃないかという思いはあります。高校野球の延長戦を一年でもやらせてもらえるなら、ぜひやりたいです。

千田 最後の夏に自分のプレーができなかったのが悔しい。せめてあと1年、高校野球をしたかったです。

下口 2年続けて甲子園に手が届くところまできていたのに、結局1度もいけなかったことがとにかく悔しいです。でも他のチームでは味わえなかったような経験をたくさんできたとは思います。この経験を大学野球で生かしていけたらなと思います。

木村 甲子園に出れなかったことは本当に残念で悔しい。でも星稜相手にサヨナラ返しができたことで、この1年、苦しんでやってきたことは間違ってなかったと思えました。弱かった自分が、高校野球を通じてずいぶんと強くなれたのかなとは思います。

僕らの熱い夏 2015

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[page_break:現役球児へのメッセージ]

現役球児へのメッセージ

――最後に高校球児へのメッセージをお願いします!

千田 啓介選手(小松大谷高等学校)

千田 野球は9回ツーアウト、最後の一球まで何があるかわからないスポーツだということを高校野球を通じ、実感しました。「最後まで絶対に諦めない!」という強い気持ちを持ってとことんやり抜いてほしいです。

西田 高校野球をやっている最中は練習のきつさもあって、早く引退したいなと思ったこともあったのですが、いざ終わってみると、毎日が無気力のような状態になっています。甲子園を目指した日々はかけがえのない素晴らしい時間だったんだと、今になって思いますし、もっと追い込んでやっておけばよかったという後悔もある。現役の高校球児のみなさんには、今を大事にしてくださいと言いたいです。

南村 楓河選手(小松大谷高等学校)

南村 自分は今年の春の大会が終わってから、本気で自分を変えていこうと思い、真剣に自分と向き合いながら取り組みました。もっと早くやっておけばという思いはあるものの、目標をしっかりと定めて真剣に取り組んだことで、自分を変えることには成功しました。高校球児のみなさんには「本気で変わろうと思えば人は変われる!」と伝えたいです。

鈴木 自分は悔いばかりが残った高校野球生活でした。終わってから後悔しないよう、目標をしっかりと設定して、一日一日を大事にしながら、前向きに、全力で頑張ってほしいと思います。

下口 全国のキャプテンに伝えたいのは、「チームを変えたかったら、まず自分が変わる姿勢を見せる」という事。自分の場合は誰よりも早くグラウンドに出て、一番最後に帰るといったことを徹底するように心がけました。野球のプレー以外の部分でも行動で示すことが大事。キャプテンが変われないチームは絶対に変わらない。ぼくはそう信じています。

木村 どんなにつらいことが起こっても、我慢して前を向いて地道に取り組んでいけば、必ずいい瞬間はやってくるということを高校野球で学びました。高校野球は苦しいことの方が多いと思いますが、自分をとことん信じ、決めたことをやりぬくことで必ずや明るい未来が見えてくる。我慢を忘れず、頑張ってください。

 今回座談会に参加してくれた6名は、大学に進学予定。新たなステージで、高校野球での経験を生かし、さらなる進化に挑む彼らに心からのエールを送りたい。

(取材・写真=服部 健太郎

僕らの熱い夏 2015

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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