Column

【三年生座談会】小松大谷高等学校(石川)

2014.09.19

僕らの熱い夏


左から多田君、石田君、中村君(小松大谷高等学校)

 打倒・星稜を目指した小松大谷ナイン。エース山下 亜文を中心に、攻守ともにハイレベルなチームに成長を遂げた小松大谷2013年秋季北信越大会2014年春季北信越大会に出場。迎えた石川大会では順当に勝ち進み、決勝に進出。決勝では9回裏、8点差を逆転されて、惜しくも甲子園を逃した。とはいえ、この3年間で、星稜を最も追い詰めたチームとして大きな印象を残したのは間違いない。そんな小松大谷ナインからこの夏、また3年間を振り返っていただいた。

今夏の石川大会決勝戦を振り返って

 小松大谷の山下君、中村君、石田君、多田君にこの夏の振り返りをしていただきました!

――3年間で一番印象に残っていることを教えてください。

山下 決勝で負けてしまったけど、あの試合です。

中村 星稜戦全体。特に9回です。

石田 星稜とああいう試合ができたこと自体がとてもうれしいです。

多田 星稜戦で岩下から(2回一死一、三塁の場面で)タイムリーを打てたことです。

――星稜とはに続いて3度目の対戦(過去2回は1勝1敗)になります。特別な意識はありましたか?

中村 甲子園に行くためには遊学館星稜もどうせ倒さなきゃいけないので、それは全然なかったです。

山下 星稜は、ライバル意識は一番あったチームだけど、変に意識することはなかったです。岩下は県ナンバーワンと言われてるピッチャー。自分もバッティングは自信あるんで、打ち勝ちたいと思ってました。

――その通り、2回に5得点するなど5回までに8得点。9回表を終わって8対0と一方的にリードしました。甲子園は見えましたか?

中村 それはあんまりなかったです。

多田 自分は8回ぐらいで「もういけるかな、だいたい決まったやろ」と思いました。

石田 甲子園というより、「勝てた」という感じですね。

――9回表の攻撃が三者三振で終わった(9回3人目の打者で見逃し三振)のは気になりましたか?

多田 序盤も9回もどっちも岩下の球は速かったですけど、最後は気持ちが伝わってきました。手が出なかったです。

山下 あれは(岩下)大輝の気合だと思います。ヤバい、何かあるぞと思いましたね。

――それが、9回裏にまさかの9失点。悔いが残る場面は?

多田 同点タイムリー(二死一、二塁で4番村上が左中間に安打)で、一塁走者がサードでセーフになったんですけど、タッチをもっとしっかり、流さずにいっておけばよかった。普通にこっちがランナーより先にタッチだったんで、グローブを上げたら「セーフ」と言われました。もっとしっかりタッチしてからアピールすればよかったです。

第4回 石川大会準V・小松大谷 宮口 昇キャプテンに聞く

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[page_break:9回の土壇場で…]

9回の土壇場で…

山下君(小松大谷高等学校)

――センターから送球した山下君はどう見えた?

山下 (タイミングは)アウトだったと思います。これはアウトにできると思って投げたんですけど、運ですね。セーフはセーフなんで。ただ、自分らも舞い上がってしまってて、追い詰められてる状態だったんで、ヤバい、ヤバい、ヤバい、ヤバいってなってて。スタンドの星稜側がワーワーワーワー言ってたので、ああいうのは完璧アウトじゃない限り審判も手を上げないよなと。

――山下君自身の悔いは?

山下 自分のトレーニング不足で足がつったことですね。7回ぐらいからヤバかった。ずっとつってて、伸ばしても治らなくなって交代しました(9回3人目の打者途中で自ら降板)。

 投げる身体じゃない。これで投げてても迷惑になるし、全然まだいいピッチャーがいるんで、代わって抑えてもらおうと。3年間でやり残した点はトレーニングですね。自分の身体をわかってなかったことが後悔。過信しすぎました。これだけやれば大丈夫かなって。ランニングとか、ちょっと抜いたっていいやっていうのはありました。

 自分では(トレーニングを)やってきた。でも、夏は厳しいなって感じです。まぁ、自分がやったことなんでしかたないです。またこれをバネにしていくって感じですね。

――中村君の悔いは?

