Column

アジア各国の逸材を紹介!

2014.09.04

 21歳以下までの国際大会を見る楽しみといえば、将来性のある逸材を見つけることである。
9月1日からタイ・バンコクで開幕した第10回BFAアジア選手権
各国に逸材たちが揃っていた。今回は、将来のトップチームを背負うであろう各国の注目プレーヤーを紹介していきたい。

日本のドラフト候補に挙がる6人の逸材を考察

栗原 陵矢(春江工)

 今回、高校生トップレベルの18名が選ばれているが、その中でドラフト候補として期待されるのは、投手・高橋 光成前橋育英)、飯塚 悟史日本文理)、捕手・栗原 陵矢春江工)、内野手・岡本和真(智弁学園)、外野手・脇本直人健大高崎)、浅間大基横浜)の6名になるだろう。

 初戦のマウンドに登った高橋。大会に入ってからは、「制球に気を付けた」という投球で、最速140キロと控え目な投球内容であった。1か月も実戦から離れてこともあり、決勝リーグでの真価が問われるだろう。

 飯塚も甲子園5試合完投。疲労もあり、まだ全力投球ではなく、中国戦では135キロ前後。甲子園では終始好投を見せてきただけに、スカウトからの評価は不変だろう。

 逆に野手は木製バットを使うので、評価材料としてこの大会の成績は貴重だ。
まず栗原だが、打撃フォームに大きな癖がなく、インパクトまでスムーズに持っていけるスイング軌道の良さが魅力。捕手としてはコンスタントに1.90秒~2.00秒のスローイングを披露。まだモーションが大きいのが課題だが、ここまで代表投手の持ち味を引き出すリードで、勝利に導いている。決勝リーグでは、韓国、台湾と強豪と対戦することが予定される。攻守で存在感を示すことができるか。

 岡本も好調で、1次リーグでの3試合は要所で期待に応える長打で魅せる。大会前のオープン戦でも連日結果を残しており、木製バットにしっかりと順応している。捉えた時の打球の速度、打球の上がり方はとても高校生とは思えず、あとは緩いボールへのタイミングの取り方だけだろう。
また、数字として結果は出ているものの本人としては、「まだ満足いく打撃は出来ていない」と語る。決勝リーグでのバッティングにも注目したい。

 脇本は、まだ自慢の足を生かしきれていないが、直前合宿と比べるとしっかりと捉えた打球が多くなり、中国戦では右中間を鋭く破る長打や、あわやホームランと思わせるファールも放ち、少しずつパワーを発揮している。決勝リーグで打撃、走塁と魅せていきたい。

 浅間は中国戦で猛打賞と少しずつ調子を上げてきており、捉えた時の打球の速さ、角度はやはり非凡なものがある。決勝リーグ以降で、さらに結果を残していきたいところだ。

第10回 BFA 18Uアジア選手権

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パワー野球を見せつける韓国の逸材

オム・サムベク(韓国)

 宿敵・韓国。
今年の韓国は18人中、12名がドラフト指名を受けており、まさにエリート集団。その中でも群を抜いて良かったプレーヤーを5名紹介したい。

 まず投手陣ではオム・サムベクが最も目を惹いた。韓国のエースとして期待されているオム。釜山の地域リーグでは、8試合に登板して、防御率1.68と安定した数字を残している。
右サイドから常時140キロ前後の速球を内外角へ散らしながら、要所でベースギリギリに投げ込むスライダーのキレ味は絶品。高校生の横手として、これほど完成度の高い右腕は、日本にもいないだろう。
まだ細身で、さらに体の力が出れば、球速はより速くなりそうで、将来的には150キロも見込める素材だ。タイプ的には1年目からクローザーを任される三上 朋也(横浜DeNA)を彷彿とさせる。

 他では左腕・チョン・ソンゴンが135キロ前後だが、球速表示以上と感じさせるキレのあるストレートが武器。また今大会、抑え役として登板するチョ・ハヌクは140キロ前後の速球、キレのあるスライダー、遅いカーブをコンビネーションにする右腕。相手の狙い球を外すのが上手く、頭脳的な一面を見せる。

