Column

第96回全国高等学校野球選手権高知大会展望

2014.07.10

「明徳義塾5連覇」包囲網の中で


2012年夏
 ベスト4 明徳義塾

2013年春
 ベスト4 高知
       2回戦<初戦>敗退  土佐(優勝した浦和学院に0対4)

2013年夏
 ベスト8 明徳義塾

2014年春
 ベスト8 明徳義塾

 上に記したように近年、高知県勢の甲子園成績は目覚しいものがある。その好成績を支えているのは、やはり4年連続で夏の甲子園に歩を進め、着実に2000年代に7年連続復活への道程を歩んでいる明徳義塾である。

 しかし、3年連続で明徳義塾の前に「決勝戦1対2」で涙を呑んでいる高知をはじめ、他校も彼らの後塵を拝するわけにはいかない。今大会のテーマは間違いなく「明徳義塾5連覇」阻止。この展望では、その「包囲網」を担う選手たちと、この包囲網をかいくぐろうとする王者の姿をブロック別に分け、あますことなく紹介していきたい。

Aゾーン/第1シード:明徳義塾


(左)岸 潤一郎(明徳義塾・投手)、(右)南 武志(土佐・捕手)

「これは少なくとも準々決勝から3連投させなくてはいけないな」
明徳義塾・馬淵 史郎監督は決まった組み合わせを見て、早くも決断を下した。その対象とは、もちろん最速146キロの手元で伸びるストレートと、全てのポジションを守れる器用さと、精度の高さ、球種の多彩さでは高校3年生右腕トップクラス。高校通算本塁打も21本を数える岸 潤一郎(3年主将・投手・右投右打・175センチ75キロ・西淀ボーイズ<大阪>出身・U18アジア野球選手権代表候補)のこと。当の本人も「僕が投げないといけないですね」と、心身ともに準備は万端である。

 7月6日の練習試合・済美(愛媛)戦では8回参考ながら与えた走者は失策と四球のみのノーヒット投球。夏に備えた投球バリエーション増加にも余念はない。

 ただ、明徳義塾は岸に継ぐ投手陣も強力。春季四国大会デビューを果たした球持ちのよい大型左腕・平石 好伸(1年・左投左打・188センチ76キロ・浜寺ボーイズ<大阪>出身)に、県総体デビュー・130キロ台後半の力強いストレートで押す國光 瑛人(1年・右投右打・176センチ73キロ・龍野ボーイズ<兵庫>出身)は以後の練習試合でも実績を残している。ここに七俵 龍也(2年・右投右打・178センチ68キロ・飯塚ボーイズ<福岡>出身)が加わった4人で4試合を乗り切る算段だ。

 ここに来て6月中まで激烈なチーム内競争が繰り広げられた打線も「調子はいい」と語る右打ちの達人・森 奨真(3年・二塁手・170センチ72キロ・右投右打・葛城ボーイズ<奈良>出身・U18アジア野球選手権代表候補)が6番に座り、大西 主将(3年・三塁手・右投右打・173センチ64キロ・伊予三島リトルシニア<愛媛>出身)が9番に入る真打順が確立された模様。
「まだ大会に入ってからも練習ができる。3年生対2年生の紅白戦とかをやって鍛えていくよ」と室戸と高知清水の勝者と対戦する7月22日の初戦へ向け、名将には全く緩みはない。

 このように王者が警戒心高く臨む要素の1つには土佐の存在があるからだ。県総体では腕を下げて課題の制球力が改善された久保田 周(3年・投手・右投左打・183センチ83キロ・土佐中出身・2011年Kボール高知県選抜メンバー)と主将・南 武志(3年・捕手・右投右打・180センチ83キロ・安田町立安田中出身・2011年Kボール高知県選抜メンバー)の昨春センバツ経験バッテリーがそろって特大アーチを放つなど、春先から「昨年よりは打てるチーム」と西内 一人監督が見立てていた通り、打線の調子は上向き。

