千葉ロッテマリーンズ 清田 育宏選手の『スピードの高め方』
千葉ロッテマリーンズには、「12球団一の外野陣」と称される有力選手が集う。その中で今年レギュラー確保に執念を燃やしている清田 育宏選手。2010年シーズンにはルーキーながら日本シリーズで大活躍、チームの日本一の立役者ともなった。あのときのフィーバーを再び――。スピードを重点課題として現在鍛錬に勤しんでいる清田選手の今に迫る!
スピードを高める全5メニューのまとめ
スピードを高める全5メニューのまとめ
1・ハムストリングス
スキップしながら足を高く上げよう
2・バックタッチ
腰の後ろで手を組み、かかとで手をタッチするように蹴ろう
3・クロスタッチ
ジグザグに、上半身をひねりながら、前方へジャンプ!
片足で着地しよう!
4・ダッシュ&バック
ダッシュをし、合図で前方を向いたまま後ろ向きにダッシュ!
再度合図で、前方へダッシュを繰り返そう
5・ダッシュ&ジャンプ
ダッシュをし合図で上方へジャンプ!
着地からダッシュを繰り返そう
<次のページでは、清田選手がスピードトレーニングを語る!>
清田選手が実践するトレーニング
――今年はキャンプ前の自主トレ期間中、どのようなメニューをしてこられましたか?
千葉ロッテマリーンズ 清田 育宏選手
清田育宏選手(以下、「清田」) 自分は昨年、体重を10kg落としたんですね。プロに入って1年目はいい結果が出たんですが、その後は思うような数字が出なくて、なにか目に見える変化がほしかったんです。それもあって体重を落としたんですが、自主トレ期間中は体重をキープすることを心がけてました。常に続けているのはランニングです。距離や時間は気にせず、「走った」という充実感を感じられるまで走ってます、毎日。だいたい走り出せば30~40分は走ってます。
――プロ1年目、2010年シーズンは日本シリーズにも全試合出場して30打数10安打の1本塁打6打点。新人選手のシリーズ通算打点タイ記録で優秀選手賞にも輝きました。
清田 自分にとっても意義深いシリーズでした。1戦目第1打席で中日の先発・吉見 一起投手からライト前へヒットを打って『この日本シリーズ、いけるかも』と自信を持ちました。それまでは打てないとすぐに代えられて、不安も大きかったんですけどね。今振り返ると、とにかく必死だったな、と。その後、年を経るにつれプロ野球の難しさを感じています。毎年新人が入ってきて、見えないプレッシャーも多々あって。今の方が考え方もレベルも向上したと思いますけど、同時に厳しさも実感しています。
――毎年厳しい戦いを続ける中で、オフのトレーニング期間はどのように考えて過ごされましたか?
清田 昨シーズンと同じ失敗はしたくない、と考えながら、ランニングやトレーニングからキャッチボールまで、ひとつひとつの動作を確かめていました。事前に練習と休みの予定を立てておいて、その通りに消化していくんです。予定通りにいかないと、自分の中で気持ちが悪くなっちゃうんですよね(笑)。もし予定通り練習できなかった場合は、夜に走り込んだりもしました。
――ウエイトトレーニングなどにも励んだのですか?
清田 やりますけど、重い負荷はかけません。軽い重量で回数を多くしたり動作を速くしたりしています。重い負荷でトレーニングして筋量をつけすぎると、強くはなると思いますがスピードを落としてしまいかねません。自分はどちらかというとスピードがほしいので。
――スピードを意識したトレーニングが多いということでしょうか?
清田 自分は外野を守っていますから、走れないより走れた方が守備範囲も広くなります。スピードがあることで届く打球もありますしね。バッティングにしてもキレを出すためにスピードの要素は不可欠ですから。基本的なメニューとしてはダッシュですが、長距離と短距離を走り分けています。あとはラダーとかを使って細かな動きを取り入れるようにしています。
シーズン中でも疲労が蓄積されてくるとバットが重く感じたり、全身がダルく感じたりします。そういうときは試合前に短いダッシュをするんです。一歩目の集中力と一瞬の爆発力を意識することでキレを取り戻すんですね。
――「休養」もトレーニングの大事な一要素と言われますが、意識して休むようにしていますか?