中村 9回一死一塁で村中が打ったショートゴロ(併殺崩れ)。あれですね。(ショートが2年生なので)あまり言いたくないんですけど、(6-4-3ではなく、ショートが自らベースを踏む)6-6-3かなぁと。(平凡なゴロを)滑って捕ったんでそれでまずびっくりして、捕ってそのまま流れでいくかなと思ったんですけど。ああいう場面になったら、2年生なので難しかったかなと。声をかけてあげればよかったなと思いました。

――あの9回、どのあたりから「これはヤバい」という感じになりましたか?

中村 岩下のホームランです(4点入ってなおも無死一塁から2点差に迫る2ラン)。普通の考えなら、ホームランでランナーがいなくなるから守りやすいってなるんですけど、ホームランであと2点差。打った時点で球場がワーってなって、ちょっとヤバいかなと思いました。

第4回 石川大会準V・小松大谷 宮口 昇キャプテンに聞く

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[page_break:試合終了後の思い]

試合終了後の思い

中村君(小松大谷高等学校)

山下 (星稜の)応援は聞こえましたね。でっかい声で。

石田 確かに。9回はちょっと雰囲気がすごいなと。自分はホームランの後、横山のツーベースで「あー、ヤバい」と思いました。

――あのときは外野手の守備位置がかなり浅めでした。

石田 打たれないと思ってました。あとは、「早くアウトがほしい」という感じで、どうしても焦ったと思います。

――焦る気持ちから、自然と前に出てしまう?

石田 そんな感じです。

――伝令も2度出ていますが、どうにもならなかったですか?

多田 「落ち着いていけ。(アウト)1個ずつ取ろう」と言われたんですけど……。

中村 伝令が出ても、勢いは止められないし、止まらなかったです。

――試合が終わった瞬間は?

一同 何も考えられなかったです。

――あれから一か月たちますが、あの試合のビデオは見ましたか?

多田 見たり見なかったりです。見るとしても8回で切りますけど。

石田 全部見ました。「すごい試合」という感想しかなかったです。

山下 見ましたけど、最終回は見てないです。自分の表情ですか? いつもと同じだったと思いますよ。楽しんでましたから。

――自分たちが立てたかもしれない甲子園。星稜の試合は見ましたか?

多田 星稜の甲子園を見て、うらやましかったです。甲子園は小さい頃からの夢。出たかったし、あと一歩だったので。

石田 自分も目標としてた場所だったのでやりたかったです。

中村 星稜八戸学院光星の試合(試合レポート)を見に行ったんです。アルプスで見てたんですけど、いいなーって思いました。

第4回 石川大会準V・小松大谷 宮口 昇キャプテンに聞く

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[page_break:3年間で成長したことは?]

3年間で成長したことは?

石田君(小松大谷高等学校)

――残念ながら最後は笑って終わることはできませんでしたが、自分自身、3年間でもっとも成長した部分はどこですか?

山下 監督に一番怒られたのは態度です。エラーしてフテったり、自分のフォアボールでフテったり、そういうのがあって、「そんなんじゃ、やっていけないぞ」と。

中村多田石田 エラーしたら怖かった(笑)。

山下 それが、だんだん直っていきました。

多田 自分は最後の夏の大会にひとケタ(の背番号)をつけて試合に出れたことが成長ですね。
3年春の時点で夏は出れんかなと思ってたんです。は背番号6だったんですけど、直前で2年にショートを取られたので。

石田 多田はサボりながらがんばってました(笑)「もっとやれよ」って言ったんです。そしたら、「おぅ」って(笑)

多田 冬から春らへんはちょっと……(苦笑)

――気を取り直して……(笑)中村君は?

中村 自分は全部成長しました。小さいこととかを大事にできるようになりましたね。靴をしっかり揃えるとか、いろいろですね。最初はそんなことは気にしなかったんですけど、やっていくうちに感謝したり、物を大事にするようになりました。

石田 自分は(星稜戦)ああいう試合を経験できたので、どんなことがあっても受け入れる気持ちができた。そこが成長したことだと思います。それまでは、逃げるというか、「まだ次があるから」という感じでした。もうちょっと早くそういう気持ちになってたら?結果が違ったかもしれないですね。

――3年間で楽しかった思い出は何ですか?

