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第96回全国高等学校野球選手権徳島大会展望

2014.07.05

 東 湧梧(現JR東日本)、日下 大輝(現:法政大1年)、河野 祐斗(現:明治大1年)……。後藤田 崇作(現:関西学院大2年)がエースだった一昨年に続き、絶対王者・鳴門が君臨した2012~2013年の徳島県高校野球。が、昨秋の県大会王者は生光学園。続く四国大会では徳島池田が生光学園準決勝で破り、準優勝センバツ出場を果たし1勝。そして今春鳴門渦潮が県大会優勝・四国大会準優勝。「2013~2014」は戦国時代再来の予感が漂う。

 では、昨年に引き続き31校が参加する「第96回全国高等学校野球選手権徳島大会」(7月12日(土)10時開会式・7月27日(月)13時半・決勝戦開始予定。全試合を[stadium]オロナミンC球場[/stadium]<鳴門市で開催>)の王者はいったいどこに? 今回も4ブロック別に展望を加えつつ、逸材選手も随所で紹介していきたい。

池田が夏の甲子園に最短距離か

岡本昌也(池田)

 27年ぶり出場を果たしたセンバツでは海南(和歌山)に見事な逆転サヨナラ勝ち。甲子園に感動を巻き起こした徳島池田。次のターゲットは22年ぶりの夏の甲子園出場となる。

 岡田 康志監督はセンバツ後、主将の三宅 駿(3年)を捕手から一塁手、主砲の岡本 昌也(3年)を三塁手から捕手、打順も4番から1番に。さらに4番には髙井 克也(3年)を据える大改造を施した。これにより、打線はつながりがよくなり、「貧打」を脱しつつある。

 その一方で心配の種は投手陣。最速139キロ右腕エース・名西 宥人(3年)は、春先からの不調から脱しきれず。渡邉 剛志(3年)も、調子の上下が激しい。

 彼らの緒戦は開会式から8日をおいた7月20日(日)。丸岡 勇斗(3年)をはじめとする強打で秋季県大会では準優勝小松島阿波との勝者という厳しい相手と初戦を迎える。ここがいきなり大会の山場となりそうだが、時間はまだある。参加31校中、唯一4試合で聖地に到達できる第1シードのアドバンテージを十二分に活かしたい。

 その他にも、力のあるストレートとスライダーで高い奪三振率を誇る多田 湧也(3年)がエースの城ノ内と、インローへの強気なストレートと多彩な変化球が武器の浮橋 遼太(3年)が牽引する富岡西との右腕エース対決は注目の一戦。

 さらに左の三木 伸哉(3年)、春先から抑えを務める右の坂東 駿などの投手陣を、平野 善常(2年)など下級生中心の野手陣が盛り立てる徳島商も、「打倒徳島池田」と3年ぶりの甲子園出場を虎視眈々と狙っている。

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[page_break:正捕手急造もまとまり生まれた徳島北]

正捕手急造もまとまり生まれた徳島北

濱口 建(徳島北)

「彼が『やります』と言ってくれて。あれから劇的に変わりました」

 春季県大会準優勝で第4シードを獲得した徳島北・島 一輝監督はことあるごとに語る。春季県大会直前に正捕手を退部で失った際、外野手を務めていた濱口 建(3年)が未経験の捕手コンバートを申し出た以後、チームの躍進は今も続いている。

 これまで俊足の一方、集中力のなさが散見された濱口ではあったが、最も試合に参加できる場所で輝きを取り戻すことに。2年生・尾崎 修志のテンポ、3年生・近藤 敬祐の勢いを引き出す彼のリードは、4番の石橋 優一郎(3年)も含め「速さ」を強烈に打ち出すチームに「見る」余裕も生み出した。2009年夏の甲子園初出場以来、4年ぶりの栄冠は手の届く場所にある。

 しかしながら、このブロックも強豪ぞろいである。徳島北と初戦でぶつかる名西は、チーム力を確実に上昇させている。

 3年連続夏の甲子園出場を狙う鳴門も、昨年のレギュラー格・主将の鳴川 宗志(3年)など3年中心の打線と、2年生エース・菅 良磨(左投左打・170センチ70キロ・鳴門市立第二中出身)を軸とした1、2年生投手陣の融合で、まずは徳島北の牙城を崩しにいく。

 逆ブロックには4月のスイッチ転向後、強打の右打席・巧打の左打席を完成させつつある上田 優志(3年)が主将を務める春季大会ベスト4穴吹が。そして昨夏準優勝の川島城東の1回戦は大会屈指の好カード。

 川島の大黒柱・安丸友耶(3年)に対し、50メートル走5秒9・ベースランニング一周13秒72の平松 尭樹(3年)が1番、主将・河野 伸太郎(3年)が4番に座る城東の「高速コンビ」がいかに脚でかき回すか。その局地攻防戦は非常に面白そうだ。

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[page_break:生光学園が一歩リードも新野、城南が虎視眈々]

生光学園が一歩リードも新野、城南が虎視眈々

髙橋謙太(生光学園)

 昨秋四国大会準決勝県大会準決勝の返り討ちを徳島池田に喫し、悲願の甲子園出場を目前で逸した生光学園。打っては力強くスイングが光り、投げても最速139キロをマークする髙橋 謙太(3年)や、四国内でも屈指のスピードを誇る中尾 成希(3年)をはじめ、個々の質に疑いの余地はない。

 とはいえ、ツボにはまった時の飛距離はプロ級の4番・鈴木 凌(3年)に、沈むボールが持ち味の軟投派・河野 廉(3年)が投打の柱となる板野との初戦は非常に難しい試合となりそう。両者「一戦必勝」の気持ちをいかに維持できるかが、勝敗を分けそうだ。

 さらにベテラン・中山 寿人監督が率いる徳島科学技術に、春季県大会では小松島を下した新野と、投手と捕手を兼任する新谷 司(3年)が踏ん張る徳島城南との初戦も興味深い。

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[page_break:大駒3枚をそろえる鳴門渦潮が古豪海部を迎え撃つ]

大駒3枚をそろえる鳴門渦潮が古豪海部を迎え撃つ

松田知希(鳴門渦潮)

 最速141キロ左腕・松田 知希(3年)、二塁送球1秒8台の強肩捕手・多田 大輔(3年)、さらに強肩強打の平間 隼人(3年)と大駒3枚をそろえる鳴門渦潮

 これに対抗するのは、福岡ソフトバンク・セットアッパー森 唯斗の弟・森 祐大(3年)が主将を務め、上野 大成(2年)が森のリードに対し淡々と低めに投ずる海部。この両者がもし2回戦で激突したならば、激戦は確実だろう。

 ただ、不気味な存在が逆のヤマには1チームある。現役時代は小松島西のエースとして甲子園でも活躍した高井 正善監督が率い6年目を迎える辻だ。6月の高校総体西部ブロック大会では3位決定戦で徳島池田を4対1で破る大殊勲。その試合で完投勝利を収めた左腕・滝上 和弥(左投左打・東みよし町立三好中出身)をはじめとする1年生の躍動が継続できれば、阿南工阿南高専などが入るブロックの一番上まで進むミッションも、決して不可能ではない。

(文:寺下 友徳)

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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