 韓国は伝統的に巨体のスラッガーを輩出する国柄だが、今年も楽しみなスラッガーが2人いる。
まず紹介したいのが4番キム・ミニョク。189センチ96キロとまさに規格外ともいっていい体格で、打席から感じる威圧感はとても高校生とは思えない。彼を見た後だと、岡本 和真でさえ小さく見えてしまう。そんな豪快な選手だ。

 打撃の特徴として、上体を高く掲げ、どっしりと構える。その姿はまるでイデホ(現・ソフトバンク)のよう。キム・ミニョクの始動は極端に遅い。外国人スラッガーに見られる典型的なタイミングの取り方である。
投手のリリースに合わせて始動し、手元までボールを引き付けて弧を描くスイングを見せる。捉えた時の打球は、本当に高校生の打球か?と思わせる破壊力があった。角度が上がれば、十分にスタンドインさせる長打力が備わっており、将来はKBOを代表する強打者になる可能性を持った逸材だろう。

 またファン・デインは176センチ89キロとこちらも体つきがドカベン体型。台湾戦では高めの直球を見逃さず、弾丸ライナーでバックスクリーンに打ち込んだ打撃は素晴らしかった。だが、空振り三振することも多いのが欠点で、日本ならば確実性を求めそうになるが、ファン・デインは三振を恐れずに常にフルスイングをしているので、首脳陣はそれも認めているのだろう。大きく育てる中で、スラッガーとしての才能を開花させることができるか、注目をしていきたい。

第10回 BFA 18Uアジア選手権

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身体能力の優れた選手を輩出する台湾

王玉譜(台湾)

 韓国に負けず、才能溢れる選手を輩出する台湾。韓国はパワーでモノを言わせる選手が多いが、台湾は足、肩など身体能力が高い選手が多い。

 投手陣では左腕の王玉譜が面白い。既に球速は140キロに達しており、はまったときの球威ある直球は魅力。過去に148キロを計測したこともあるようで、将来性十分の速球派左腕。また横滑りするスライダーも魅力。ただ制球力が欠けており、不用意に四球を出すことも多く、そこが課題ともいえる。

 また野手では王崇穎が俊足巧打の二塁手。オム・サムベクから二塁打を放ち、常にバットの芯に当てる技術を併せ持つ。そして強く振り切ることが出来るのも好感で、木製バットへの対応がしっかりと出来ていた。機敏な二塁守備も魅力で、今後さらなる上のレベルでの活躍が楽しみな選手であった。

 

その他の国の逸材たち

李文冠(中国・左)、AJ・フランシスコ(フィリピン)

 ここまで3か国の選手紹介を行ったが、それ以外でも光る選手がいたので、紹介したい。

 まず中国代表では李文冠が良かった。彼の良さはしなやかな腕の振りを生かした投球フォーム。球速は125キロ前後だが、さらに体が出来れば、135キロ~140キロまで速くなる可能性を持っている。今年の中国代表は華僑城中学の単独チーム。進学校のため、日本、韓国のようにプロ野球選手を目指しているわけではない。もしプロ野球選手を目指したいという志を持った時、国内でも、中国を出ても、腕を磨いてほしい逸材だ。

 また、決勝リーグに進出したフィリピンの中心選手はAJ・フランシスコ。
1年前にアメリカ留学をしていたが、そこで野球部に所属し、年間160試合を戦って腕を磨いた。日本戦では高橋光成のストレートを打ち返し、センター前ヒットを放った。
また中国戦ではリリーフとして登場し、最速128キロの直球、スライダー、カーブのコンビネーションで、勝利に導く活躍を見せるなど、投打で高い才能を披露した。

 チームを率いるフィリピンの高橋将人監督は、
「16歳にしてはこの野球センスは素晴らしいですよ」と絶賛。今後もトップチームで代表入りする可能性を持った逸材として注目していきたい選手だ。

 来年は、IBAF 18Uワールドカップが、日本で開催される。そこで世界中の逸材を探してみるのも面白そうだ。

(文=河嶋宗一

【試合レポートもチェック!】第10回 BFA 18Uアジア選手権 試合レポート一覧

第10回 BFA 18Uアジア選手権

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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