石田 毎日楽しかったです。特に遠征は毎日楽しい。

山下 遠征でみんなで食べてる夕食が楽しかったよな。

石田 一発ギャグとかやるんですよ。

――誰がやるんですか?

石田中村 (ニヤニヤしながら、多田君を指さす)

多田 モノマネをやるんです。ETのモノマネ。あとコーチのモノマネとかもしました。

第4回 石川大会準V・小松大谷 宮口 昇キャプテンに聞く

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[page_break:思い出のドームラン]

思い出のドームラン

多田君(小松大谷高等学校)

――逆に、一番きつかったことは何ですか?

多田 「山」とか「ドームラン」ですね。

――山というは?

石田 学校の裏の山を走るんです。11キロ。

多田 11キロ? それだけしかないん? 坂がむちゃくちゃ多いんですよ。

――ドームランというのは?

石田 (学校近くにある)[stadium]小松ドーム[/stadium]の周りを走ります。

中村 距離とかじゃなくてタイムを切れるかどうかなんで、きついんですよ。

――その2つのメニューは冬にやるんですか?

石田 冬が多いんですけど、季節関係なくいきなりきます。ピッチャーは夏もありました。

――多田君はそこで抜いてた?

多田 いや、サボったというより、ふざけてました。走りながら、自分を抜いていくヤツを笑かしたりして。

中村 だから春出れねーんじゃん!(笑)

――では、最後に甲子園の夢を託す後輩たちへのメッセージをお願いします。

中村 自分たちの目標は甲子園で校歌を歌うことだったんですけど、決勝で負けてしまった。だからこそ、甲子園に出るとか、1勝だけで終わってほしくない。1回だけじゃなくて、3回ぐらい歌ってもらいたいです。

多田 学校の周りにはあまり誘惑されるものもないので、野球に集中できる(笑)。打つことやったり、守ることやったり、数字で出るところじゃなくて、もっと走りとかあいさつとか、そういうところをしっかりやってほしい。そうすれば結果もついてくると思います。技術より、態度とかそういうところをしっかりやってほしいと思います。

石田 今できることを精一杯やってほしいです。いつもつらいと思うんですけど、決勝の舞台を考えれば全部乗り越えられると思う。甲子園を目標にして頑張ってほしいです。

第4回 石川大会準V・小松大谷 宮口 昇キャプテンに聞く

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西野監督が語るこの夏

西野監督(小松大谷高等学校)

■夏の大会を終えて

 何が9点になったのか。それを考える毎日です。あの9点がどうだと言われて、すぐに答えを出せる人がいるなら僕も聞いてみたいです。夏休みの終わりには東京遠征に行き、亜大に宿泊させていただきました。大学生があそこまでやっている。生田監督の指導を近くで見て、学ぶことがたくさんありました。

■指導方針

 高校野球らしく、締まるところは締まって、かつ人の表情を残すというのはすごく思っています。失敗して怒ってくちゃくちゃにしたら、「失敗したくない」という本能が出てしまう。それで野球をやらせるのが嫌なんです。

 失敗はダメなんですけど、どうしたら失敗をしなくなるのかを考える方が大事かなと。そんなことを高校生に行ってもらちがあかないという人もいますけど、それは指導者が努力していないということだと思います。
ダメなことをダメで否定するのはいいと思うんです。それを人間否定までするじゃないですか。僕はそれはおかしいと思います。

■新チーム

 に出ていた2年生が残っているので、(彼らは)「普通にやっていれば行けるだろう」と思っているんじゃないですかね。周りもそう言いますし。でも、現状では来年夏の大会で決勝に行くイメージができません。そこにたどりつけるような何か武器を身につけないといけないと思います。そこに「何が9点になったの?」というのをいかに織り交ぜられるかだと思います。

第4回 石川大会準V・小松大谷 宮口 昇キャプテンに聞く

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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