 あとは林 龍矢(2年・投手・右投右打・173センチ60キロ・高知市立一宮中出身)や、松原 頌季(1年・左投左打・174センチ64キロ・土佐中出身)らが投打の中心となる久保田の精神的負担を軽減できるようになれば、明徳義塾と対戦しても互角以上の戦いが展開できそうである。

 他チームも決して侮れない。サウスポー捕手・杉本 郁弥(3年・捕手・左投左打・173センチ65キロ・室戸市立室戸中出身)が最後の夏に剛球復活を期す細川 和晃(3年・投手兼中堅手・右投右打。178センチ72キロ・室戸市立吉良川中出身)をリードする室戸と、春の県大会では昨秋四国大会出場の高知追手前を完封した村井 克誌(3年・投手・右投右打・173センチ62キロ・土佐清水市立下川口中出身)がエースの高知清水と激突する[stadium]春野[/stadium]での開幕戦は大会屈指の好カード。

 また、身体能力高い選手がそろう宿毛工業や幡多農業といった幡多地区勢や、超大型右腕・大﨑 貴晴(3年・投手・右投右打・193センチ78キロ・高知大学教育学部附属中出身)がエースナンバーを背負う高知丸の内も「1勝」の上を狙っている。

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[page_break:Bゾーン/第4シード:高知商]

Bゾーン/第4シード:高知商


(左)大塩 浩史(高知商・捕手)、(右)野村 文太(中村・一塁手)

 昨夏の新人戦から今年5月の県総体まで4強以上を経験した学校が8校中4校。他にも実力者がそろった激戦ゾーンである。

 第4シードの高知商は県体4強、雨天打ち切りで明徳義塾高知中央高知と共に4校同時優勝でシード権を確保。8年ぶり23度目の甲子園への第1ハードルを突破した。

 春季県大会まではエース・島田 淳(3年・右投右打・182センチ76キロ・高知市立愛宕中出身・2011年Kボール高知県選抜メンバー)の状態に大きくチームが左右されていたが、県総体では強肩にリード・キャッチング面での成長が加わった大塩 浩史(3年・右投右打・177センチ75キロ・吹田リトルシニア<大阪>出身)がうまく島田をサポート。「冬場のトレーニングで力強さが出てきた」(正木 陽監督)打線も小松 稔(3年主将・三塁手・175センチ72キロ・右投右打・高知市立城北中出身・2011年Kボール高知県選抜メンバー)、手島 悠登(3年・右翼手・173センチ72キロ・右投左打・土佐清水市立三崎中出身)が組む中軸が軒並み長打を連発している。

 ただ、高知高専との初戦を突破できたとしても彼らには難敵が待ち構える。春季県大会4強の高知中村は豪快なスイングが光る4番・野村 文太(3年・一塁手・右投左打・180センチ68キロ・宿毛市立宿毛中出身)の前後を左打者たちがそれぞれの特徴を活かしたバッティングで固める「巧打」のチーム。昨秋県大会4強高知東は右ひじ手術明けのエース・片岡 昴太郎(3年・投手・右投右打・180センチ65キロ・高知市立大津中出身)をチーム全体で支える「全員野球」が持ち味だ。

 また、今春・須崎工業から転任した常廣 直樹監督の下「具体性」をテーマに取り組んでいる昨秋四国大会出場校の高知追手前高知東を粘りで下した昨秋県大会3位決定戦の再来を狙う。

 さらに、高知東と初戦で対戦、一昨年秋高知南監督として明徳義塾を破るジャイアントキリングを成し遂げた岡﨑 衛監督率いる伊野商業は、攻守にセンスあふれる掛水 歩(3年・投手兼遊撃手・右投右打・170センチ65キロ・佐川町立佐川中出身・2011年Kボール高知県選抜メンバー)など、実力者が潜む。