清田 たしかに休むことも大事です。でも自分はどちらかというとやってしまうタイプ(笑)。誰かがトレーニングしているのを見てしまうと引っ張られて、けっこう限界までやってしまう。でも一方で、自分のやったことに自信を持って「今日はこれだけやったから終わり!」と気持ちよく終われれば、その後充実した心持ちで休めますから。要は1日1日、ちゃんと目標を設定してクリアしていけば、オーバーワークに陥ることはないのではないでしょうか。
[page_break:オススメのスピード系トレーニング]オススメのスピード系トレーニング
声を掛けながらスピードトレーニングの指導をする清田 育宏選手
――ちなみに、市立柏高校(千葉)時代はどのようなトレーニングをしていましたか?
清田 当時はピッチャーだったので、走り込んでました。夏場でも100m走を100本とか。肩を鍛えるために遠投もよくやっていましたね。ピッチャーでしたけどバッティングも好きで、飛距離を伸ばすためにロングティーを打ちこみました。まずは形を気にせず思い切りスイングする。アッパースイングとかダウンスイングとかは考えず「飛ばす」ことを第一に打ち続けていると、だんだん振りがシンプルになって形ができあがっていくんです。今考えると、そこでもスピードが重要でしたね。走るスピードはもちろんですが、投げる際の腰の回転、打つ際のバットのヘッドスピード……、プレーすべてにスピードは関わってきます。
――清田選手が重視するスピードですが、高校生にオススメのスピード系トレーニングはありますか?
清田 月並みですがダッシュですね。毎日練習後に塁間ダッシュを5~10本走ってみてはいかがかと。スピードが鍛えられるだけでなく、バランスがよくなることもメリットといえます。野球ってダイヤモンドを左回りするスポーツで、右投げだと身体の右側は酷使する一方で左側はあまり使わなかったりと、最終的にバランスが偏るんです。そのバランスの歪みを矯正するためにもダッシュはとてもいいメニュー。毎日必ず“全力で”続けることが大事です。軽く10本走るなら、全力で5本走った方が効果は出ますよ。
――では、プロを目指す高校球児たちにメッセージをお願いします。
清田 一番の近道は常に「上手くなりたい」という気持ちを失わずに続けていくことです。技術はもちろん向上させなければいけないけれど、結局のところ、野球のことをいつも第一に考えられる精神力が最重要だと思います。野球を続けていれば、うまくいかない時もあるし、気持ちが萎えるときもあるかもしれない。そういうときは、たとえば「甲子園に行きたい!」という高く遠い目標を掲げるより、1日1日の目標を立ててみてください。日々の目標の延長線上に大目標があるんだ、と心底理解できれば毎日の練習が楽しくなるはずです。自身、野球がイヤになったことが1度もなかった…といったら嘘になりますけど(笑)、そこを乗り越えたから今ここにいるわけで。
――楽しむにも強さが必要、ということですね。
清田 自分はプロに入ってから野球の難しさを知った気がします。プロは結果を出さなければなりません。といっても1シーズンが長いので一喜一憂しているわけにはいかない。性格としては調子に乗ったら強いんですけど、それを144試合続けられるだけの精神的強さをさらに持たなければいけないな、と感じています。やはりすごいと感じる選手は、1本ホームラン打ったからといって、1回三振したからといって動じない。自分も大人にならなきゃいけないと感じています。
――今年のご活躍を楽しみにしています!
清田 今年は充実した自主トレもできましたし、これまでとは違う手ごたえがあります。外野手ですから打率.280~.300ぐらいを打って常にチームの主軸としてプレーしたいですね。そしてもう少し野球を楽しむ!今年はやります!
(インタビュー:伊藤 亮)