 一方、高知追手前と初戦で対戦、2007年に室戸センバツベスト8に導いた横川 恒雄監督率いる梼原は、早くも県総体で安打を放った期待の強肩1年生・小川 大輔(1年・三塁手・右投右打・177センチ68キロ・宿毛市立宿毛中出身)など、下級生にも好選手が多い。両者がもし2回戦で対戦すれば、昨夏の1回戦以来となる「師弟対決」が実現することになる。

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[page_break:Cゾーン/第3シード:高知中央]

Cゾーン/第3シード:高知中央


(左)矢野 克磨(高知工業・中堅手)、(右)坂田 直輝(高知中央・遊撃手)

 高知中央のタレントは明徳義塾高知にも決して引けを取らない。まず、投手陣は右では最速140キロ超えコンビの谷 悠大(3年・投手・右投右打・186センチ78キロ・倉敷市立新田中<岡山>出身)、橋口 幸聖(3年・投手・右投右打・180センチ70キロ・レッドスターベースボールクラブ<大阪>出身)に安定感のある近藤 浩史(3年・右投右打・173センチ75キロ・高知市立城北中出身)。左には変則サイドから130キロを超えるクロスファイヤーを投げ込む日隈 ジュリアス(2年・投手・左投左打・183センチ72キロ・北谷町立桑江中<沖縄>出身)。

 打撃陣も育英(兵庫)から一昨年10月に転校後初の公式戦となった春季県大会で早くも50メートル5秒9の快速を見せ付けた坂田 直輝(3年主将・遊撃手・182センチ73キロ・全播磨硬式野球団<ヤング・兵庫>出身)や、1年夏から主軸を張る麻生 涼(2年・三塁手・右投左打・180センチ78キロ・倉敷南ボーイズ<岡山>出身)など厚みがある。ここに39歳の青年監督・重兼 知之監督の熱さが選手たちに伝播し、同校の課題である「緻密さの欠如」が克服できれば、初の甲子園出場は十分可能だ。

 ただ、初戦の相手・高知工業は県総体・明徳義塾戦で1年生左腕・平石から豪快にレフトスタンドへ運んだ3番・矢野 克磨(3年・中堅手・右投右打・172センチ67キロ・梼原町率梼原中出身)をはじめ、ストレートを振りぬく打力には定評のあるチーム。継投策を誤れば、たちまち窮地に追い込まれる可能性も捨てきれない。

 このブロックには個性的な選手がそろった。高知海洋中山 聖吾(3年主将・中堅手・左投左打・180センチ79キロ・須崎市立須崎中出身・2011年Kボール高知県選抜メンバー)、2塁送球2秒切りの強肩を活かし捕手からマウンドに場所を移した高知小津小松 凌(3年・投手・右投右打・174センチ72キロ・芸西村立芸西中出身)、バランスが整えば一気に開花の予感がある高知西安藤 誉気(3年・投手・右投右打・189センチ73キロ・いの町立伊野南中出身)…。

 その筆頭格にあるのは高知中央の反対の山からまずはベスト4を狙う岡豊主将の股川 翔任(3年・右翼手・右投右打・177センチ76キロ・高知市立愛宕中出身)である。豪快に見せて最短距離で回すスイングスピードの速さと強肩、そしてチャンスに滅法強い勝負を読む力は、夏は継投策を強いられそうな山中 直人監督にとっても頼もしい存在となりそうである。

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[page_break:Dゾーン/第2シード:高知]

Dゾーン/第2シード:高知


(左)松浦 友人(高岡・窪川・中村高校西土佐分校・城山連合チーム・投手)、(右)酒井 祐弥(高知・投手)

 本来であれば明徳義塾の対抗馬と言っていいはずの昨春センバツベスト4高知だが、最速141キロ右腕の酒井 祐弥(3年・投手・右投右打・178センチ78キロ・高知中出身・2011年Kボール高知県選抜メンバー)、和田 恋(現巨人)の後継者たる土居 弘洋(3年・遊撃手・右投右打・176センチ73キロ・高知中出身・2011年Kボール高知県選抜メンバー)、センバツでの2試合連続決勝適時打が記憶に新しい上田 隼也(3年・中堅手・右投右打・171センチ71キロ・高知中出身)といった経験豊富な選手たちがやや躍動感を欠いていることが気にかかる。

 一方、右打者の外角から入るシュートが持ち味の鶴井 拓人(2年・投手・左投左打・173センチ66キロ・門真クレージーボーイズ<軟式・大阪>出身)や、体をぶつけるようにしてボールに向かっていく岡田 悠吾(2年・三塁手・右投右打・164センチ64キロ・高知中出身・2012年Kボール高知県選抜メンバー)といった2年生が主力を確保したことは明るい材料。「明徳義塾との精度の差を追求していく」(島田 達二監督)彼らが明徳義塾を超える段階に達するかが、先輩たちが3年間流してきた涙に報いるためのポイントになるだろう。

 その高知と初戦で当たる土佐塾はサウスポー三塁手・中村 太優(3年・三塁手・左投左打・160センチ57キロ・土佐塾中出身・2011年Kボール高知県選抜メンバー)をはじめ、硬式野球部転向後1期生となる3年生選手10名・マネジャー1名が中心となってチームをまとめる。想いの強い彼ら相手に第2シードも難しい闘いを強いられそうだ。

 また、高知南一昨年秋の県大会準々決勝で明徳義塾岸 潤一郎から勝利した経験者たちが最後の夏を迎える。主将の海治 光昭(3年・中堅手・右投右打・172センチ63キロ・高知県立高知南中出身)を中心に再び強豪食いを狙いたい。

 ここには県総体1回戦で明徳義塾に0対2と健闘した宿毛と、昨秋は準々決勝で高知を破り県大会準優勝四国大会出場の高知東工業という好カードも組まれた。宿毛エース・三宅 良太(3年・投手・右投左打・178センチ68キロ・大月町立大月中出身)に対し、甲藤 竜之佑(3年・右翼手・右投右打・178センチ74キロ・香美市立鏡野中出身)をはじめミート力の確かな高知東工業打線がいかにアジャストできるか。そして右ひじに痛みを抱える高知東工業エース・東野 幸哉(3年・投手・186センチ86キロ・高知市立愛宕中出身)の回復状況が勝敗の分かれ目となりそうである。

 そして全国的にも注目を集めるのが、今春県大会でベスト4の大躍進を見せた高岡・窪川・中村高校西土佐分校・城山連合チーム(以下、4校連合)の動向であろう。

 捕手も難なくこなす指先の器用さと、下半身の粘り、球持ちのよさは将来性抜群の左腕エース・松浦 友人中村西土佐3年主将・投手兼捕手兼中堅手・左投左打・173センチ73キロ・四万十市立西土佐中出身)は6月8日の練習試合でノーヒットノーランも達成。連合チーム主将を務める山本 寛治(高知高岡3年主将・捕手兼投手・右投右打・177センチ79キロ・高知市立旭中出身)とのバッテリーも、全く違和感はない。

 一方、長打力はないが走塁を軸に組み立てた攻撃も、練習試合では数多くの得点を生み出している。松浦、山本、佐竹 通窪川3年主将・三塁手兼右翼手兼投手・右投右打・180センチ72キロ・窪川町立窪川中出身)が組む中軸は公立高の中でも上位に入る。

 昨夏高知商業を下すなど結束力には定評のある高知農業との初戦は、激しい試合になることは確実だが、ここをもし突破できればに大敗を喫した高知と対戦できる場所、準々決勝、その上への躍進も期待できる。

(文:寺下 友徳)

■2014年 第96回高知大会こちらから(高知県高野連HP PDF)

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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